TheDAO事件の未請求ETH、イーサリアムセキュリティ基金として活用へ

7.5万ETH超を原資に

2016年に発生したTheDAO事件に関連する未請求のETHを活用した新たな取り組みが始動した。TheDAOの元関係者らは、イーサリアムのセキュリティ強化を目的とする非営利ファンド「TheDAO Security Fund」を立ち上げ、75,000ETH超(約2.2億ドル相当/約340.7億円)を活用すると1月29日に発表した。

TheDAOは2016年、当時としては最大規模となる約1.5億ドル(約232億円)相当の資金を調達した分散型自律組織(DAO)で、当時流通していたETHのおよそ14%を集めた。しかしその後、スマートコントラクトの脆弱性を突いた攻撃を受け、多額のETHが流出する事態となった。

事件後、資金回復を目的としてイーサリアムコミュニティはハードフォークを実施した。この判断により回収プロセスが進められ、多くのDAOトークン保有者はETHを請求できるようになったほか、イーサリアムクラシック(Ethereum Classic:ETC)上での請求も可能となった。

一方で、技術的・手続き的な理由から一部の「エッジケース資金」は請求されないまま残されていた。これらの資金について、当時のTheDAOキュレーターらは「将来的にイーサリアムのセキュリティ向上に用いる」という方針を示しており、今回のTheDAO Security Fundは、その意思を実行に移す取り組みとなるという。

発表によると、ファンドは主に2つの資金源から構成される。1つは、請求権が残るエクストラバランス(ExtraBalance)コントラクト内の約70,500ETH、もう1つは請求者が存在しないTheDAOキュレーターのマルチシグ内に残る約4,600ETHだ。このうち、エクストラバランス由来のETHの大部分はステーキングに回され、得られる利回りを恒久的な原資として、残りの資金とあわせてイーサリアムのセキュリティ関連助成に充てられる。なお、請求が継続できるよう、エクストラバランスコントラクトには一部のETHが残されるという。

助成対象は、ウォレットUX、スマートコントラクト監査、インシデント対応、L2を含むプロトコル全体の安全性向上など、イーサリアム・エコシステム全体のリスク低減に関わる分野とされている。資金配分には、クアドラティック・ファンディングやレトロアクティブ・ファンディング、RFP方式など、オープンかつボトムアップ型の手法が用いられる予定で、各ラウンドは独立した運営者によって実施されるという。

また、新体制として、イーサリアムの共同創設者であるヴィタリク・ブテリン(Vitalik Buterin)氏を含む新たなキュレーターが参加し、ファンドの運営と監督を担う。ステーキング運用はDappNodeが担当し、複数のクライアントや地域に分散したバリデータ構成を採用することで、分散性と耐障害性を確保するとしている。

なお、今回のファンドは、ハードフォークによって保護され、DAOトークンと引き換え可能な主要な引き出しコントラクト内のETHは対象としていない。DAOトークンは引き続きETHに償還可能である点も明示されている。

TheDAO Security Fundの関係者は、「イーサリアムを、個人の人生資産を銀行よりも安全に預けられる基盤にすることが目標だ」とコメントしている。

参考: 発表
画像:iStocks/Ethereum

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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