ネット企業の成長はどこに向かうのか~Web3の到来(加納裕三/佐藤航陽/田中良和/内藤裕紀/渡辺洋行)

B Dash Camp 2022 Summer レポートVol.1

今年6月に札幌で開催された「B Dash Camp 2022 Summer」。会場では多くのセッションで「web3」がキーワードとして飛び交った。「あたらしい経済」ではweb3関連のセッションを中心にレポート記事を公開していく。

第1回は加納裕三氏(bitFlyer Blockchain)、佐藤航陽氏(スペースデータ・レット)、田中良和氏(グリー)、内藤裕紀氏(ドリコム)らがスピーカーとして、渡辺洋行氏(B Dash Ventures)がモデレーターとして登壇したオープニングセッション「ネット企業の成長はどこに向かうのか~Web3の到来」のレポートをお届けする。

【予告】 10月開催「B Dash Camp」で「B Dash Crypto」も開催

2022年10月19-21日に福岡で開催の「B Dash Camp 2022 Fall in Fukuoka」内で、「あたらしい経済」がCollaboration Partnerとして企画/運営協力するブロックチェーン・暗号資産領域に特化したカンファレンス「B Dash Crypto」の同時開催が決定しました。web3に特化したセッションやピッチコンテストを「B Dash Camp 」と併設の会場で実施いたします。是非ともブロックチェーン、暗号資産領域の企業様のご参加、お待ちしております。
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ネット企業の成長はどこに向かうのか~Web3の到来

渡辺洋行(以下 渡辺):(B Dash Camp)毎回恒例のインターネットの未来はどうなるかをテーマにしたオープニングセッション。今回はweb3メインにして、登壇者の方々がどんな思想でWeb3を捉えているか、そしてその方向感を中心に議論にしていきたいと思っています。まず、みなさんの現在行っている取り組みを紹介いただければと思います。

加納裕三(以下 加納):僕はbitFlyer Blockchainの代表取締役や、日本ブロックチェーン協会の理事長をやっています。(web3の盛り上がりについて)すごく分かりやすいのが、このB Dash Campでも登壇会場のサイズ大きいわけですよ。それにまずweb3の盛り上がりを感じます。

佐藤航陽(以下  佐藤):私は宇宙空間、仮想空間、そしてSDGsやESが、人類のフロンティアだとここ2、3年考え、その3つにフォーカスしてきました。そして特に最近は仮想空間が、メタバースもそうですし、web3もそうですし、バズワードが頻繁に出てきてはいるので、面白くなってきたと思っています。その辺りを深堀できればなと思っています。

田中良和(以下 田中):僕は今グローバルでメタバースを成功させることに注力しています。グリーは現在4000万人ぐらいユーザーがいますが、次やるならやはりグローバルの何億人か使うものを作ることしか、自分の人生の目的が見いだせないんです。そうなると、Snapchat、TikTok、Twitter、Discordといったレベルのものを作らない限り、やる意味がない。

そのために必要なものは、web3や、金融的、分散的な仕組みを取り入れていく概念、そしてもう1つはIP作りだと思っています。

人が集まる場所に価値を創造するという観点から考えたときに、そこが楽しいとか、居心地がいいとか、そういった付加価値が、最後さらに価値を生むと思っています。だからゲームやアニメ、そういったIP作りも僕は広義の意味のメタバースだと思って、それらに力を入れてます。

内藤裕紀(以下 内藤):会社としては2017年ぐらいからブロックチェーン系のチームを作って、サービスの研究開発をしてきました。その当時はレイヤー1、2や、ただ単に取引所などのサービスまでしかなかなか広まらない状況で、ちょっと僕らのアプリケーションレイヤーな会社としては向かないなと、細々とやっていました。

やっと1年と少し前ぐらいから、アプリケーションレイヤーが伸び始めたので、ここはフルベットすべきだろうと考えて今進めています。FT、NFTを扱うようなアプリケーションサービスにフォーカスしています。

