ライトニング・ラボ、ビットコインの新拡張技術「LayerTree」紹介。100万人規模で1つのUTXO共有

ライトニング・ラボがビットコインの新たな拡張技術を紹介

ビットコイン(Bitcoin)のライトニングネットワーク(Lightning Network)関連技術を開発するライトニング・ラボ(Lightning Labs)が、新たな拡張技術「レイヤーツリー(LayerTree)」を10月16日に紹介した。

同技術は、100万人規模のユーザーが1つのUTXO(未使用トランザクション出力)を共有しながら、第三者に資金を預けずに管理できるようにする設計だ。現時点では技術提案の段階にあり、ビットコインのメインネットでは利用できない。

ビットコインは、資金を「UTXO」という単位で管理する仕組みを採用している。UTXOとは、取引によって生成される、一定額のビットコインを表す資金の塊のことだ。銀行口座が残高を直接記録するのに対し、ビットコインではユーザーが管理するUTXOの金額を合計することで保有額を把握する。UTXOの数が増加すると、ビットコインのネットワークを維持するノードが管理するデータも増えるため、拡張性における課題の1つとなっている。

レイヤーツリーは、こうした課題に対応するため、複数のユーザーが資金を共同で管理できる仕組みを採用している。具体的には、各ユーザーの残高をブロックチェーンの外部でツリー状の階層構造にまとめ、その状態を示す情報を共有UTXOに反映する。これにより、個々の残高をブロックチェーンに記録することなく、多数のユーザーの資金を1つのUTXOで管理できる設計だ。

また、レイヤーツリーは、第三者に資金管理を委ねない「非カストディアル型」の仕組みを採用している。運営者は新たなユーザーの参加を承認または拒否できる一方、参加者の資金を自由に移動する権限は持たない。各ユーザーは、自身の残高を証明するデータを用いて、運営者の承認なしに資金を引き出せる設計だ。

こうした資金管理を実現するのが、「コベナンツ(Covenants)」と呼ばれる技術だ。コベナンツは、ビットコインの資金を使用する際に、取引内容に条件を設ける仕組みを指す。レイヤーツリーでは、この技術を利用して、ユーザーが資金を引き出す際に残高を証明するデータを検証する。そのうえで、他のユーザーの資金を共有UTXOに残しながら、引き出しを希望するユーザーの資金だけを1回の取引で払い出す。

さらに、レイヤーツリーでは、資金を引き出すために事前に署名された取引を用意する必要がない。共有UTXO自体にも有効期限がなく、一定期間ごとに仕組み全体を再構築する必要はない。一方、個々のユーザーには退出期限を設定できる。期限が経過すると、運営者は対象ユーザーを共有UTXOから退出させられるが、その際も資金はユーザー本人に支払われる設計だ。

レイヤーツリーは、ライトニングネットワークとの連携も想定している。ライトニングネットワークは、ビットコインのブロックチェーンに取引を毎回記録せず、高速かつ低コストで送金するための仕組みだ。レイヤーツリーでは、共有UTXO内の資金をライトニングネットワークの決済に利用できる。また、運営者が支払いを仲介する方式などにより、ユーザーが常時オンラインでなくても資金を受け取れる設計だ。ただし、受け取り方式によっては、支払いの処理中に一時的な信用リスクが生じる。

一方、レイヤーツリーには技術的な制約もある。多数のユーザーが同じUTXOから一斉に資金を引き出そうとすると、取引を順番に処理する必要があるため、引き出しが滞る可能性がある。公式サイトでは、複数のツリーに分けて運用する方法を対策として挙げている。

なお、レイヤーツリーの実現には、ビットコインの取引条件を検証するプログラムで使用する「オペコード(Opcode)」の追加が必要となる。同技術は、既存のオペコード提案を組み合わせて利用する設計だが、必要な命令は現時点で有効化されていない。公式サイトでは、技術仕様や参照実装、取引サイズの測定結果などが公開されている。

参考:レイヤーツリー
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。