リスクが企業向け金融プラットフォームへ事業転換、Lisk Chainは10月末に終了へ

リスクが企業向け金融プラットフォームへ事業転換

ブロックチェーンプロジェクトのリスク(Lisk)が、金融チーム向けのマネーオペレーションプラットフォームへ事業を転換すると8月25日に発表した。これに伴い、リスクが運営するイーサリアム(Ethereum)のレイヤー2(L2)ネットワーク「リスクチェーン(Lisk Chain)」は10月31日に終了する。

リスクは2016年に独自のレイヤー1(L1)ブロックチェーンとして始まったプロジェクトだ。その後、2024年にOPスタック(OP Stack)を採用したイーサリアムL2としてメインネットを立ち上げた。これまでは開発者が分散型アプリケーション(dApps)などを構築できるブロックチェーンネットワークを提供してきたが、今後は企業の財務部門が直接利用する金融プラットフォームへ軸足を移す。

新しいリスクは、複数の法人や国・地域にまたがって事業を展開し、法定通貨とステーブルコインの両方を扱う企業を主な対象とする。口座や支払い、承認などの財務業務を1つのワークスペースで管理できるプラットフォームとして提供される。同社は8月25日、条件を満たす企業向けにアーリーアクセスの申し込み受付も開始した。

リスクは事業転換の背景として、企業によるステーブルコイン利用が拡大する一方、既存の金融インフラがこうした変化に追いついていないと指摘している。同社は、2025年12月の決済状況を年換算した企業間(B2B)ステーブルコイン決済額が2,260億ドル(約36兆円)に達したとのデータを挙げている。また同社は、実世界でのステーブルコイン決済額の約60%をB2B決済が占めたと説明している。

一方、複数の国や法人で事業を展開する企業では、法定通貨とステーブルコインの残高が別々に管理され、支払いや承認、経理処理も分散する場合がある。リスク自身の財務チームも、複数法人をまたぐ決算処理や、異なるタイムゾーンにいる担当者からの承認、取引の背景や経緯を後から確認する作業などに対応してきたとのこと。同社は、こうした約10年間の経験をもとに新たな金融プラットフォームを開発したと説明している。

アーリーアクセス版では、銀行送金による資金とステーブルコインを同じアカウントで1つの残高として管理できる。また同サービスは、実際の口座情報を持つバーチャル口座を通じた銀行送金の受け取りや、ステーブルコインの直接受け取り、外部銀行口座への支払いにも対応する。各支払いには企業が設定した承認ルールが適用され、操作した担当者も記録されるとのことだ。

同社は今後、法人カードやノンカストディアル型の財務管理ツール、給与支払いサービスとの統合などの機能も追加する予定だ。

今回の事業転換に伴い、リスクチェーンは10月31日に終了する。それまではチェーンの稼働と基盤インフラのサポートを継続する。

リスクチェーンで稼働するdAppsや開発チームに対しては、イーサリアムL2のセロ(Celo)への移行ルートが用意された。リスクはセロ・コア・カンパニー(Celo Core Co.)と協力して移行支援を進めている。セロへ移行するかどうかは、各プロジェクトが任意で判断できる。

セロへの移行を希望するプロジェクトについては、セロ側が技術要件やユーザー、流動性などを確認したうえで移行を支援する。移行ルートは、リスクチェーンのすべてのプロジェクトに開かれているとのことだ。

リスクDAO終了を提案、LSKは新たな役割へ

またリスクは、新事業への集中に伴い、リスクDAO(Lisk DAO)の終了も提案している。リスクDAOは、コミュニティがトレジャリーの資金配分や助成先などを決めるための組織だ。リスクチェーンの終了は決定している一方、DAOの終了についてはコミュニティによる投票の対象となっている。

同提案には、リスクDAOのトレジャリーから1億LSKをバーンし、LSKの総供給量を4億LSKから3億LSKへ削減する計画が含まれる。また、2026年までに権利確定する分と、すでに流動化されているDAOトレジャリーのLSKをリスク(Lisk Ltd)へ移管する計画も示されている。移管量は約4,700万LSKで、正確な数量は実行時に確定するとのことだ。

さらに同提案では、ガバナンス関連コントラクトやリスク・ガバナンス・フォーラム(Lisk Governance Forum)などのDAOインフラを終了する方針が示された。

ステーキングについては、同提案の可決とコントラクト更新後、LSK保有者がペナルティなしでアンステークできる仕組みに変更する。アンステーク後には3日間の待機期間が設けられる。

なお、リスクチェーンの終了後もLSKは存続する。リスクはLSKを、新たな金融プラットフォームの「ロイヤルティトークン」として位置付ける方針だ。企業は将来的に、リスクでの財務業務や他社の紹介などを通じてLSKによる報酬を受け取れるようになる。また、LSKによるサービス手数料の支払いにも対応する予定だ。

今後は、暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)が開発するイーサリアムL2「ベース(Base)」が、イーサリアムと並ぶLSKの主要ネットワークになる。イーサリアムや取引所でLSKを保有するユーザーは、特別な対応をする必要はない。一方、リスクチェーンでLSKを保有するユーザーやステーカーは、10月31日のチェーン終了までにLSKをイーサリアムへ移行する必要がある。なお、リスクによると、リスクチェーンからイーサリアムへのブリッジには最低7日間かかるとのことだ。

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。