渡辺:内藤さんもおっしゃったとおり、やっとここ1、2年で、アプリケーションレイヤーに移ってきてますね。長くからこの領域をみられてきた加納さんのお考えは起業したことから変化はありますか? 加納さんにはweb3の本質的な部分のお話もいただきたいです。

加納:僕は2010年にビットコインとブロックチェーンに出会ったので、もう12年ぐらいやっているんですけど、その間も大体3年ぐらいの周期で盛り上がって、失敗してというのを繰り返している感じですね。

でも、全体としては上がっているんですよ。ユーザー数も増えているし、今も伸び続けています。その上で、第一世代、第二世代ぐらいまでの戦いはもう終わったと思っています。例えば(暗号資産)取引所の競争はもう終わった。だから今から取引所をやるっていう人は、本当センスないと思う。

これはもう諦めてください、もう何の旨みもないです。初期費用でたぶん50億から100億かかると思いますし。だから、今からやるべきはやっぱりWeb3です。

Web3とは何か?

加納:ではWeb3とは何かについて少しお話させていただきます。

そもそもWeb3っていう定義をちゃんと分かってる人が少ないから、みんなNFTだとかDeFiだとか、スマコンだっていうところから、メタバースまで行っちゃっていんですよ。メタバースも含んでいるか、メタバースの中にあるNFTの話をしているか、よく分かんない状態になっていますよね。

ここでちょっとお話をしたいのは、web3の原点です。Web3という言葉をギャビン・ウッドが言い始めたんです。ギャビン・ウッドは、もともとイーサリアムのCTOをやっていた人で、今は独立して、他のチェーンをやっているんですけど。

そんな彼が(web3)について、大きく四つのことを言っているんです。これ皆さん覚えて帰ってください。今、みんなが言っているWeb3とだいぶ違うと思います。

まず、ギャビンはスノーデンに共感しているんですよね。スノーデンは、個人情報を勝手に取るなと、アメリカが個人情報をとっていたことを告発したんですけれども、そこに共感しているから、まずインターネットは全て匿名であるべきだっていう。

これは技術的にはTorっていう匿名化技術を使って、自分のIPを勝手に取られない。中央集権的な組織、政府や会社に勝手に情報取られないっていう世界観です。結構アングラなんですよ。まずこれが最初の前提です。

そしてブロックチェーンによって存在証明できるっていう、皆さんもご存知の話を(ギャビンは)しています。

またWeb3ブラウザができると、それがシームレスにいろんな情報が入ってきて、DApps(分散型アプリケーション)がさらに進化して、Web3ブラウザによって、リアルタイムでゲーム感覚なユーザーエクスペリエンスが得られるよ、と。ブラウザがやっぱり遅いし、リアルタイムに変化しないから面白くないんで、それを裏側で通信しながら何とかやりましょうと。

最後はプロトコルを変えようという話です。「https://」みたいな、このフォーマットを変えましょうと言っていて、これをピリオドでつないだ、ずっと続くURLにしましょうと話しています。

そうすることで今のドメインネームサービスなどに影響せず、超分散化された世界となる。リソースに対するアクセスっていうのが、特定のDNS経由という方式じゃなくなるんですね。

だから特定のブロックチェーンに対してアクセスするために、ずーっとピリオドで繋いででいくと、それが簡単に世界で唯一のリソースに対してアクセスでき、Web3ブラウザで裏側でリアルタイムに全部処理され、それがブロックチェーンに書き込まれて存在証明があって、かつ全部それ匿名でやりましょうっていうのが、web3の原点です。

皆さん、これを忘れないようにお願いします。私が言いたいのは、今日は以上です。

渡辺:え? それでやめるのを、やめてください(笑)。この話を踏まえたところで、加納さんとしては今のWeb3のこの状況についてどう思っていて、これからどうなっていくと考えていますか。

加納:今、話題になっているのはアプリケーションレイヤーだと思っています。これ、いいなと思っているんです。STEPNとか知っています? (NFTの)靴、買って、バイナンスチェーンのB国やソラナのS国みたいな(笑)。

