「ブロックチェーンで政治を変える」19歳の大学生の挑戦 #01 伊藤和真(PoliPoli代表)

伊藤和真

ブロックチェーンで政治を変える19歳のスタートアップ「PoliPoli」

具体的にブロックチェーン技術はこれからどういった分野に使われるのだろう。いろいろな分野が予想されるが、その中で政治の分野をブロックチェーンで変えようと試みるスタートップ企業がある。株式会社PoliPoliだ。この会社の役員メンバーは全員慶応義塾大学の19歳の学生。テクノロジーで政治を再構築して行くことを目指したPolitech(Politics × tech)分野のスタートアップ企業だ。

「PoliPoli」は政治の情報共有プラットフォームサービス。有権者はアプリ内で政治のニュースや、政治家の活動状況を知ることができる。また政治家はアプリ内のトークルーム で情報発信ができる仕組みだ。

そしてサービス内で独自通貨「Polin」が発行される。有権者はコミュニティ内で良い発言をして集めた「いいね」数、政治家へのトークン付与数の順位、保有トークン数を掛け合わ得た信頼スコアによって順位づけされ、上位のユーザーには様々なインセンティブが付与される。

一方、政治家は良い政策や主張をコミュニティ内で発信すれば有権者からトークンが貰えて、個人献金のプラットフォームとして利用することができる。

将来的には独自通貨「Polin」を外部提携サービスと連動させたり、仮想通貨交換所への取り扱いなども視野に入れているようだ。

「PoliPoliで独自のトークンエコノミーを形成して、政治家と有権者を近づけるプラットフォームを目指す」

そう語る伊藤和真CEOに、どのように政治をブロックチェーンで変えようとしているのか、その想いを語ってもらった。

イケてない政治を解決するにはテクノロジーしかない

−なぜ政治の事業をやろうと思ったんですか?

正直、僕は他の若い世代と同じくあまり政治に興味がありませんお恥ずかしながらはじめる前は「衆議院って何人だっけ」というぐらいのレベルでした(笑)。

また「PoliPoli」を起業する前にベンチャーキャピタルで働いて政治関連のスタートアップを色々みてきたのですが、なんかイケてないものが多いなと思っていました。

そして僕は日本の政治に対しても、なんか意味わからないし、忖度ばかりだし、漠然としたストレスを感じていました。要は政治自体もイケてないし、そこで起こるビジネスもこれまたイケてない。

一方アメリカを見てみると、主に「To G向け(政府向け)」のサービスが多いですが政治系スタートアップが有名なベンチャーキャピタルから何十億と資金調達していたりするのです。

政治はステークホルダーが多い分野ですよね、すごい遅れている。でもだからこそその問題はテクノロジーで解決できるんじゃないかと思います。逆に言うと、この政治の「イケてなさ」というのはテクノロジーでしか解決できないと言ってもいいかもれません。

なのに成功事例がない、正直空いてるなって思って、政治を選びました。

−確かに日本の政治系スタートアップで成功事例はほぼないですね。なぜ伊藤さんが今そこに挑戦するでのしょうか?

最初は周りの人や、それこそベンチャーキャピタルの人たちからもほとんど全員から「政治分野はやめといたほうがいい」と言われました。正直今の段階でも事業の話をすると7割ぐらいの人には否定されています。応援してくれるのは3割ぐらい。

みんながそう言うのも分かります。今まで Yahoo をはじめいろんな企業が政治分野に手を出してきて、あまり上手くいかなかった。

でも最近出てきたトークンエコノミーという概念、それは簡単に言うとコミュニティがつくれることだと思っています。そのコミュニティをいろんなインセンティブをつけられながら設計できるのがトークンエコノミーです。自立分散的に設計できるコミュニティ、それが政治分野にとても適していると感じるようになりました。

政治って一般の国民はあまりお金を出さないですよね。献金とかするのはおそらく一部の人だと思います。でもそれなのに当然ですが全員政治に、ある程度コミットしているわけです。だからもっと政治に経済圏を作ることができれば、活性化するんじゃないかなと思ってます。その仮説を社会実験したい。

僕たちは独自のトークンを発行して、政治家と有権者がお互いの意見を言い合えるコミュニティを作ります。政治家と有権者が活発に生産的な議論を交わせるようなインセンティブ設計をしたトークンエコノミーを形成できるれば、大きな価値を政治にもたらすのではと思っています。

今の政治の課題とトークンエコノミーによる具体的な解決方法

−伊藤さんから見た今の日本の政治の問題ってなんですか?

大きな2つの問題があると思っています。

一つはメディアの限界」という点です。マスメディアには時間的制約があり、流すコンテンツ量と範囲に限界があるのが課題だと思います。例えばテレビは、南北会談という重大な出来事が起こっていても、某男性アイドルグループのスキャンダルばかり放映していましたよね。でもこれって合理的なんです。なぜならテレビ放送には時間制限があり、決められた時間内で高い視聴率を獲得するにはスキャンダルを流すのが最適な手段だからです。

このように、既存のメディアの構造によって、政治問題よりもスキャンダルが優先されてしまうという問題があると思います。だから情報がどうしても偏ってしまう。

もう一つは「コミュニティが荒れやすい性質」という問題です。これは特にネット上の政治系の話題やコミュニティに多く見られます。政治の話題はみんなが敏感になり、ストレスのが溜まりやすいので荒れやすい、特に匿名性のあるネットならなおさらです。だから右の人は左の人を論拠なくぶっ潰すみたいな話になっていると思います。逆も然り。

