ビットコイン開発者、BIP110のスパム対策効果に疑問提起、66KB画像を記録で

BIP110をめぐる論争が激化、制限回避の実証実験がコミュニティに波紋

スロバキア出身のビットコイン(Bitcoin)開発者マーティン・ハボフシュティアク(Martin Habovštiak)氏が、2月28日に66キロバイトの画像をビットコインブロックチェーン上に単一トランザクションとして記録することで、スパム対策提案「BIP-110」の実効性に異議を唱えた。

BIP-110は、開発者ダソン・オーム(Dathon Ohm)氏が提案したビットコイン改善提案(Bitcoin Improvement Proposal)だ。約1年間の期間限定ソフトフォーク(後方互換性のあるネットワーク変更)として、ブロックチェーン上に記録される画像や動画、テキストといった非金融的な任意データを厳しく制限することを目指している。具体的には、オペコード(スクリプト命令)「OP_RETURN」の上限を83バイトに設定し、一部のデータプッシュやwitness項目を256バイト以内に制限するなどの措置が含まれる。

同提案は2025年10月頃に「BIP-444」として最初に提示された経緯がある。その背景には、ビットコインの参照実装「Bitcoin Core v30.0」においてOP_RETURN関連の上限が実質的に緩和されたことへの懸念がある。この変更により金融と無関係な大量データが埋め込まれる恐れが生じたとして、コミュニティ内で大きな議論を招いた。

BIP-110の主要な支持者として知られるのが、マイニングプール「オーシャン(Ocean)」の最高技術責任者(CTO)でビットコインノードソフト「ビットコインノッツ(Bitcoin Knots)」の開発者ルーク・ダッシュジュニア(Luke Dashjr)氏だ。同氏は2023年以降、ビットコイン上の任意データ記録であるインスクリプション(Inscription)を「スパム」と呼び、データ制限を強く訴えてきた。3月初旬には、Ocean経由でBIP-110への支持シグナルを含む最初のブロックが採掘され、議論がさらに過熱した。

今回ハボフシュティアク氏が記録した画像には、ダッシュジュニア氏が涙を流す様子が描かれている。注目すべきは、このトランザクションがBIP-110の主な制限対象であるOP_RETURNオペコードやタップルート(Taproot)、OP_IF命令を一切使用していない点だ。代わりにセグウィット(SegWit)v0ベースの構成を用いることで、提案の抜け道がある可能性を示したとされる。

ダッシュジュニア氏がこの手法は「連続的(contiguous)ではない」と反論すると、ハボフシュティアク氏はBIP-110準拠でも類似の埋め込みが可能であり、むしろデータ量が増える可能性があると主張している。

一方でBIP-110に反対する立場からは、ブロックストリーム(Blockstream)最高経営責任者(CEO)のアダム・バック(Adam Back)氏が強く異議を唱えている。同氏は、BIP-110がビットコインの価値保存手段としての信頼性への攻撃になりかねないとし、コンセンサスなき変更の強行を批判した。

ハボフシュティアク氏は今回の実験をあくまで一度限りの概念実証と位置づけており、NFT的な利用を助長しないよう意図的にコードを非公開にしていると報じられている。自身もスパムには反対の立場としつつ、「スパム以上に嫌っているのは虚偽だ」との趣旨を述べ、今回の行動に踏み切った動機を説明したという。

なお「The Bitcoin Portal」の直近の表示では、BIP-110を支持するノードは全体の5.88%(6146/104490)にとどまっている。3月1日前後の報道では約8.8%との数字も伝えられていたが、時点差または母数差があるとみられる。一方でBitcoin Knotsノード数の増加については、報道上は昨年初頭比で約10倍とされる。

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属 格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。 SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。