今まで僕らはずっとブロックチェーンそのものの話をしてきたわけです。例えばBitFlyerではmiyabiというブロックチェーンを開発したですが、そのアルゴリズムの話とか、高速化とか、shardingとか、一般の人は多分全く興味ないですよね。僕はそこをやりたいんですけどね。

それで去年一昨年ぐらいから、NFTなど盛り上がってアプリケーションの話になってきた。ゲームやメタバースでトークン発行とか、アプリケーションの話って面白んですよね。このアプリの話をここまで真剣にみんなが始めたというのは、過去にない事象だと思う。

渡辺:今、加納さんのお話を踏まえると、今アプリケーションレイヤーが来ているとのことですが、その中で内藤さん自身がここ数年取り組んでいることを詳しく教えていただけますか?

内藤:取り組んでることもですが、なぜ今になってこんなWeb3になってるのかと、それがなぜ面白いかについてそれぞれ話しますね。

なぜ今かというのは、やっぱりWeb2.0な中央集権だったり、資本主義なサービスに対しての反感が高まり過ぎてきたんだなと思っていて、過去、歴史を見ても、中国で黄巾の乱もそうですし、明治維新もそうですし、民衆の反感が高まり過ぎると、それが中央集権に対して高まると反乱が起きるんですよね。

だから、Web2.0な資本主義に対しての反乱が、Web3な動きとして、今、起こってるんだと思ってます。やっぱ若いスタートアップのWeb3の人たちと話をしてても、みんなもうWeb2.0に新しいサービスをやる隙間ないと言っています。GAFAが全部やっていると。

企業もですが一般のユーザーも、政府もGAFAの取り締まりとか含めてそういった反乱の感情が高まったから、こういう流れが来ている、それが背景としてあると思っています。

そして次になぜWeb3が面白いかです。

Web2.0は結局ファンコミュニティだと思ってるんですけど、web2.0では、みんなが承認欲求をベースに、言わば「タダ働き」させられたんですよ。

「いいね」が欲しいからめちゃくちゃ写真作る、写真を加工するとか、いい動画を作るとか、頑張って、何回も文字考えて、ツイートするとかみたいな感じで。みんなの承認欲求と言う「タダ働き」の上に成り立ったのが、GAFAのプラットフォームなんですよね。

そこに対してWeb3っていうのは、ある意味、スタートアップがストックオプションを配りながらどんどん人を集めていくのと同じような感じで、ユーザーにもストックオプション的にトークンを配りまくって、みんなで成功しようぜっていうインセンティブハックになってるんですよ。

どっちが早く成長するかっていうのはもう自明で、その中で、めちゃくちゃ早いスピードでサービスが立ち上がってきていますよね。STEPNなど見ても。

やはり、インセンティブハックの方が承認欲求ハックでのサービスの立ち上がり、より圧倒的に早いんですよね。

こんなものがポコポコ立ち上がってくると、今までのやり方をやっている2.0の僕らは、太刀打ちできなくなって駆逐される可能性があるので、「これ、やんなきゃまずい」と、1年前ぐらいから、もう全社でガーっこうシフトするみたいなことをやっています。

Web3とメタバースの相性は良い?悪い?

渡辺:それはすごく理解できます。投資の立場で言ってもそうで、従来の株主がいて、投資家がいてみたいな関係性が、たぶんもう崩れていくと思うんですよね。トークン発行してというのが実際にできるようになってくると、じゃあ、投資家、もっと言うと株主、経営者は誰なのっていう世界観が生まれてくると思う。それと同じ考えだと思います。その問題意識よく分かります。

そんな中で先ほど佐藤さんは、加納さんの話を聞いて爆笑していましたけど。Web3っていう世界観が生まれつつあること認めつつも、今メタバースに注力されていて、どのようにその辺りを感じていますか?

