暗号資産犯罪、2025年に過去最高の1540億ドル規模に=チェイナリシスレポート

前年から162%増加

米国拠点のブロックチェーン調査会社チェイナリシス(Chainalysis)が、暗号資産(仮想通貨)犯罪の動向をまとめた「The 2026 Crypto Crime Report」の日本語版を3月16日に公開した。同レポートによると、2025年に不正アドレスが受け取った暗号資産は少なくとも1,540億ドル(約2兆4,552億円)に達し、前年から162%増加したという。これは主に、制裁対象エンティティが受け取った価値が大幅に増加したことが背景にあるとされる。

同レポートでは、近年の暗号資産犯罪の特徴として、犯罪エコシステムの「組織化」と「専門化」が進んでいる点が挙げられている。犯罪グループは大規模なオンチェーンインフラを構築し、資金洗浄や犯罪ネットワークの資金移動を支援するサービスを提供するなど、国際的な犯罪ネットワークを支えるサプライチェーンのような構造が形成されつつあるという。

一方で、暗号資産市場全体の取引量と比較すると、不正取引の割合は依然として小さい。帰属が確認されたすべての暗号資産取引量に占める不正取引の割合は、2025年時点でも1%未満にとどまっていると推定されている。

またレポートでは、2025年の暗号資産犯罪の特徴として国家レベルの活動が拡大している点にも言及されている。北朝鮮関連のハッカーは2025年に20億ドル(約3,189億円)以上の暗号資産を窃取したとされ、その中には2025年2月に発生した暗号資産取引所バイビット(Bybit)への攻撃も含まれる。この攻撃は約15億ドル(約2,391億円)規模とされ、暗号資産史上最大のデジタル強盗と位置付けられている。

さらにロシアでは、制裁回避の手段として暗号資産の活用が進んでいると指摘された。同国が立ち上げたトークン「A7A5」は、開始から1年足らずで933億ドル(約14兆8,744億円)以上の取引を処理したとされ、制裁回避を促進したとされる可能性が示唆されている。また、イランのプロキシネットワークも暗号資産を活用し、石油販売や資金洗浄、武器調達などを含む取引を20億ドル(約3,189億円)以上支援してきたと分析されている。

暗号資産犯罪で使用される資産にも変化が見られた。レポートによれば、現在はステーブルコインが不正取引の中心となっており、全体の84%を占めているという。ステーブルコインは価格変動が比較的少なく、国境を越えた送金が容易であることから、暗号資産エコシステム全体で利用が拡大しているが、その利便性が犯罪活動にも利用されている可能性があると指摘されている。

さらにレポートでは、中国語圏のマネーロンダリングネットワークの拡大も大きなトピックとして挙げられている。チェイナリシスは、中国語圏のマネーロンダリングネットワーク(CMLN)が2025年には既知のオンチェーン資金洗浄活動の約20%を占めるまでに拡大したと分析している。これらのネットワークはテレグラム(Telegram)などを通じてサービスを提供し、詐欺やハッキング、制裁回避など多様な犯罪活動で得られた資金のロンダリングを支援するエコシステムを形成しているという。

同レポートではまた、暗号資産の透明性が犯罪対策において重要な役割を果たす可能性についても強調されている。パブリックブロックチェーンでは取引が不変の台帳として記録されるため、従来の金融システムと比べて資金の流れを追跡しやすい特徴がある。そのため、暗号資産犯罪の割合自体は依然として小さいものの、国家や組織犯罪が関与する複雑なエコシステムが形成されつつある中で、規制当局や法執行機関、暗号資産関連企業の連携がこれまで以上に重要になるとレポートでは指摘されている。

参考:発表
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者