「パブリックチェーンとコンソーシアムチェーンの違い」LayerX CTO 榎本悠介氏インタビュー(2)

榎本悠介

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LayerX CTO 榎本悠介インタビュー #02

今回はLayerXのCTO榎本悠介氏に「パブリックチェーンとコンソーシアムチェーン の違い」「金融領域のモジュール化」「LayerXのパブリックチェーンへの捉え方」などについて語っていただきました。

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Transcript

設楽:具体的にいま、いくつかのコンソーシアムチェーンとして使われている、使われようとしているものがあると思うんですけど、どういったものに注目されていますか?

榎本:まだLayerX自身として色は付けてなくて、全部フラットに色々調査して、合っているものを使うっていうスタンスなんですけど。なのでこれがだめだ、これが良いって言う気がないんですけど、一個面白いなって思っているのはcordaは最近すごい面白いなって思ってて。

あれまだ全然ブロックチェーンじゃないんですよ、ブロックとかないし。みんなと見えている世界が違うんですよね、cordaとかって。僕の持っている台帳とか、たっけさんの持っている台帳とか全く違う、でもそれでいいじゃんみたいな。

設楽:それの方がセキュリティあるよねって話ですよね。一応見られる人しか見られないよねって。

榎本:そうですね。かなり匿名性っていう意味ではそっちの方がいいじゃんって。メールに似ているんですかね、それぞれのメールボックスって違うじゃないですか。送りたいメールを送りたい人に送る、以上みたいな。

それの間ではメールを共有しているよねみたいなだけ。cordaは割とブロックチェーンというよりは、企業がどう協調して、どうデータを共有していくかみたいなところから生まれているなっていうのをすごい強く感じていて。なので全然今までのブロックチェーンの仕組みに当然囚われてない、そもそも裏側がSQLなんですよね。

竹田:じゃあ今までのWEBと…。まじでやりやすい。

榎本:結構RDBとかKVSでやられて、これ裏垢どうするんだよみたいな。結構イーサリアムあるあるなんですけど、たくさんデータをコントラクトに入れるはいいけど、それを一覧でとるの無理だなみたいな感じの。

結局そこインデックスサーバーいるじゃんとかそういうのがあると思うんですけど。やろうと思えば、フォルダーとかRDBとか、そこから直でとることもできなくないみたいなのとか。

結構企業のリアルなニーズから真摯に作ったのかなみたいなのもちょっと感じるみたいな。ただ当然特色はあって、ウォレットみたいなのが標準の機能ではないので、完全にtoBなんですよ。

企業に完全にフルノードを立ててもらう前提みたいな、ライトクライアントなんかないよみたいな感じなので、振り切っているなみたいな。全然ユースケースによって何がいいとかは全然違うなって思うんですけど。

1つ最近すごい思っているのが、データを企業間とか一部の人に共有するっていう文脈に立つと、最適なアーキテクチャって全然パブリックチェーンに囚われる必要はないなみたいな。この論争自体が無意味だなみたいな。ブロックチェーンとかチェーンって言葉を使うの辞めればいいのにってちょっと思ったりしますね。ややこしい論争が生まれるので。

設楽:ちなみに今話題のところで言うと、今話題のところで言うと、さっきも話題に出ましたけど、Libraについてはある意味あれもコンソーシアムチェーンでスタートするのだと思うんですけど、どう捉えてますか?

榎本:めちゃくちゃポジティブなニュースだと思ってますね。普通に喜ばしいニュースだなと思っていて。この流通アセットを使って、あれだけの企業たちが何かを作ろうとしているっていうのは普通に業界にとっては、いいニュースだなと思っていて。

ただあれが今後パブリックチェーンになりますピピーっていうところに対して、おい本当かよっていう気持ちは分からないでもないですけど。現時点では別にコンソーシアムチェーンとしてめちゃくちゃバリューがあるものが作られるはずで。

彼らのアンバンクドな人に対して機能を提供するみたいなところを普通の企業はなかなかできないと思うんですけど。あれだけの側面の企業が集まってやろうとしているっていうのはすごいポジティブだなって思っていて。

すみません、僕技術的にちゃんとLibraについて調べているわけではないんですけど。聞く限り、結構新しめのものが使われて、筋の良いものが使われているっていうので。まだMOVEで何か開発をどんどんやれる状態とは思っていないですけど、かなり注目はしていますね。

