スイのウォルラスに新機能「シール」統合、オンチェーンで柔軟なデータアクセス制御可能に

ウォルラスに条件付きアクセス制御が実装

スイ(Sui)の主要開発企業であるミステンラボ(Mysten Labs)が、分散型データプラットフォーム「ウォルラス(Walrus)」に新機能「シール(Seal)」をメインネット統合したと9月3日発表した。これにより、ウォルラスはオンチェーンでデータの条件付きアクセス制御をネイティブに提供する初のプロトコルとなった。

シールは、暗号化されたデータに対して「誰がアクセスできるのか」を細かく定義できる仕組みを備える。この機能により、ブロックチェーンの透明性を維持しながらも、必要に応じてプライバシーを確保したデータ利用が可能になる。

パブリックブロックチェーンは、取引履歴やスマートコントラクトの実行状況を誰もが検証できる点で高い信頼性を持つ。一方で、大容量データを直接ブロックチェーンに保存すると計算コストが増大し、スケーラビリティに制約が生じるという課題がある。また、残高や履歴が公開される設計のため、プライベートデータをそのまま扱う場合にはプライバシー上のリスクも伴う。このため、これまで大規模データや機微情報の保存には中央集権型クラウドなどの外部サービスが一般的に利用されてきた。

ウォルラスとシールにより、データを分散的に保存しながらオンチェーン上で柔軟なアクセス制御を実装できるようになる。ウォルラスとシールを組み合わせることで、ミステンラボはスイを基盤に、Web2に匹敵する「フルスタック」のWeb3アプリケーション開発基盤の提供を目指している。

活用が期待される分野は複数ある。具体的には、AIモデルや学習データを共有・収益化できる「AIデータ市場」、暗号化したコンテンツを購読者のみに提供する「トークンゲート型サブスクリプション」、プレイヤーの進行度に応じて暗号化コンテンツを解放する「動的ゲームコンテンツ」などが挙げられる。

すでに複数のプロジェクトがシールをテスト段階で導入している。事例としては、AIデータセットのトークン化プラットフォームを構築するインフレクティブ(Inflectiv)、完全オンチェーン型のマルチプレイヤーゲームを開発するヴェンデッタ(Vendetta)、分散型AI基盤を構築するテンソーブロック(TensorBlock)がある。

なおスイとウォルラスおよびシールはミステンラボが開発元。これらは技術的には統合されているものの、個別に利用可能なプロトコルとして設計されている。

参考:チェーンワイア
画像:iStocks/Cemile-Bingol

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あたらしい経済 編集部

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