米下院歳入委員会、暗号資産の税制法案を9/16に審査へ

少額手数料やステーキングなど規定

米下院歳入委員会(House Committee on Ways and Means)が、暗号資産(仮想通貨)に関する連邦税制を包括的に見直す法案「デジタル資産税制確実化法案(Digital Asset Tax Certainty Act:H.R. 10357)」のマークアップ(法案審査・修正手続き)を9月16日10:00(米東部時間)に実施する。

H.R. 10357は、同委員会のジェイソン・スミス(Jason Smith)委員長が9月14日に提出した。

同委員会は今年6月9日、暗号資産税制に関する公聴会を開催。少額のネットワーク手数料や取引手数料に伴う税務負担の軽減やマイニング・ステーキング、暗号資産貸借、ウォッシュセール、自主的開示制度などに関する複数の法案を取り上げていた。

H.R. 10357には、これらの個別法案で示されていた複数の税制措置が盛り込まれている。

またスミス委員長は9月15日、マークアップに向けて同法案の代替修正案(Amendment in the Nature of a Substitute:AINS)を提示した。代替修正案は全114ページとなっている。

10ドル以下の手数料支払いに伴う暗号資産の損益を不認識

同法案では、暗号資産で支払われる一定のネットワーク手数料や取引手数料を対象とする「デミニミス(少額)例外」が設けられる。

対象となる手数料が10ドル以下の場合、その支払いに用いた暗号資産の譲渡による利益または損失を認識しないとするものだ。

ただし、前年に5,000件を超えるデジタル資産の移転を行った納税者や、ブローカー、ディーラー、トレーダーなどは原則として対象外となる。

また、広く取引されているデジタル資産については、納税者が選択した場合、年間の取得や売却、年末時価などを基に損益を算定できる簡素化された会計処理も導入される。

これらの規定は、原則として2028年から適用される。

米ドルステーブルコインの税務処理も明確化

一定の要件を満たす米ドル建てステーブルコインについても、専用の税務ルールが設けられる。

対象となるステーブルコインについて、取得時の対価が償還価値の99.5%以上である場合など、一定の要件を満たせば、原則として償還価値を税務上の取得価額として扱う。

これにより、米ドルとの価格のわずかな乖離について、一定の範囲で償還価値を基準に損益を計算できるようになる。

同規定は2027年からの適用が予定されている。

マイニング・ステーキング所得を通常所得と明確化

同法案では、マイニングやステーキングに関する税務上の取り扱いも明記された。

マイニングやステーキングなど、デジタル資産の検証を支援する活動から生じる所得を、原則として通常所得(ordinary income)として扱う。

また一定のトラストがステーキングを行う場合について、ステーキングを行う権限を持つことのみを理由として、税務上のトラストとしての地位を失わないことも規定されている。

6月の公聴会で審議された「Tax Clarity for Mining and Staking Act(H.R. 9175)」には、新たに生成されたデジタル資産について、一定の場合に課税を繰り延べることができる選択制度が盛り込まれていた。

一方、今回のH.R. 10357には、同様の課税繰延制度は盛り込まれていない。

暗号資産にもウォッシュセールルール

株式や証券などに適用されている「ウォッシュセールルール」についても、一定のデジタル資産に対象を拡大する。

同ルールでは、資産を損失が出る価格で売却した前後30日以内に、同一または実質的に同一の資産を取得した場合、その損失について税務上の控除が制限される。

今回の法案では一定のデジタル資産も同ルールの対象となる一方、要件を満たす米ドル建てステーブルコインは対象から除外される。

また取引されるデジタル資産の貸借についても、一定の要件を満たす場合、貸借時や返還時の交換に伴う損益を認識しない規定が設けられる。

デジタル資産の自主的開示プログラムも

同法案では、デジタル資産に関する過去の税務上の不備を自主的に申告するための制度も設けられる。

財務長官に対し、法案成立から12カ月以内に「デジタル資産自主的開示プログラム(Digital Asset Voluntary Disclosure Program)」を設置するよう求める。

一定の要件を満たす納税者は、過去の申告を修正し、デジタル資産に関連する不足税額や利息、適用される場合には所定のペナルティを支払うことで同制度を利用できる。

参考:米下院歳入委員会H.R. 10357代替修正案米議会税制合同委員会
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者