竹田:続いてのお話しとしては、やっぱり今までの既存のデータベースを追って、自分達の会社のデータベースを管理して、相手の企業とやり取りするっていうのをコンソーシアムチェーンではなくって、今までのWEBの在り方だと思うんですけど。

そこから今後、今だと、今やられているコンソーシアムチェーンってうつるときに、企業としていま現状どんなニーズがあって、そっちにうつってきようとしているのかっていうところをまず意見として聞きたいなと思います。

榎本:まずうつるって言うとあれなんですけど、結構どの企業も、今の事業を裏側をブロックチェーンに切り替えようって、なかなか結構非現実的だと思っていて。結構まず新しいユースケースをブロックチェーン使って作ってみようみたいなのがまずあると思いますね、そこからうつっていく。

本当に上手くいったら将来的にうつっていくのかもしれないですけど、新しいものを作るっていうものがメインなのかなと思います。で、圧倒的にメリットとしては、既存の業務フローが結構根本的に変わるなとは思っていて。

例えばすごいわかりやすい例で言うと、領収書とかってどの企業同士やりとりするにも必要じゃないですか、それが振り込まれましたとか。それぞれの結局書類かデータか分からないですけど、管理されてますよね、各企業内で。

それぞれのフォーマットで、あれ多分独自のフォーマットでみんな管理しているみたいな。それって全体を見渡すとめちゃくちゃ非効率じゃないですか。しかもそれって、ブロックチェーンの世界で言うトラストレスみたいな。

企業って別に結局トラストあるじゃんとは言いつつ、結局相手がどんな大企業で、社会的実績のある企業だとしても、はいはい絶対振り込まれているでしょって確信して振込確認しないとかありえないじゃないですか。

絶対に領収書受け取るし、絶対に振込確認とかするじゃないですか。っていうのが本当のトラストスコアとは思ってて、実際の実社会で起きている、そういうフォーマットが異なっていて、それぞれがバラバラでやり取りして、それぞれが確認して、コンフォメーションですね。

コンフォメーションして、なんか合ってなかったら電話かなんかで再調整してまたやってもらうっていう、そういうコンフォメーションとリコンサイルのプロセスがあらゆる取引に発生している。

領収書一つにとってもそうだし、貿易とかだったら、何十社も国際貿易だと関係してくる。税関とか保険だとか海運会社だとか金融とか。そういう複雑な業務フローが一つの共有台帳…。

こう言ったらあれですけど、Googleスプレッドシートをみんなが見られたとしたら、めちゃくちゃ効率化されるんじゃないかと思っていて。

各自Excelないし紙で頑張っているのが一個の信頼できるスプレッドシートがあって、みんながそれを見てて、誰が変更したか分かるとか、いつ何があったかとかがわかるとかが、変更が積み重なっていくっていうのがあったら、めちゃくちゃ業務フローが本当に効率化されて、なにかがリアルタイムに見れるようになる。

結構決算のタイミングじゃないと分からないみたいな情報ってたくさんあるんですよね。それが期中でいつでもわかるってなったら、いままでなかったビジネスとかも生まれてくるんじゃないかとか。

今まで何時間かかってたものが一瞬でできるようになったら、それをもとに派生してビジネスとかが出てくるんじゃないかって考えると結構わくわくするなとは思ってて。

当然その企業さん独自で色んなドメインがあると思うんですけど、貿易・金融・トレーサビリティとか。それぞれ持っている企業さんの強みとか既存の業務フローをヒアリングさせていただいて、こういうことできたら面白いですよねって、結構カジュアルにディスカッションすることが多いですね。

竹田:なるほど。今の話の中だと様々な事業、例えば貿易であったりとか商社もそうですし、色んな業種にも様々な取引には、絶対お金っていうものが結びついていて。コンソーシアムチェーンだったら、今のスプレッドシートだったら様々なデータを共有できる。

でも今の榎本さんのお話しの中だと、その中で取引。お金の取引がスプレッドシートのような形でこちら側が何かに使ったら減るし、あっちに送ったら同時に減るっていう管理が本当にお金の部分でできるっていうところが、いま印象として結構受けたんですけど…。

