インド中銀、暗号資産「禁止寄り」政策を改めて主張。海外取引所経由の取引把握に懸念

インド中銀が暗号資産政策に「禁止寄り」方針主張

インドの中央銀行であるインド準備銀行(Reserve Bank of India:RBI)が、暗号資産(仮想通貨)政策について「禁止寄り」の方針を取るべきだとの主張を改めて示した。一方、同国の税務当局は、海外取引所を通じた取引の追跡は困難だと警告している。ロイターが確認した政府文書で明らかになった。

これらの文書からは、インド政府が暗号資産を禁止するか規制するかについて正式な方針をなお採用していないにもかかわらず、主要なインド当局の間では、仮想デジタル資産に対してより厳しい制限を用いることを選好している様子がうかがえる。

インドでは、RBIが2018年に出した、金融機関による暗号資産関連業者との取引を制限する方針を、2020年3月にインド最高裁が無効と判断して以降、暗号資産はグレーゾーンに置かれてきた。

民間暗号資産を禁止する2021年の法案草案は国会に提出されず、この問題に関する討議文書も繰り返し先送りされてきた。政府は仮想資産に関する正式な政策の実施を遅らせており、いかなる計画も、イノベーションとリスク管理のバランスを取りつつ、通貨主権や金融の安定を守り、消費者の損失を防ぐものでなければならないと主張している。

ロイターは以前、インド財務省が2025年9月の内部協議で、RBIとの協議を経て、仮想資産について限定的な規制上の明確化を支持したと報じていた。同省は、既存の税制やその他の法律によって、この資産クラスに伴うリスクは抑制されていると主張していた。

最新の文書は、暗号資産が明確なルールなしに取引され続けるなか、主要当局が同国の金融安定に対するリスクの高まりを懸念していることを示している。

インド財務省とRBIは、ロイターのコメント要請に応じなかった。

暗号資産は、ステーブルコインの幅広い利用を後押しする法制度の整備により普及拡大への期待が高まっている米国での政策変更を受け、世界的に受け入れが広がっている。

日本やシンガポールのように暗号資産の規制に動いた国がある一方、中国はこうしたトークンの利用を禁止している。 ・インドでは政策が曖昧な状況にあるにもかかわらず、税務当局の推計によると、同国には約3,900万人の暗号資産トレーダーが存在し、今年5月末時点で約21億ドル(約3,412億円)のデジタル資産を保有していた。

禁止寄りの政策の可能性

暗号資産関連リスクについて繰り返し警告してきたRBIは、「禁止寄り」の政策が正当化される可能性があるとの見解を改めて示した。

今年の5月と6月の文書によると、RBIは、波及リスクを抑えるため、銀行や金融機関が暗号資産および民間発行ステーブルコインを保有、取引、またはエクスポージャーを持つことを禁止すべきだとした。

現在、インドの銀行は暗号資産を扱うことを禁止されていない。ただし、大手金融機関はRBIによる度重なる警告を受け、暗号資産を避けてきた。

RBIの考え方に詳しい関係者は、メディアに話す権限がないとして匿名を条件に、中央銀行の傾向は、暗号資産を規制された金融システムの外に置くための禁止に向かっていると述べた。

RBIはステーブルコインについても警告している。

RBIによると、外国通貨を裏付けとするステーブルコインは国内の通貨主権に脅威をもたらすとのこと。一方、ルピー建てトークンは、政府が法定通貨を発行することで得る収入を減少させる可能性があり、市場ストレス時には金融安定にリスクをもたらす可能性があるという。

また、ステーブルコインを認めれば、保有資産を法定通貨に換える必要性が低下し、暗号資産の利益の把握と課税がより困難になる可能性もある。インドでは、暗号資産から得た利益に30%の税金が課される。

暗号資産利益の誤申告

文書によると、インドの税務当局は、所得税法に基づく申告において、暗号資産保有の誤申告事例を確認している。

税務当局の調査結果によると、2023年3月に終了した会計年度に暗号資産取引を行った64万5,000人のうち、税務申告でそれを報告したのは4分の1未満だった。

税務当局は、海外取引所やプライベートウォレットを経由した取引では、実質的所有者の特定と税金の徴収がより困難になると指摘した。また、ルピー建てのピアツーピア取引は、課税所得の追跡をさらに難しくするとした。

バイナンス(Binance)やコインベース(Coinbase)などのグローバル暗号資産取引所は、インド金融情報機関(FIU)への登録後、インドで事業が行える。

税務当局はまた、価格変動の大きさや統一的な評価基準の不在が、税務上の暗号資産評価を複雑にしているとも警告した。

文書によると、インド企業省は、仮想デジタル資産に関する会計基準やその他の指針を検討している。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
India central bank backs crypto ban, tax department warns of evasion risks, documents show
(Reporting by Nikunj Ohri and Sarita Chaganti Singh in New Delhi and Jaspreet Kalra in Mumbai; Editing by Ira Dugal and Thomas Derpinghaus)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。