データチェーン、法人向けWeb3ウォレット「Datachain Wallet」先行評価版を提供開始

Datachain Walletの先行評価版がローンチ

ブロックチェーン技術に関する企画・開発を行う国内企業データチェーン(Datachain)が、法人向けWeb3ウォレット「データチェーンウォレット(Datachain Wallet)」の先行評価版の提供開始を7月9日に発表した。

同ウォレットは、ステーブルコインやデジタルアセットの法人利用に対応するWeb3ウォレットだ。先行評価版では、金融機関、決済事業者、Web3企業、一般の事業会社など、ステーブルコインやデジタルアセットの活用を検討する幅広い法人を対象に、オンチェーンプライバシー保護機能を含む一部機能を限定して提供するという。

データチェーンウォレットは、承認ワークフローやマルチシグ(複数人承認)による内部統制対応、パスキー(Passkey)による鍵管理、ガスレス対応、オンチェーンプライバシーとコンプライアンスの両立を特徴とする法人向けウォレットである。

一般的なWeb3ウォレットは個人利用を前提としたものが多く、法人業務で利用する場合、秘密鍵の属人的な管理、送金時の承認プロセス、権限管理、監査証跡、ガス代管理、取引情報の保護などが課題となる。データチェーンは、こうした法人利用における課題に対応するため、データチェーンウォレットを開発したとのこと。

同ウォレットでは、送金などの重要操作に対して申請・承認のワークフローを設定できる。複数人の承認を必須とするマルチシグにも対応し、単独の担当者による属人的な資産移動を防ぐ仕組みを備える。また、誰が申請し、誰が承認し、どの権限で操作したかを管理できるため、企業の統制要件に沿ったウォレット運用が可能になるという。

鍵管理にはパスキー技術を採用することで、一般的なWeb3ウォレットで課題となるシードフレーズの紛失・漏えいリスクや、退職者対応、引き継ぎといった法人特有の運用リスクを低減するとのことだ。

また同ウォレットは、トランザクション実行時のガス代を利用企業が個別に用意する必要のない「ガスレス」の仕組みに対応する。送金やコントラクト実行のたびに手数料用のネイティブトークンを調達・補充・管理する経理・運用上の負担を軽減する狙いだ。

さらに同ウォレットは、データチェーンが開発するオンチェーンプライバシー基盤「クラプライバシー(KuraPrivacy)」との連携により、取引情報の保護とコンプライアンス対応の両立を図る。法人利用では、取引金額、残高、送金先、取引履歴などが第三者から見えることが、営業情報や取引先情報の保護の観点で課題となる。一方で、金融・決済領域では監査や規制対応に向けた説明可能性も求められる。同ウォレットでは、不要な第三者開示を抑えながら、必要な関係者への選択的開示に対応することで、秘匿性と説明可能性の両立を目指すという。

なおクラプライバシーは、法人のステーブルコイン取引などにおけるブロックチェーン上の情報公開リスクに対応するプライバシー基盤。同基盤は、送信者や受信者を秘匿する「匿名性」、残高や取引額を秘匿する「機密性」に加え、複数の取引の関係性やパターンから利用企業が特定されることを防ぐ「非リンク性」に対応する。また、当局や監査法人など必要な相手に対して情報を開示できる選択的開示機能も備え、プライバシー保護と規制・監査対応の両立を目指すものとなっている。

データチェーンは今年6月25日、データチェーンウォレットにおいてSOC2 Type1保証報告書を受領したことを発表している。対象は同ウォレットのセキュリティに関する内部統制の設計で、同社は今後、SOC2 Type2保証報告書の受領も目指すとしていた。

また同社は6月15日、クラプライバシーの初期ローンチパートナープログラムを開始。暗号屋、ガイア(Gaia)、ガルシス(GALLUSYS)、グリーンモンスター、幻冬舎、Speee、トレーダム、日本ブロックチェーン基盤、フラクトンベンチャーズ(Fracton Ventures)、HODL1(ホドルワン)の10社が参画している。

なおデータチェーンウォレットは、3月の発表時点では今春のローンチが予定されていた。今回の発表によると、事前申し込み企業との対話を通じ、法人利用に求められる機能および品質の作り込みを優先すべきと判断したため、このタイミングでの先行評価版提供となったという。

データチェーンは、先行評価版を通じて得られたフィードバックを踏まえ、データチェーンウォレットの機能改善や対応ユースケースの拡充を進め、2026年内の正式版提供開始を目指す。

また同社は7月7日、三菱UFJ銀行に対し、ステーブルコインをはじめとするオンチェーン金融インフラの技術基盤構築に向けた技術アドバイザリーを開始することも発表している。同社はこれまで、ステーブルコイン、トークン化預金、クロスチェーン基盤、プライバシー基盤などの事業を通じ、次世代の金融・決済インフラの社会実装を推進してきた。

なおデータチェーンは、7月13日と14日に東京都港区のザ・プリンス パークタワー東京で開催されるWeb3カンファレンス「WebX 2026」に出展し、データチェーンウォレットのデモンストレーションを実施する予定だ。

参考:データチェーン
画像:iStocks/metamorworks

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。