佐藤:いや、さっきの加納さんの話はめちゃくちゃ面白くて、つまりWeb3の原型っていうのはダークウェブの方だということですよね。つまりダークウェブ、今まで本当は表に出てなかった暗黒というようなインターネットをちゃんと表側にしていこうぜ、と。そっちのほうがメインだと考えてるのが思想の原点というのは、めちゃくちゃ面白いですね。

私たちが表側だと思っていたGAFAっていうのは氷山の一角で、本当はインターネットは下に潜っているダークウェブのほうが大きいということは、もともと言われていたので、確かにその通りだと思いました。

だから先ほどのアプリケーションレイヤーという話とプラスαで、深く私たちが見えてなかったインターネットの部分っていうのが表に出てくるのであれば、確かにこれは大きな革命だと思いますね。

一方メタバースの分野で言うと、わりとリップサービス的にメタバースとか、3DCGとか、VRが、ブロックチェーンとかNFTと相性がいいよねっていう話をすることがあるんですけど。ぶっちゃけた話、そんなことは全然なくて。技術の根本を分かってる人間からすると、そんなことは1ミリもないよと。

むしろ、なんで組み合わせるんだっていう話が今ありますね、たぶんガチのコンシューマーゲームの方々、もしくは3DCGのクリエイターからすると、これほど相性の悪いデータは無いだろうと思っていますね。

本当に、NFTやブロックチェーンと、3DCGをちゃんと組み合わせてコンテンツを作ろうっていう人たちも一部いるんですけども、難易度としては、もう本当にトリプルSぐらいなレベルの話です。コンテンツプロデューサー、ゲームプロデューサーからすると「いや、とんでもないタスクが降ってきたぞ」と考えると思います。

渡辺:相性が悪いというのは、具体的にデータとして相性が悪いってことですか?

佐藤:3DCGとかVRの空間をめちゃくちゃ高精細に作ろうと思うと、データの量も大きいですし、アバターを動かすことだけでもものすごい負荷なんですよね。

かつ、それを2次元じゃなくて3次元で、ちゃんとエコシステムとして成り立たせるって、本当地獄のような作業なんですよね。 

3DCGゲームエンジン側だけでも本当にキャッチアップするの大変なのに、そこにトークンのエコノミクスを絡めるなんて、これはもう自殺行為ですねという話になると思います。

だからちゃんとゆっくりフェーズを分けましょうと、現場の人たちは思ってますね。NFTとかメタバースを混ぜ合わせるという話は、少し早過ぎるかなという気はしてます。

だから僕は、5年とか10年のタームで取り組んでいくことじゃないかと考えています。

渡辺:他方、技術的な部分では確かにそうなんだろうなと思うんですが、トークンエコノミーで利益を平等に分けるとか、成長をみんなで分かち合うみたいなとこで言うと、すごくエンジニアにとっても相性はいい話なんだろうなと思うんですけど、どうですか?

佐藤:ゲームとかエンタメのコンテンツで、かつ3D空間の話だと、良いものを作った瞬間に儲かっちゃうんですよね。ゲームのコンテンツの価値だけで、儲かる。

だから、トップオブトップのクリエイターは素晴らしいものを作って、ユーザーからちゃんとお金をもらえれば、もう十分に経済は成り立っていると考えると思います。そこにさらにインセンティブの設計や、自分たちのゲームバランスを崩してまでの他のゲームとの相互運用性や、クリプトの価格が変動するという話も巻き込んだ上で、面白いもの作るのは厄介だよねと、現場の方々は思ってるんではないでしょうか。

内藤:現場としてはそうですね。どちらかと言うとやっぱりユーザーを巻き込んでいくところが圧倒的にインセンティブ設計が強いんで、Web2.0の中でも一番伸びていったのはやはりYouTubeだと思っています。YouTubeは動画を投稿する人に対してのインセンティブ設計が上手くできている。

だから開発者は、特にOSSのカルチャーから来ている開発者たちからすると、インセンティブが入ってくると思想が合わないことありますが、ユーザー視点で見ると圧倒的にインセンティブ設計が入ったほうが強いとも感じてます。

ただWeb3の話をするとどうしてもお金の話になりやすいですが、本質的にはファンコミュニティだと思いますので、本質的にはスタートアップのストックオプションに近い、みんなで成功したらみんなで分かち合えるという思想だと思っています。

ネット業界を振り返って考えるWeb3

渡辺:王者の風格で田中さんが、おまえらちっちぇえことを話してんなみたいな顔で、さっきからずっと見てますけど、どうですか?

