パーペチュアルDEXの税務処理について解説!
暗号資産(仮想通貨)市場において、現在最も急速に成長している分野の一つがパーペチュアルDEX(Perpetual DEX、Perp DEX)です。
大手取引所であるバイビット(Bybit)の日本居住者へのサービス提供終了のアナウンスもあり、現在、中央集権取引所(CEX)のような利便性を持ちながら、透明性の高い取引ができる場所として注目を集めています。
本記事では、パーペチュアルDEXにおいて主要な取引であるパーペチュアル先物取引およびファンディングレート(FR)の受け取り、支払いに関する税務処理について徹底解説します。
また、昨年登場したパーペチュアルDEXであるハイパーリキッド(Hyperliquid)の登場に伴い、HYPEトークンがエアドロップされ、億り人が多数誕生しました。ただ、このエアドロップがHYPEトークンの上場前に配布されたため、その税務処理に悩む人も多かったようです。本記事の後半ではそちらについても解説します。
パーペチュアルDEXとは?
パーペチュアルDEXとは、「DEX(分散型取引所)」上で「パーペチュアル(無期限先物)」取引ができるプラットフォームのことです。
- DEX(Decentralized Exchange): バイナンス(Binance)やBybitのような特定の企業が管理する取引所(CEX)とは異なり、ブロックチェーン上のスマートコントラクトによって自動的に運営される取引所です。ユーザーは自身のウォレット(MetaMaskなど)を接続して取引します。
- パーペチュアル(無期限先物): 通常の先物取引には「決済期限(満期)」がありますが、パーペチュアルには期限がありません。そのため、証拠金を維持できる限り、理論上は「無期限」にポジションを保有し続けることができます。ただ、感覚的にはいわゆる通常の仮想通貨FXと同様に捉えてもよいかと思います。
1.パーペチュアルDEXで可能な取引
パーペチュアルDEXで可能な取引については、そのサービスごとに様々なものがありますが、課税イベントが発生するものであれば以下の通りです。簡単に言えば従来通りの殆どの取引が可能といえるでしょう。
・FX取引(パーペチュアル先物取引)
・FR(ファンディングレート)受け取り、支払い
・現物売買
・ステーキング
・レンディング
・流動性提供 etc…
2.FX取引(パーペチュアル先物取引)
FX取引は厳密に言えば、暗号資産取引ではありません。暗号資産を直接的に取引している訳ではなく、ポジション解消のタイミングにおける対象とした暗号資産の価額に応じて、金銭の授受が行われる取引であるためです。
ただし、暗号資産取引もFX取引もともに雑所得に該当し、雑所得同士で損益通算が可能であり、総合課税の対象であるため同時に計算が可能です。
FX取引の損益計算方法は下記の通りです。
- 利益を出した場合
ポジション解消時に獲得した暗号資産の数量×暗号資産のポジション解消時時価=FX取引による利益額
- 損失を出した場合
ポジション解消時に喪失した暗号資産の数量×暗号資産のポジション解消時時価=FX取引による損失額
※ただし、暗号資産の時価と取得原価の差額は暗号資産の損益額として別途計上することになるため、実質的にはポジション解消時に喪失した暗号資産の数量×暗号資産の1枚あたりの取得原価が損失額となります。
3.FR(ファンディングレート)受け取り、支払い
原則的な先物取引と異なり、パーペチュアル(無期限)先物取引には「満期(決済日)」がありません。そのため、放置しておくと「先物価格」と「現物価格」が大きく乖離してしまう可能性があります。
この2つの価格を近づけるために導入された調整機能がファンディングレートです。
仕組み:ポジション保有者同士(ロング勢とショート勢)で手数料を直接やり取りさせます。
目的:多数派のポジションにペナルティ(支払い)を与え、少数派にインセンティブ(受け取り)を与えることで、価格のバランスを取ります。
受け取るケース:
・ファンディングレートがプラスの場合に売りポジションを持っている場合
・ファンディングレートがマイナスの場合に買いポジションを持っている場合
受取時の計算方法:
暗号資産の数量×暗号資産の受取時時価=ファンディングレート受取による利益額
支払うケース:
・ファンディングレートがプラスの場合に買いポジションを持っている場合