それらの問題をトークンエコノミーを構築して解決しようと思ってます。トークンエコノミーを使えば、政治の情報収集を容易にでき、コミュニティの荒れやすさを改善することができると思ってます。

具体的には、政治家と有権者の生産的な議論に対してトークンを付与するインセンティブ設計を作ります。これによって有権者と政治家間の意見交換が活発化し、既存のマスメディアに頼らずとも政治関連の情報収集ができるようになります。逆に政治家もこれによって市民へ声が届けやすくなります。

「この地域のこの道が狭い」といった実生活レベルの個々の市民の声は、今の仕組みだとなかなか政治家に届かないのですが、そういったことも論理上は可能になり、双方の情報交換がなめらかになります。

また、コミュニティ内で誹謗中傷などの悪質行為をするユーザーは、評価が下がったりトークンを没収されたりする仕組みも設けますそうすれば従来では荒れがちな政治に関する話題でも、荒れにくくなるはずです。

トークンエコノミーを政治分野に持ち込む事で、楽しく政治活動をしながらトークンも貰えるという設計を考えています。

稼働するトークンエコノミーを作るために必要なこと

−トークンエコノミーを形成する上で、意識している事は何かありますか?

ゲーム感覚で楽しく経済活動ができるという仕組みづくりが重要だと思います。価値を担保する主体が存在しないトークンが価値を持つためには、人々がその価値を認めないといけません。自分がそのトークンに価値があると思い、同様に相手もそう思ってその信頼関係でトークンに価値がつくと思っています。

ではどうやってみんなに価値があると思ってもらえるか。そのトークンを仮想通貨として取引所に上場させたり、そのトークンが使える決済手段などのステークホルダーを常に増やすことです。そのトークンを「欲しい」と思う人と「あげたい」と思う人を増やして通貨の流動性をあげることが大事です。

また僕はトークンエコノミーを盛り上げるには、ゲーム感覚でそのトークンのやり取りができるということが一番いいと思ってます。

今トークンエコノミーで「steemit」も成功してますけど、でも大成功じゃない印象です。それよりも「CryptoKitties(仮想通貨を使った猫の飼育ゲーム)」などの方がイケてると思ってます。シンプルにゲーム感覚でやり取りできるのがいい。

ゲーム感覚って人間だからすごい大事なことだと思ってるんです。例えばゲーム感覚で政治家に投げ銭して、その結果その政治家が上手くいったりとかしてもいいと思う。不謹慎とか言われるかもしれないけど、今の政治に欠けているのは自分ごと感だと思います。つまり承認を満たしながらゲーム感覚でやると、それは自分ごとになる。まずは盛り上げるために政治家や市民の発言に対してゲーム感覚で投げ銭するような経済圏を作るのが第一歩ではないかと思ってます。

そういう意味で、政治をエンターテインするということ、すなわち政治を面白くできるかというのが大事です。僕のように政治に興味ない人までもが、政治的発言が格好いいとか、儲かるという認識になるくらい大きなインセンティブをこのサービスでは付与していきたいと思ってます。

−PoliPoliが目指すものは?

最終的にはPoliPoli上のトークンエコノミーで、積極的なディスカッションが生まれ、政治家と有権者のどちらの問題も解決するというコミュニティサービスに成長させたいと思っています。

アプリの本リリースは2018年12月あたりに行う予定です。そして今年9月以降にトークンを対応させます。とりあえずトークンはICOするわけではなくて、ポイントみたいに無料でユーザーに配布する予定です。多くの人にトークンを配って、ゲーム感覚でいい発言をしたらトークンを付与し合っていただき、トークンに流動性を出したいです。その後、流動性が担保できるようになったら1年以上先になるかもしれませんが、取引所への上場も検討しています。

「PoliPoli」の野望

僕らのサービスって政治という国の根幹に関わってきますよね。これがもし上手くいって政治家もある程度使い出したら、大げさかもしれませんが国家自体を新しくできるじゃないかなって思ってます。

そしたらこのサービスをTo G(政府向け)などにどんどん横展開していこうと思ってます。

正直、今の国家って古いと思ってます。でも僕は完全にそれをぶっ壊そうとしてるわけではない。中央集権的なものはある程度これからも必要だと思っている。でもそれじゃ全部カバーできなくて、なんか足りない。

例えば税金なども不完全なものだと思っています。税金ではたして完全な富の再分配ができているのか疑問に感じます。富の再分配は本来は自律的にできるんじゃないかなって。税金もブロックチェーンを使ってトークンエコノミーをつくれば、もっともっと新しいものにすることができるんじゃないかと思ってます。

そんな野望のためにも、まずはまずは「PoliPoli」によって政治に興味を持つ人たちを増やして、今の僕たちがイケてないという政治を変えていきたいと思ってます。

(編集 飯田諒・竹田匡宏)

この記事の著者・インタビューイ

伊藤和真

PoliPoli Inc. CEO & CMO
1998年生まれの19歳。慶應大学在学中。F Ventures 東京でアソシエイトをつとめ、プログラミングコミュニティのGeekSalonの立ち上げを経て友人とともにPoliPoliを創業。iOSエンジニアでもあり、未経験者ながら独学でiPhone俳句アプリの「てふてふ」を制作。2018年夏に同アプリを毎日新聞社に事業売却。

PoliPoli Inc. CEO & CMO
1998年生まれの19歳。慶應大学在学中。F Ventures 東京でアソシエイトをつとめ、プログラミングコミュニティのGeekSalonの立ち上げを経て友人とともにPoliPoliを創業。iOSエンジニアでもあり、未経験者ながら独学でiPhone俳句アプリの「てふてふ」を制作。2018年夏に同アプリを毎日新聞社に事業売却。