田中:いや、振りがちょっと雑です(笑)。僕は先ほどもお話をしたとおり、メタバースを中心にして、Web3とかIPとかが融合したような、新しい時代のインターネットサービスがこれから誕生すると思っています。

それにかけて僕自身の会社でもWeb3のことをいろいろやってるし、僕はWeb3をめちゃめちゃ肯定派だという超大前提での話なのですが。

ネット業界20年ぐらいを振り返ってみると、Web2.0とか、モバイルインパクトみたいなものとかがあったわけですよね。Web3はそれらを超えるかもしれないですが。

では今時価総額が高い会社はどこかというと、マイクロソフトやアップルなど、全然Web1.0どころがPCの時代の人たちが、むしろ覇権を握っている状況があります。

だからWeb3話も誰の目線から話すのかで、結構変わってくると思っているんです。起業家やこれから起業する若い人たちが、Web3をやるのはすごい良いことだと思うし、先行逃げ切りですごいことができるかもしれないとも思います。

しかし例えば、Slackは初めはすごいなと思ったけどその後Teamsに敗れてセールスフォースになっちゃったりとか。すごいと思ってたサービスの成長が止まって、独立の会社ではいられなくなることも起こっています。

だから一歩引いて考えると、例えばSlackとかZoomが来たあとにTeamsを作ってそれらを凌駕していくようなことも、一つの経営戦略としてはあるわけですよね。(会場の)皆さんも、先行してWeb3をやるんだ派と、Web3がうまくいったのを見てやる派の両方あると思っています。

僕は起業家としてゼロから始めたときは、自分が先行してやるしかなかったんでやってたんですけが、今僕も45歳で初老になってきたんで(笑)。初老としては先行して頑張るチームと、大きく大局を見て物事を考えていくチームも作って、両方やりたいなと思ってます。

渡辺:経営者目線としては、たぶん会社の規模や経営者によって、戦い方は違うと。Web3自体は肯定的だけど、もうちょっと見て、うまいこといきそうだったら、パクっといくかもしれないしということですね。

田中:最前線で戦ってるチームもあるけども、あとからどうするかを考えるチームもあるみたいな、欲張りなんで両方やりますよ。

渡辺:ここまでで皆さんのWeb3のスタンスは分かったと思います。ここからは佐藤さんに、メタバースとWeb3の相性についてもう少し聞きたいです。先ほどは相性は良くないという話だったんですが、技術的にうまく使っていく可能性があるのか、どういったとこで折り合いを付けて大きくなっていくのかなど、どう考えていますか?

佐藤:メタバースも圧倒的なバズワードとして登場して、最近ようやく定義が収れんされてきていると思いますが、それでも現在も3、4ぐらいの仮説があるんですよね。メタバースの中でもそれぞれポジショントークがあって、お互い仲が良くなくて。さらにそのブロックチェーン、NFTと絡めるのか、絡めないのかっていう争いもある状況です。

ブロックチェーンは技術的には2018年、9年ぐらいで一応土台が出来上がってるじゃないですか。最近その応用が利いてアプリケーションがいろいろ進んでいますけど、3DCGとかVRって、今、まさに1カ月、2カ月の単位で技術が変わっているんですよね。

ガチ勢、トップオブトップの人たちっていうのはその技術しか見てなくて、だから他の業界の人たちとコラボレーションする暇はないという雰囲気ですね。

逆にそうでない人たちは、他の業界とコラボレーションをしてちゃんと収益を立てようと動いています。ちょっと言い方は悪いですけども、技術的に小さいものを作ってる人たちは、他の業界の技術を取り入れてマネタイズしようというフェーズなので、今回NFTやWeb3っていう雰囲気になっていますね。

ガチのところで言うと、10年とかっていう単位では(メタバースとWeb3は)交わるような気がするんですけども、足元のタイミングでは、ちょっと今混じったとしても1年後使えないシステムになってしまうのでは、とみんな思っていると感じます。

渡辺:そんな話も踏まえながら、内藤さんのところではゲーム中心に取り組まれていると思うのですが、今のWeb3の取り組みを教えていただいてもらっていいでしょうか?

