5年の時限措置設ける
米証券取引委員会(SEC)の取引・市場局がスタッフ声明として、分散型金融(DeFi)フロントエンドや自己管理型ウォレットのUIを提供する事業者について、一定の条件を満たせば証券ブローカー・ディーラーとしての登録が不要との見解を4月13日に公表した。
DeFiにおいては、ユーザーがメタマスク(MetaMask)のようなウォレットやDEX(分散型取引所)のフロントエンドを使って、オンチェーンで暗号資産(仮想通貨)証券の売買指示を出す場面が散見される。しかしSECはこれまで、こうしたUIプロバイダーが、他人の口座のために証券取引を成立させる業者が、ブローカーに該当するかどうかについて、明確な回答を示してこなかった。
登録ブローカーになるには膨大なコンプライアンス対応が必要で、スタートアップが簡単に乗り越えられるハードルではない。曖昧なままでは、開発者が萎縮して革新的なサービスが育たないという懸念が業界から上がっていた。
スタッフ声明が示した条件は、「ユーザーの自律性」、「中立性」、「透明性」の3つに整理される。
まずユーザーの自律性という観点では、スリッページ上限やガス代といった取引パラメーターをユーザー自身が自由に変更できる仕組みを備えること、かつその設定方法に関する教育コンテンツを提供することが求められる。また特定の取引を事業者側から積極的に勧誘することは認められない。
また、中立性の面では、表示する執行ルートについて「最良価格」「最も信頼できる」といった主観的なコメントを付けてはならず、複数のルートを示す場合は価格や速度といった客観的な指標でユーザーが並べ替えられるツールを提供することが条件となる。手数料についても、取引ごとの固定額かパーセンテージに限定され、証券会社に広く普及しているオーダーフロー報酬(PFOF)の受け取りは明確に禁止される。
透明性については、関連会社が運営する取引所と接続する場合の利益相反の明示開示に加え、サイバーセキュリティ対策やMEV(最大抽出可能価値)戦略への対応方針など、運営上のポリシーを広くユーザーに公開することが求められる。
逆に、投資アドバイス・資産保管・注文のルーティングといった機能を持つ場合は、この見解の対象外となる。なお本声明は5年間の時限措置であり、2031年4月13日に効力を失うとのことだ。
暗号資産に理解が深いことで知られるヘスター・パース(Hester Peirce)委員は、スタッフ声明を評価しつつも、より踏み込んだコメントを発表している。
パース氏は、「ウォレットやインターフェースは、ユーザーが自己管理ウォレットを使ってオンチェーンデータを見たり取引指示を送ったりするだけで、自動的に『ブローカー』になるわけではない。これは法的にすでに明確なはずだ」と指摘。
さらに、SECがこれまで「ブローカー」の定義を過度に拡大解釈し、ノーアクションレターや執行措置のパッチワークで対応してきたことを「内なる悪魔との戦い」と表現し、批判。
「暗号資産は、SECに証券法の過度な拡大解釈という『内なる悪魔』と向き合うことを迫っている。投資家が使い勝手の良いツールを使えなくなるのは困る」とし、今回の声明はあくまで中間的な措置に過ぎず、恒久的なルール整備に向けたパブリックコメントへの積極的な参加を業界に呼びかけた。
今回の声明は法的拘束力を持たないが、DeFiフロントエンド開発者にとって大きな一歩となる。条件を守れば登録なしで良いという公式声明は、特に米国ユーザーへのサービス提供をためらってきたプロジェクトにとって追い風となる。
しかし一方、SECは5年の時限措置という点を明記しているため、パース委員が求めるような恒久的な制度整備に向け、SECがどこまで踏み込めるかが今後の注目される。
SECはこの声明に関する意見をコメントオンラインフォームまたはメールで受け付けている。
参考:SEC発表 ・へスター・パース氏声明
画像:PIXTA