グーグル論文で再燃したビットコイン量子リスク、アダムバックは「差し迫った脅威ではない」と指摘

理論進展とハードウェアの乖離、関係者は冷静な評価

ブロックストリーム(Blockstream)のCEOであり暗号学者のアダム・バック(Adam Back)氏が、グーグル(Google)の量子コンピュータ研究を受けて再燃したビットコインの安全性を巡る議論について、「現時点で現実的な脅威ではない」との見解を示した。現地時間4月7日に投稿されたユーチューブ(YouTube)チャンネル「ブルームバーグ・テレビジョン(Bloomberg Television)」の番組内で語った。

バック氏は、グーグルの研究について「アルゴリズム上の進展を示したものだが、ハードウェアの進歩を伴うものではない」と指摘した。このため、同氏はグーグルの研究はビットコイン(Bitcoin)の暗号解読に関する理論的な効率向上を示すものの、それを実行可能な量子コンピュータの性能は現時点で十分ではないとしている。

また同氏は、将来的なリスクに備え、利用者やカストディアンが量子耐性のある鍵形式へ段階的に移行できるよう準備を進めることが重要だと述べた。

今回の議論のきっかけとなったのは、今年3月にグーグルが発表した研究レポートである。同レポートによりによりビットコインなどで用いられる楕円曲線暗号について、従来想定より少ない量子ビットと演算で解読できる可能性が示された。

グーグルは、256ビット楕円曲線離散対数問題を解くために必要な量子リソースについて、必要な物理量子ビット数の見積もりが従来見積もりから約20倍の削減が見込まれると説明している。このため同社は、2029年の移行タイムラインを提示しつつ、暗号資産(仮想通貨)コミュニティに対してはポスト量子暗号(PQC)への移行準備を進めるよう呼びかけている。一方で、過度な不安の拡散がブロックチェーンの信認を損なう可能性にも言及している。

こうした見方については、他の関係者からも冷静な評価が示されている。スイ(Sui)の開発を行うミステンラボ(Mysten Lab)共同創業者で暗号学者のコスタス・チャルキアス(Kostas Chalkias)氏は、自身のXアカウントで、今回のグーグルの見解について「理論的な改良に過ぎない」「2029年に何かが壊れるわけではない」としたうえで、グーグル論文によって脅威が過度に誇張されている可能性を指摘した。

また、米暗号資産メディア「ザ・ブロック(The Block)」の報道によると、英投資調査会社バーンスタイン(Bernstein)も同様に、グーグルの論文を引き合いに出した上で量子コンピュータによる影響を「管理可能なアップグレード課題」と位置付けている。同社はビットコインを含む暗号資産にとって量子コンピュータは既知の課題であり、段階的な対応が可能との見方を示している。

これらの有識者の見解から、グーグルの研究は量子コンピュータによる暗号解読の理論的な前進を示す一方、それが直ちに実用的な脅威となるわけではないとの認識が広がっている。

今回の議論では、アルゴリズムの進展と、それを実行するためのハードウェアの成熟度を切り分けて評価する重要性が改めて浮き彫りとなっている。

参考:ユーチューブグーグルザ・ブロック
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。