ヴィタリック、イーサリアムの「自立化テスト」の条件を提示。量子耐性など7項目

ヴィタリックがイーサリアムの自立化に向けた技術要件を提示

イーサリアム(Ethereum)の共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、同ブロックチェーンが真に自立したシステムとなるために必要な7つの技術要件を1月12日に提示した。同氏はこれを「ウォークアウェイテスト(walkaway test)」と呼び、コア開発者が主要なアップグレードを停止しても、プロトコルが安全に機能し続けられる状態を目指すべきだと主張している。

ブテリン氏は、イーサリアムが進化を停止する必要はないが、必要に応じて「オシファイ(ossify:化石化)」できる状態、つまり継続的な開発者の管理に依存せずとも使用可能な状態に到達すべきだと語った。同氏によると、イーサリアムは金融やガバナンスなどの分野でトラストレスなアプリケーションの基盤となることを目指しており、ユーザーが一度手にしたら自分のものになるハンマーのようなツールをサポートする必要があるという。

7つの要件の中でブテリン氏が最初に挙げたのは量子耐性だ。同氏は「効率性を追求するために量子耐性を最後の瞬間まで遅らせるという罠に陥るべきではない。個々のユーザーにはその権利があるが、プロトコルにはない。『現在のイーサリアムのプロトコルは100年間暗号学的に安全である』と言えることを、できるだけ早く達成し、誇りとして主張すべきだ」と投稿で述べている。なお量子コンピューティングは、従来の技術よりも高速かつ強力であるため、現在の暗号技術が依存する解読に要する時間という強みを脅かす存在とされている。

量子耐性への注力は、イーサリアムエコシステム全体での関心の高まりを反映している。2025年3月には、イーサリアム財団(Ethereum Foundation)が、イーサリアムのセキュリティと効率性を向上させるオープンソースコードの開発を目指す研究組織「ZKNox(ジーケーノックス)」をグラント(助成金)などで支援しており、同プロジェクトは特にポスト量子暗号(post-quantum cryptography)に焦点を当てている。

量子耐性以外の6つの要件として、ブテリン氏は、ZK-EVM検証とPeerDASによるデータサンプリングを軸に将来的に数千TPS規模へ拡張可能なスケーラビリティを挙げた。またステートレス化とステート有効期限により数十年にわたって持続可能な状態管理システム、ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)を超えた完全なアカウント抽象化、サービス拒否(DoS)攻撃に耐性のあるガススケジュール、長期的な分散化のためのプルーフオブステーク(Proof of Stake:PoS)の経済モデルの改善、検閲耐性のあるブロック構築メカニズムを挙げている。

ブテリン氏は段階的なアプローチを強調し、実行可能な場合は少なくとも年に1つの要件を完了させることを提案した。将来の変更は、頻繁なハードフォークではなく、パラメータ調整を通じて反映されることが理想的であるという。同氏の望む最終的な状態は、ほとんどの改善がクライアントのパフォーマンスとパラメータ調整によってもたらされるイーサリアムだとしている。

なおブテリン氏は1月11日、分散型ステーブルコインが直面する3つの未解決の問題についても言及している。同氏は米ドルよりも優れた指標の発見、大量の資金で支配されない分散型オラクルの設計、ステーキング利回りとの競争問題の解決が必要だと指摘した。米ドルにペッグされたステーブルコイン市場は現在約3,000億ドル(約47兆円)に達しているが、テザー(Tether)の「USDT」とサークル(Circle)の「USDC」が供給の大部分を占めている。 

画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属 格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。 SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。