・ファンディングレートがマイナスの場合に売りポジションを持っている場合
支払時の計算方法:
暗号資産の数量×暗号資産の受取時時価=ファンディングレート支払による損失額
※ただし、暗号資産の時価と取得原価の差額は暗号資産の損益額として別途計上することになるため、実質的にはポジション解消時に喪失した暗号資産の数量×暗号資産の1枚あたりの取得原価が損失額となります。
4.時価不明時のエアドロップについて
パーペチュアルDEX の中でも著名な取引所の1つであるハイパーリキッドのネイティブトークンであるHYPEは2024年11月末に取引所のサービス開始とともに大規模なエアドロップで一躍有名になりました。
ただし、その時に税務面で納税者の方を大いに迷わせました。HYPEは上場開始直後から大幅に値上がりをしたため、人によっては1億円以上の含み益が発生したのです。しかし、HYPEがエアドロップされたのは上場前、すなわち時価が付く前のタイミングでした。この場合、どのタイミングで所得を計上すべきか見ていきましょう。
基本的なエアドロップの所得計算方法:
暗号資産の数量×暗号資産の受取時時価=エアドロップによる利益額
原則的には暗号資産の受取時の時価をもって利益とするのですが、HYPEのケースでは上場前にエアドロップされたため、時価がありませんでした。
この場合HYPEは受け取り時点では価値を有していなかったと考えられ、その暗号資産のエアドロップによる利益額は0円となり、同時に取得原価も0円として処理します。
似たようなケースで国税庁が出した「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」で暗号資産の分裂(分岐)に伴い、暗号資産を取得した場合があります。こちらでもハードフォークにより新たに取得した暗号資産については所得は生じず、それに伴い取得価額も0円として処理することになります。
ただし、そのHYPEは取得原価が0円となるため、売却して他の暗号資産や法定通貨、モノ・サービスを購入した場合は、売却時のHYPEの時価がそのまま利益となるので注意が必要です。
ちなみに暗号資産の時価を確認したい場合は暗号資産の価格表示サイトであるCoinGeckoやCoinMarketCapを利用しましょう。
5.パーペチュアルDEXの取引履歴について
パーペチュアルDEXでの取引による損益額を計算するためには取引履歴が不可欠です。ただし、多くのパーペチュアルDEXは直接ブロックチェーンにその取引履歴を刻まないため、ETHscanなどのサイトから取引データを読み込むのではなく、パーペチュアルDEXから直接取引履歴のCSVをダウンロードするか、APIにより損益計算ソフトで直接データを取り込む必要があります。
現時点ではHyperliquid、Aster、edgeX、Hibachi、lighter、Ostium、Backpackなどは取引履歴が何らかの形で取得可能なようです。
ただし、現時点ですべてのパーペチュアルDEXにつき取引履歴を十全に出せる状況ではないようです。そのため、極力取引履歴の取得が可能なパーペチュアルDEXで取引を行うほうが税金計算においては省力化できるかと思います。
6.まとめ
CEXの代替として急速に普及するパーペチュアルDEXですが、利益計算や税務処理には注意が必要です。 基本となる先物取引やファンディングレートの損益は「雑所得」として計算します。
また、HYPEのように上場前に配布されたエアドロップは、取得時価を0円とみなし、売却時にその全額を利益とする考え方など、個別の事例への理解も欠かせません。
特に重要なのが「取引履歴の確保」です。DEXによっては履歴取得が難しい場合もあるため、CSVやAPIで正確なデータが取得できるプラットフォームを選ぶことが、スムーズな確定申告への近道となります。後で困らないよう、履歴の定期的な保存と管理を徹底しましょう。
この連載について
この記事はカオーリア会計事務所の代表で税理士の藤本剛平氏による寄稿コンテンツです。カオーリア会計事務所は、暗号資産の損益計算や税金の申告サポートに強みがある会計事務所。今後も暗号資産の税金に関する気になる疑問について解説記事を連載していきます。
また暗号資産の税金についてご相談がある方は、以下の問い合わせフォームよりご連絡ください。