榎本:別にお金に限らないと思いますね。何かものを送りましたとか、トレーサビリティで言うとこの時点でこのダイヤモンドは何グラムでしたとか、別になんでもいいと思っていて。何かの記録をみんなで共有したい時はなんでもいいと思っていて。

竹田:じゃあお金以外の部分でも何かの記録として残すために、その記録がデータとしてないとだめってことですよね。リアルのものではもちろんダメですよね。

榎本:はい。

竹田:なるほど。それだったら、例えばコンソーシアムチェーンを使ってて、今の話でもいいですけど、どういうところで使われていたりするんですか?現状の部分、LayerXとして。

榎本:結構話せないことが多めではあるんですけど、言える範囲で言うと、金融領域はやっぱりすごい相性が良いなって思って見ていて。特に証券化領域とかは見ていますね。

どちらかと言うと結構STOの文脈とかって、流動性上がるぜとか小口化だとか言われるんですけど。僕らはどちらかと言うと組成プロセス、発行プロセスとかがめちゃくちゃ簡略化されるみたいな。

証券化とかってすごい大変なんですよね、すごい書類準備してとかリーガルがとか。色んなフォーマットがあるよねとか、どのスキームが良いんだっけとか。すごい大変なプロセスをある意味テンプレ化することできゅっと短縮できないかみたいな。

それはブロックチェーンというよりはフォーカス的な電子化プロセスと合わせて実現しようとは思っていて。なのでそれをどう思うんだって言われても、はいはいって感じなんですけど。

別に目的はブロックチェーンを使うことではないので、なんか相性の良いところでは使う。結構今のところ相性の良い領域があるなとは思っているみたいな感じですかね。

竹田:それこそ、この前のイベントの中でお話しされてた金融領域のモジュール化っていう話だと思うんですけど。そこのモジュール化するプロセスがあまり分かってなくって。それって、どういう風にモジュール化していくのか っていうのを聞きたいですね。

榎本:結構抽象的な概念にはなっちゃう、理想的な世界の話になっちゃうかもしれないんですけど。今って何か資金を調達しようとか、不動産と一緒に調達しようってなったら、どうしても、とある企業にお願いしなきゃいけないとかで、どうしてもそこにすごい時間がかかってしまうみたいな。

そのやり取りもすごいアナログなやり取りだったりするみたいなっていうところが、もしある意味資金調達ソフトウェアみたいなものができたとして、APIでもいいんですけど、そこにお願いしたら、じゃあ今回このリーガルで行きましょうみたいな、ライセンスここやりましょうみたいな感じで、はい集めますみたいな。

で、そのプロセスが今まで1か月かかってたのが、2~3時間になるだとか、結構わくわくするなみたいな。それをもとに、その時間軸だったら、こういう新しいビジネスができるよねみたいなのができたりとか。

結構チャイナのアリペイとかウィチャット・ペイも近いのかなとは思っていて。今までは完全に送金だとかが銀行の持ち物だったものがかなり民間化されて、ソフトウェア化していくことによって色んなビジネスが派生していったみたいなってことにちょっと近いのかなとは思っていて。

なので今までソフトウェアになっていなかったものがソフトウェア化される。なのでSoftware eating the worldとか言うじゃないですか。僕は元々グノシーにいたんですけど、メディアって今までインターネット登場前は新聞紙とかテレビだったわけですよね。

それがスマートフォンメディアみたいになっていくと何が変わったかって、本当にユーザーのログが全部とれるようになったりとか、リアルタイムで全然違うニュースが配信できるとか。今まで号外で街角で配ってたのが、瞬時にみんなに届くようになるみたいな。

そういうデータがとれると、それぞれの人ごとに違うニュースが届けられるとか、動的に広告が差し込めるようになるとか、ニュース以外のクーポンが出せるようになるとかっていう、本当にソフトウェア化するといろんな面で広がる。

今まで考えられなかったような機能が盛り込めるようになる。金融でも同じなのかなって思っていて。その送金がソフトウェア化されたときにどういう世界が来るのかとかは結構チャイナ中心に色々起きていると思うんですけど、それが証券の文脈だとか色んな文脈で起きるといいなとは思っています。

竹田:なるほど。そのソフトウェアもそうですけど、やっぱりでも。とはいえ、ソフトウェアのものって、なかなかパブリックで管理するのは難しくて、それが一つコンソーシアムの役割かなっていうのは感じていて。

