米国、不正な資金流入阻止を怠る暗号資産事業者へ対策を講じる構え示す

「米国および加盟国が行動を起こす」と警告

米国がテロリストへの違法な資金提供を行う一部のデジタル資産企業に対し、テロ資金供与を阻止するための措置を講じなければ「米国および加盟国が行動を起こす」と警告した。10月27日に英ロンドンの王立ユナイテッド・サービス研究所にて講演したウォーリー・アディエモ(Wally Adeyemo)米財務次官が発言している。

この講演では、10月7日より始まったパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム武装組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃について触れられ、米国がテロ組織に対し、断固として対立する構えが示された。

アディエモ氏は、米国の目標は「ガザのパレスチナ人への人道的援助を継続させながら、テロリストの資金源を断つこと」だとし、目標のために3つの取り組みを開始したと発表した。

1つ目は、ハマスの資金網を弱体化させるための金融制裁の強化だ。すでにハマスは何十年も米国の制裁下にあるが、今後は新興のペーパーカンパニー、仲介者、斡旋者も制裁対象として追い詰めていく方針だという。

2つ目の取り組みには、世界中の同盟国との情報共有と協力関係強化が挙げられた。

3つ目の取り組みとして、米国は金融機関を含む関係者に対し、テロ組織への不正な資金流入を防ぐための措置を講じているかの確認を行っていると報告している。

アディエモ氏は、「(米国は)こうした関係者(金融機関やデジタルアセット企業)の大多数がテロ資金調達の根絶を望んでいることを知っており、今後もパートナーシップを継続していきたいと考えている」との考えを示したが、「しかしながらデジタル資産の分野には、不正な資金調達に対する保護を含め、責任ある行動を取る代わりに、結果を顧みずにイノベーションを望む人々がいる」と付け加えた。

また「はっきりさせておきたいのは、テロリストのための資金移動を助長している人物やプラットフォームを追及するために、私たちはあらゆる手段を用いるということ。私たちが期待しているのは、金融機関やデジタルアセット企業、その他暗号資産エコシステムに関わる人々が、テロリストが資金を利用できないようにするための措置を講じることだ。もし彼らが不正な資金の流れを防ぐために行動しないのであれば、米国と私たちのパートナー(加盟国)は行動を起こすだろう」とアディエモ氏は警告した。

米財務省外国資産管理局(OFAC)は10月18日、ガザをはじめスーダン、テュルキエ、アルジェリア、カタールなどにいるハマスの主要なテロリストメンバー、工作員、金融仲介者10人に制裁を科したと発表。

制裁対象となったのは、ハマスの秘密の投資ポートフォリオで資産を管理するメンバー、イラン政権と密接な関係を持つカタールを拠点とする金融ファシリテーター、ハマスの主要司令官、ガザを拠点とする暗号資産取引所とその運営者であった。

イスラエル警察は10月10日、パレスチナのイスラム武装組織ハマスに関する暗号資産口座を凍結している。

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参考:米国財務省
デザイン:一本寿和

images:iStocks/gorodenkoff

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。 同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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