内藤:今、僕たちは5つぐらいの分野で取り組んでます。

1つ目はFT、NFTを扱うブロックチェーンゲーム。さっきも出たSTEPNみたいなものです。

ただ現在FTは日本で発行することの難易度が高いので、NFTだけを扱うゲームが2つ目ですね。

3つ目は、会社として出版映像事業も始めてるので、そのIPを使ったNFT。4つ目はWeb3企業やNFTクリエイター向けのBtoB。そして5つ目は、Web3系の企業への投資です。

逆にレイヤー1、2とか、取引所とか、NFTマーケットプレイスなどはやってないです。先ほど加納さんが言ったように、今からそんなのやっても、どう考えても勝てないので。  

渡辺:レイヤー3以上を、とりあえず作りまくると言う感じですね。

内藤:そうです、アプリケーションレイヤーのところにフォーカスしています。

規制や税制問題のある日本で、Web3やるべき?

渡辺:ちなみにトークンも発行できないし、日本でWeb3やる意味あると思いますか?

内藤:やっぱ北海道もそうですけど、東京、ご飯がおいしいんで、やっぱ生活は日本で、稼ぐのは海外が、外貨がいいっていうのが一番いいと思ってます。

ただトークン発行できないことがボトルネックに感じる部分はあるんですが、実際に自分たちの会社でトークンを発行したとしても、アロケーションとしては10〜15%しか持てないんですよね。そう考えると別の海外の会社が発行したトークンを10%持つのと、自分たちが発行して10%持つのとそんなに大きな差がないんじゃないかとも考えたりしています。

そう考えると、サービス設計上にFTを盛り込でインセンティブ設計をして、ファンコミュニティをどう実現するかを重視していますね。

渡辺:最近、Web3はシンガポールで起業するしかないみたいな起業家、多いじゃないですか。それはどう考えてますか?

内藤:税金上の問題っていうのは、どうしても逃れられないので、そこをどうするかっていうのは確かに課題だと思いますね、

渡辺:税制が変われば、このWeb3の流れっていうのは、さらに大きく加速すると思います?  

加納:税制だけじゃじゃなく、トークンの発行ができて、IEOやICOができること。また会計基準も変えないと監査法人が付かないし、監査ができないと上場もできない、そう言った問題も解決しなきゃいけないと思います。

それらが全部整うと、国として何のグレーゾーンもなくトークン発行できるっていう状態になれば、アメリカより強いと思うんですよね。

内藤:また監査法人の部分でちゃんとやろうとすると、たぶん上場コストよりも高く、弁護士コストなど士業のコストがかかります。年間で億単位でかかりますよね、僕らも今期のWeb3系の予算の半分ぐらいその費用です。

渡辺:上場してると、本当にややこしい部分ですよね。ちなみに田中さんは今の税制などの話も踏まえて、グリーさんとしては言える範囲でどういうタイミングで攻めていこうと思ってます?

田中:現代のことを過去のメタファーで話すのはおじさんっていうことで本当に良くないんですけど、という前提ででお話をすると(笑)。過去を振り返ったときにWeb2.0って例えば、もともとはMT(ムーバブルタイプ)とか、そういうことなんですね。プログラムをサーバーにインストールして誰でもブログが作れる、超すげーみたいなところから始まってるんです。

そのあと、トラックバックとかRSSリーダーがすごいとかって言ってたら、そんなもの不要なFacebookとかが現れて、いきなりWeb2.0が爆発していくわけですよね。Web2.0のMTとか、トラックバックとか、もう消え去っちゃったわけですよ。