最初の話に戻るんですけど、今の現時点でコンソーシアムの部分に結構ドメインを置かれているなっていうのが、今のお話しの中でもわかるんですけど。今のLayerXの視点として、パブリックチェーンっていうものをどういう風に捉えているのかっていうところを聞ければなと思います。

榎本:まずLayerXがやっていることは…。チーム構成というか、結構2つに思い切って振り切っていて。ビジネス事業を作っていくところと、あと本当にR&Dに振り切っているところで。

多分ブロックチェーン業界で、R&D方がすごい有名になっている気はするんですけど。本当に2つでそれぞれミッションを分けていて。事業開発の方は本当に大きい事業を作っていきます。

それをブロックチェーンと電子化、全部掛け合わせて課題を解決していきますみたいなのがビジネス開発の方で。R&Dの方は、本当に長期的に考えてくださいみたいな。

結構うちだとナカムー、中村と欧佑がめちゃくちゃ強いんですけど、僕正直彼らが何言っているんだか分からない時あるんですけど。彼らは長期的に、例えば中村はCasper CBCですね。コンセンサスプロトコルっていうのがブロックチェーンの本質だろうと。

それ次世代のプロトコルって何だって言うと、すごいCBCに彼ら注目していて、ヴィタリックとかブラッドとか本当はやりたいんだろうけど、ちゃんと手をつけられていないようなところをこれがアカデミックの文脈と上手く結合してやっていくんだっていうのを、彼らミッションとしてやっていて。

そういうのって別に短期的に何かLayerXにお金を生むかって別に違うかもしれないですけど、そこは割り切っていて。なのでパブリックチェーンは絶対長期的に来るものだと思っています、僕らは。

竹田:長期的ってどのくらいですか。

榎本:それは難しいですね。感覚…すごい雑なアナロジーなんですけど、最初企業がイントラネット使ってました、でも結局インターネットが整備されてきて、みんなインターネット乗っかるようになったよねみたいなのと似ているのかなと思っていて。

現時点でインターネットに相当するブロックチェーンは例えばSSL、HTTPSに対応するような秘匿化が、まだちゃんとは難しかったりとか、大気幅も広くないよねみたいなスケーラビリティだったりとか。

色んな多分全てが乗っかるには難しい状況なので、各企業にそれぞれあったイントラネットでやっているみたいな。でもそれって歴史的の流れからすると理想的な世界ではないような気がしていて。

あれだけインターオペラビリティとか言っているのに、みんな閉じて何か開発しているって、なんか違うじゃないですか。

証券市場とかみんなそれぞれのプロトコルでやっているだとか、なんか貿易とかみんなそれぞれのプロトコルでやってて繋げるのどうするのみたいなのって、最初から一個にあった方がいいに決まってるじゃないですか。全ての課題が解決したらですけど。

というので絶対にパブリックチェーンが貼っておくチームとしてはR&Dもやってみたいな感じですね。

(つづく)

→つづきはこちら「「LayerXの事業とゼロチェーンについて」LayerX CTO 榎本悠介氏インタビュー(3)」

→第一回はこちら「「いまブロックチェーン業界で働くことをオススメする理由」LayerX CTO 榎本悠介氏インタビュー(1)」

編集:竹田匡弘(あたらしい経済)

この記事の著者・インタビューイ

榎本悠介

東京大学工学部卒。大学時代の専攻は数学とコンピュータサイエンス。株式会社DeNAに新卒入社、2015年にGunosyに入社。両社にて複数の新規事業立ち上げをアーキテクトやリードエンジニアとして牽引。2017年よりブロックチェーンの研究開発チームをオーナーとして立ち上げ、後のLayerXの礎とする。ボンバーマンのプロプレイヤーとして地上波出演経験有。

東京大学工学部卒。大学時代の専攻は数学とコンピュータサイエンス。株式会社DeNAに新卒入社、2015年にGunosyに入社。両社にて複数の新規事業立ち上げをアーキテクトやリードエンジニアとして牽引。2017年よりブロックチェーンの研究開発チームをオーナーとして立ち上げ、後のLayerXの礎とする。ボンバーマンのプロプレイヤーとして地上波出演経験有。

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