Suiのビットコイン金融基盤「Hashi」、5億ドル超の資本コミットメントでメインネットローンチへ

「Hashi」が10月後半にメインネットローンチへ

レイヤー1ブロックチェーン「スイ(Sui)」を支援するスイ財団(Sui Foundation)が、ビットコイン(BTC)を担保とした貸付や借入などの金融サービスを利用できるインフラ「ハシ(Hashi)」のメインネットを、10月後半から段階的にローンチすると10月8日に発表した。また、スイ財団は20社以上のローンチパートナーから5億ドル(約789億円)を超える資本コミットメントを確保したことも明らかにした。さらに、米暗号資産(仮想通貨)カストディ企業アンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)が、新たにローンチパートナーとして参画するという。

ハシは今年3月に発表されたビットコイン金融インフラで、7月にはテストネットが公開された。開発の背景には、機関投資家や上場企業が保有するビットコインの活用に関する課題がある。スイ財団によると、現在1兆ドル(約158兆円)を超えるビットコインが十分に活用されていないという。機関投資家や上場企業は、資産の保管やコンプライアンス、セキュリティなどの要件を満たしながら、保有するBTCを金融市場で活用する手段が限られていたとのこと。

例えば、企業が保有するBTCを売却すれば資金を調達できるが、その場合はBTCの保有量が減少する。一方、BTCを担保として資金を借り入れれば、保有を続けながら資金を調達できる。ただし、BTCの価格が下落した場合には、追加担保の差し入れや担保の清算が必要になる可能性がある。

こうした課題に対応するため、ハシはBTCをビットコインネットワーク上に保持したまま、そのBTCを裏付けとするトークンをスイ上で利用する仕組みを採用している。具体的には、利用者がBTCを預け入れると、そのBTCに対応する「hBTC」がスイ上で発行される。利用者はhBTCをスイのスマートコントラクトを通じて金融アプリケーションで利用できる。また、BTCを引き出す際にはhBTCがバーン(焼却)され、元のBTCがビットコインネットワーク上で解放される。

ハシの基盤となるフレームワークは、スイの初期開発に貢献したミステンラボ(Mysten Labs)が開発しており、個別の金融商品は第三者が独立して開発・提供する。具体的には、BTCを担保としたステーブルコインの借入や、ボールトを通じた資産運用、ストラクチャード商品などが想定されている。ボールトとは、利用者から預かった資産を一定の運用方針に従って管理・運用する仕組みを指す。さらに、現実資産(RWA)に関連する運用戦略やビットコイン担保債券などへの活用も見込まれている。

こうした金融サービスに必要な資本は、アフターマス(Aftermath)、コンクリート(Concrete)、フルイド(Fluid)などが提供するボールトを通じて供給される予定だ。ただし、今回発表された5億ドル超はローンチに向けた資本コミットメントであり、同額の資産がすでにハシへ預け入れられていることを意味するものではない。

またハシのエコシステムには、暗号資産カストディ企業ビットゴー(BitGo)、暗号資産取引所ブリッシュ(Bullish)、暗号資産取引企業カンバーランド(Cumberland)、デジタル資産プライムブローカーのファルコンX(FalconX)、ハードウェアウォレット企業レジャー(Ledger)などが参加している。ハシへのアクセスは、各パートナーによるシステム統合の進捗に合わせて段階的に拡大するという。

今回新たにエコシステムに参画するアンカレッジ・デジタルは、機関投資家向けに暗号資産の保管や関連金融サービスを提供する企業。米国初の連邦認可暗号資産銀行を傘下に持つ。同社は、機関投資家の異なる資産管理・運用要件に対応するため、担保管理サービスとセルフカストディウォレットの2つを通じてハシへのアクセスを提供するという。

1つ目は、アンカレッジ・デジタルの決済・三者間担保インフラ「アトラス(Atlas)」を通じたアクセスだ。三者間担保管理とは、資金の借り手と貸し手に加え、第三者が担保の保管や管理などを担う仕組みを指す。アトラスでは、BTCを規制上の要件を満たす適格カストディの管理下に置いたまま、融資などの担保として活用できるという。この仕組みは、資産の保管やコンプライアンスについて厳格な要件を持つ機関投資家を対象としており、ビットコインを保有する上場企業や、分散型金融(DeFi)に直接アクセスすることが難しいデジタル資産トレジャリー企業などの利用が想定されている。 デジタル資産トレジャリー企業とは、BTCなどの暗号資産を財務資産として保有・運用する企業を指す。

一方、2つ目は、機関投資家向けセルフカストディウォレット「ポルト(Porto)」を通じた直接アクセスだ。セルフカストディとは、第三者の保管事業者に資産の管理を委ねず、利用者自身が秘密鍵などを管理する方法を指す。ポルトは、暗号資産分野のベンチャーキャピタルやヘッジファンド、マイナー、マーケットメーカー、流動性提供者などを対象とする。これらの利用者は、自身で資産を管理しながら、ハシ上の貸付や利回り獲得、RWA関連の運用などにアクセスできるという。また、アンカレッジ・デジタルはハシへのステーブルコイン流動性の提供も計画している。

なお、今回発表された5億ドル超の資本コミットメントは、実際の資産預け入れや融資の実行額とは異なるため、公開後にどの程度の資本が投入され、BTCを活用した金融サービスが利用されるかが今後の焦点となる。

 

参考:公式ブログ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。