だから業界人の一部の人がすごいと思ってから、本当にみんながすごいと思って普及するまで、下手すると10年ぐらいかかることってあるんですよね。

スマホサービスが始まったときに、みんな一生懸命カメラアプリを作っていて、その時はカメラアプリ超すごいと思っていた人が多かったですけど、今そんな大したカメラアプリはないわけじゃないですか。

結局UberやAirbnbが現れて、スマートフォンだからからこそできるサービスってこっちね、カメラじゃなかったのね、みたいなことがあったりするわけです。じゃあAirbnbやUberが、iPhone誕生の日からめちゃ注目されてたかっていうと、そんなことはない。

こういったタイムラグというか変化があるわけで、Web3っぽいキラーアプリ、今はまだ出てきてない感があります。だから真のキラーアプリが登場するタイミングはいつなのか、そういうことを考えてるんです。

僕はWeb2.0の時も、モバイルの時にも、どの分野で変化率が高いのかを考えていたんですよね。そうするとコミュニケーションサービスは、常に変化率が高いんですよ。

例えばWeb1.0の時はチャットとかメール、2.0でFacebookなどになり、そのあとモバイルでWhatsAppなどになり、時代が変わるとコミュニケーションサービスってガラッと変わってたりするんですよね。

そういった意味で、広義の意味でのメタバースやWeb3、それに絡むIPっていうものが、新しいコミュニケーションサービスを生み出して、今までのコミュニケーションサービスを一気に塗り替えるっていうことはあり得ると思っています。だからここはやるべきだと考えています。

Web2.0的な発想から、Web3のキラーコンテンツは生まれない

佐藤:おっしゃるとおりで僕もメタバースを見て、まさにスマホの再来だなって思いましたね。ゲームもコミュニケーションもガラっと変わりつつある。

今、メタバースや3DCG・VR領域でも、「いや、それはないでしょう」と私たちが思うものを、子どもたちが普通にやってることが多いんですよね。この5年、10年で田中さんのおっしゃる通りガラっと変わるので、たぶん私たちが想像を超えるものっていうのがキラーコンテンツなんじゃないかと思っています。

だから私たち、Web2.0的な発想から出てくるものはキラーコンテンツにならないんじゃないかなと思います。

次の世代、今の10代、20代前半ぐらいの人たちが全く思い込みなしに思い付くもの、やってみようぜって思い付くもの、で、私たちが「いや、それ、うまくいかないんじゃないの」と思ってるもののほうが、今後、成長するんじゃないかなと思ってます。

逆に、私たちが思い付くものっていうのは、たぶんマネーゲームと、もう人材の力で押し倒すっていうことでやられると思うので。会場にいる若手の方々は、おっさんの世代が思い付かないこと、もしくはおっさんの世代が、「ちょっとそれ、微妙じゃない?」って思うことのほうを狙ったほうが勝つ筋なんじゃないかなと、私は思ってますね。

内藤:どうしてもWeb2.0で成功してると、どこかプラットフォーム的なビジネスモデルを入れたがってしまうことがあって、そこを握んないと勝てないんじゃないかと言う思想になってしまう。Web2.0は駄目と言うわけじゃないんですけど、Web3を考える時そのプラットフォーム思想がやっぱ邪魔をすると思います。

やっぱりWeb3はコミュニティで、そしてコミュニティの真ん中にミーム的なところがあるんですよ。そのミームみたいなところが、感覚的なとこが強いんで、やっぱり2.0的なロジカルシンキングなアプローチでいくと、全く理解ができないみたいな状況になっちゃうですよね。

先ほど田中さんが言ったみたいに、コミュニケーションとかって、まさにミームだったり、インセンティブで設計されやすいですし、エンタメも設計されやすいんで、先に変わってしまいやすいと思ってます。

音声同期サービスがメタバースの入り口?

