イーサリアムが「BPO1」実装完了、ブロブ容量を67%拡大

イーサリアムが「BPO-1」実装

イーサリアム(Ethereum)メインネットに、ブロブ容量を拡大する「BPO-1(Blob Parameter Only-1)」が12月9日に有効化された。BPO-1により1ブロックあたりのブロブ数がターゲット/最大値で6/9から10/15へと引き上げられ、ブロブスループットが即座に67%増加した。またこれによりレイヤー2(L2)ネットワークに対してより多くのデータ領域が提供されることで、ユーザーの手数料負担軽減につながる見込みだ。

なお今回の実装はフサカで導入されたBPOメカニズムを用いたパラメータ変更であり、フルのコード変更を伴う新たなハードフォークを追加で実施することなく行われたものである。

BPO-1は元々、大型アップグレード「フサカ(Fusaka)」の約1週間後に実施される計画だった(フサカは12月3日に実装完了)。フサカ自体ではブロブパラメータの即時変更は行われないが、その後のBPOフォークによって段階的にブロブ容量を拡大するアプローチが採用されている。この方式により、クライアント側のソフトウェアアップデートを必要とせず、安全に容量拡大が可能になるという。

イーサリアムのコア開発者は11月18日のオンライン会議「All Core Developers Consensus(ACDC)」で、フサカに関する暫定的なロードマップを確認していた。

当初の計画では、フサカの実装後にBPO-1を行い、その数週間後(最終的なメインネットスケジュールでは2026年1月7日)に「BPO-2」を実施してブロブのターゲット/最大値を14/21まで引き上げる予定だった。これらの段階的な変更は、「Fusaka Devnet-5」で観察されたパフォーマンスに基づいている。

ブロブは、2024年3月に有効化されたアップグレード「デンクン(Dencun)」で実装された機能だ。一定の強制保存期間を経て保存が任意になるデータの塊で、大量のロールアップ取引データをより効率的に保存できるようにし、L2スケーリングネットワークの利用者にとってコスト削減につながる。今回の容量拡大により、ロールアップはより多くの帯域幅を利用でき、ユーザーは混雑の緩和や手数料の低下を実感できるようになる。

イーサリアムリサーチャーのクリスティーン・キム(Christine Kim)氏は、さらなるBPOがフサカのロードマップに残されているが、11月の会議では最初の2つだけがスケジュール化されたと述べている。フサカおよびBPOに関する詳細なタイムラインは、イーサリアムの開発者コミュニティがHackMDなどで公開している「公開ノート」で確認できる。

フサカは、2025年5月に実装された大型アップグレード「ペクトラ(Pectra)」に続く大型アップグレードだ。ペクトラでは、バリデーターのステーキングに関する変更や新たにアカウント抽象化機能が導入され、スケーラビリティとネットワーク効率の最適化に向けた継続的な取り組みが示されていた。今回のBPO-1実装は、ハードフォークなしでネットワークを進化させられるイーサリアムのモジュラーなスケーラビリティの実現例として注目されている。

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属 格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。 SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。