ストラテジー、指数プロバイダーMSCIのデジタル資産企業排除案に異議

DAT排除案は「指数の中立性を損なう」

米ナスダック上場企業ストラテジー(Strategy)が、指数プロバイダーMSCIの検討する株価指数からのデジタル資産トレジャリー(DAT)企業排除案に対し、12月10日に意見書を提出し、強い反対姿勢を示した。

MSCIは現在、バランスシートの50%以上をデジタル資産が占める企業をグローバル株式指数から除外する案について市場の意見募集を行っている。

ストラテジーは意欲的にビットコインの購入を進めていることでも知られる企業だ。保有するビットコインの数量は上場企業で世界第一位となる。

今回ストラテジーが提出した、12ページにわたる意見書はこれに対するフィードバックとなる。

ストラテジーは12ページの意見書の中で、MSCIの案は「誤った前提に基づく差別的基準」であり、「指数の中立性を損ない、米国のデジタル資産戦略とも矛盾する」と強く批判した。

文書によれば、MSCIは2024年5月、ストラテジーが先進国市場向け「Global Investable Market Indexes(GIMI)」の方法論に適合すると判断し、同社の株式を指数に組み入れたとしている。

GIMIの構成には「MSCI USA Index」や「MSCI World Index」が含まれており、これらをベンチマークとする ETF・インデックスファンドを通じ、ストラテジーの株式は世界のパッシブ運用マネーを広く呼び込んできた。

これらのことから、今回のDAT除外案は、すでに指数に組み入れられ、パッシブ資金を受け入れてきたストラテジーにとって直接的な影響を及ぼすと見られている。JPモルガンの試算では、ストラテジー株だけで最大28億ドルの売り圧力が発生する恐れがあるとされるという。

ストラテジーは、MSCIがDATを「投資ファンド的」だとして除外対象に分類しようとする姿勢そのものが、根本的に誤った理解に基づいていると批判した。

ストラテジーは、自らをビットコインを単に保有する存在ではなく、保有資産を担保に新しい信用商品や金融商品を創出する「事業会社」だと主張。企業価値の源泉は、保有資産の時価ではなく、経営陣による資本配分や金融工学を通じた運用戦略にあると強調し、これは銀行や保険会社が長年採ってきたビジネスモデルと本質的に変わらないと述べた。

またストラテジーはこれら事業と並行して、業界をリードするAI搭載の企業向け分析ソフトウェアを提供しているとも主張している。

さらにREITや石油・ガス企業、金鉱株など、特定資産に事業構造上集中している企業は市場に数多く存在し、MSCIの指数にも含まれているにもかかわらず、デジタル資産を大量保有する企業だけを例外的に排除するのは差別的かつ恣意的だと指摘。

こうした主張の裏付けとしてストラテジーは、自社株がしばしば保有ビットコインの簿価を大きく上回る水準で取引されている点を挙げ、投資家が評価しているのは「ビットコインそのものへの単純なエクスポージャー」ではなく、「ストラテジーという事業体が生み出す収益機会」であると強調している。

ストラテジーは、MSCIが提案する「総資産の50%以上がデジタル資産である企業を除外する」という基準について、指数の信頼性を根本から損なう恐れがあると指摘している。同社によれば、デジタル資産は価格変動が大きいため、この基準を適用すれば、企業が指数に組み入れ・除外されることで、いわゆる「ホッピング現象」が頻発し、指数としての安定性が失われるという。

また、デジタル資産の会計処理が国際会計基準(IFRS)と米国会計基準(GAAP)で異なることから、同じ DATであっても所在国によって計上額が変わり、結果的に不公平な扱いが生じる点も問題視した。

ストラテジーは、MSCIが掲げる「市場全体を偏りなく反映する」という原則と、今回の案は矛盾すると指摘。

「MSCI は『良い、悪い』という政策判断を指数に持ち込むべきではない。デジタル資産を不当に扱うことは、市場をゆがめる」とし、ビットコインだけで時価総額が1.85兆ドルに達するデジタル資産の市場規模を踏まえると、排除案は、指数が市場の実態を正確に反映する能力を損なうと主張した。

意見書では、現政権がデジタル資産を国家競争力の鍵と位置づけ、401(k)でのデジタル資産投資の解禁・拡大や、特定の資産クラスを不当に扱わない技術中立的な金融規制の整備を進めている点にも言及した。ストラテジーは、こうした政策方針と MSCIの提案は明確に逆行しており、デジタル資産産業の成長を阻害し、ひいては米国の国益を損なう可能性すらあると警告している。

ストラテジーは結論として、MSCIに対し拙速な判断を避けるよう求め、DAT除外案そのものを撤回すべきだと主張した。仮に検討を続けるのであれば、制度導入による影響が極めて大きいことを踏まえ、より詳細な説明と追加的な意見募集を行い、十分な協議プロセスを経るべきだとしている。

参考:意見書
画像:iStock/Aleksei_Derin

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者