田中:とにかくコミュニケーションサービスっていうのは、時代を経て、まず同期性が高まってるんですよ。

昔は書き込んでから返事があるまで、半日、1日あったのが、今やすぐ返ってこないと遅いと感じます。

その極地が同時にしゃべるっていうことなんですよね。だから完全同期型のコミュニケーションサービスが、次に求められている。ここはまだ、誰も実現していない部分です。

普通に人間が生きてると、文字を書くよりも話すほうが楽なんですよね。朝、起きて、おはようございますって書くよりも、大半の人は話すほうが楽なんです。にもかかわらず、ほとんどのコミュニケーションサービスは書くことが前提だったんですよね。

だから新しい時代、同期性が高まった状態で音声サービスを作るって時代に突入したんですよね。この革新が起きる可能性があって、これを僕はメタバースを入り口の部分に存在すると思っています。過去のコミュニケーションサービスの歴史をひも解いてみると、ずーっとこの方向に来てるんで、これは一貫した流れだと思うんです。

その中で面白いなと思ってるのは「Clubhouse」。劇的に伸びて、劇的に散っていったのを見ると、これは面白いなと。あれこそがまさに音声同期コミュニケーションの極致なんですよ。でもうまくコントロールしないと、ああいう感じで砕けちゃうわけですよね。

あれはWeb2.0時代でいう「Orkut」なんですよ。「Orkut」はめちゃめちゃ流行ったんだけど、一瞬で消えちゃったんですよね。

何を人が求めてるのかは、みんなあれですごい分かったです。でもあれを持続的なネットサービスに変換するためにどうすればいいかっていうことを3回転ぐらいして、そのあとFacebookとかグリーとかと言う時代に迎えたわけじゃないですか。その前には「Myspace」や「Orkut」のような時代が存在するんですよ。

僕は「Clubhouse」が音声同期コミュニケーションがいかに爆発的で、世界的ニーズがあるのかが誰もが分かった瞬間だったと思ってます。でも、「Clubhouse」ではなかった、じゃあ、何なんだ? 僕はそこにメタバース的なものの、次の潮流があると思ってるんです。

Web2とWeb3、どう戦うべきか?

渡辺:ありがとうございます。今日総花的に色々な議論ができたと思います。最後に「Web2とWeb3」について、皆さんのお考えを一言お願いします。

加納:Web3は、Web2で今あるサービスを、単にトークンエコノミーにしただけで、一通りビジネスになるんじゃないかなと僕は思ってるんですよ。

例えば承認欲求で今まで来てたTwitterをWeb3でやって、「いいね」をたくさんもらったらトークンインセンティブがあるみたいな。お金貰えるのって、圧倒的にパワーがあるんですよ。

そう考えるといっぱい領域があるので、若者はこれをやればいいのにと思う。俺は縛られちゃってるからできないけど、絶対やるべきです。

佐藤:今日皆さんと話したことで、自分の中の思い込みがめちゃくちゃ多いなと思いましたね。加納さんのダークウェブだよねっていう話も、本当にその通り、これは凄まじいイノベーションですし。

田中さん、おっしゃったうように全然違う角度から、音声みたいなコミュニケーションがパンとはやって、ボンと落ちるっていうのも見てると、私たち10年以上やってるとインターネットを知った気になってるんだけど、そんなことは全然ねえなっていうことを感じましたね。

メタバースやっていても思います。私たちっていうのは、まだまだテクノロジーのことも分かってないし、コンシューマーのことも分かってないんだなっていうことが、本当に今日はよく分かりました。

内藤:佐藤さんが言っていた、メタバースをやってるとトークンとかまで考えられないという話はその通りだと思います。Web3をやってると金融や法律のことやらないといけないですよね。そして最終的にはサービスとして、インセンティブだけじゃなくて強いエクスペリエンスがないと、やっぱり続かない。

Web3はそれらを全部設計して戦わなければいけない総合格闘技で、この辺の答えが分かるのは3年後ぐらいだと思うんで、その辺りでまた答え合わせができたらいいと思ってます。

渡辺:ありがとうございます。その答え合わせ、意外と早いかもしれないですね。

(おわり)

※記事化にあたり一部表現を編集させていただいております。
※取材日:2022年6月2日

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あたらしい経済 編集部

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