韓国、暗号資産取引所の大株主持分を20%制限へ。新規は最大34%の例外案も

業界からは懸念の声も

韓国政府と与党が、暗号資産(仮想通貨)取引所の大株主の持分上限を20%とする方針で合意した。現地メディアの「ヘラルド経済」などが3月4日に報じた。

報道によると、与党「共に民主党」のデジタル資産タスクフォース(TF)と韓国の金融委員会は、暗号資産取引所の大株主による支配を制限する規定について協議し、大株主の持株比率を原則20%までとする案で折衷したという。この規制は韓国国内の暗号資産取引所の主要株主に広く適用される見込みとされている。

一方で、新規事業者については政令で定める例外として、最大34%までの持分保有を認める案も報じられている。この水準は、韓国の商法において株主総会決議に対する拒否権ラインとされる約33.3%を意識したものとみられている。

また、大株主持分制限の導入には猶予期間も設けられる予定だ。法律施行後3年間は規制適用を猶予する方針で、さらに市場シェアが一定水準に満たない取引所については追加で3年間の猶予が認められる可能性がある。この場合、小規模取引所は最大6年間の猶予期間を確保できることになる。

韓国の暗号資産市場では、アップビット(Upbit)とビッサム(Bithumb)の2社が市場シェアの約90%を占めているとされる。このため両社は法律施行後3年以内に大株主の持分整理を迫られる可能性がある。一方でコインワン(Coinone)、コービット(Korbit)、ゴーパックス(Gopax)など市場シェアが比較的小さい取引所は、追加猶予を含め最大6年間の対応期間を得る可能性がある。

現在、韓国の主要取引所はいずれも大株主の持分が20%を大きく上回っている。例えばアップビットでは創業者のソン・チヒョン(송치형)氏が約25%を保有しているほか、ビッサムはビッサム・ホールディングスが約73%、コインワンは創業者が50%超、コービットは未来アセット金融グループ系企業が90%超を保有している。またゴーパックスではバイナンス(Binance)が約67%を保有しているとされる。

今回の持分制限を巡っては、韓国で議論が進む暗号資産基本法の重要論点の一つとして調整が続いてきた。金融委員会は、少数の創業者や株主が暗号資産取引所という「市場インフラ」を強く支配している状況について、ガバナンス改善が必要だとの立場を示してきた。一方で、与党のデジタル資産TF内では過度な規制になる可能性を懸念する声もあり、折衷案の模索が続いていたとされる。報道によれば、政府と与党の政策協議を前に調整が進み、規制の方向性が固まった形だという。

なお、このように取引所の大株主持分に上限を設ける規制は、国際的には比較的珍しいと指摘されている。多くの国や地域では、暗号資産取引所の大株主について持分そのものを制限するのではなく、適格性審査や当局への届出制度などを通じて監督する仕組みが採用されている。

例えば日本では、暗号資産交換業者の主要株主について一律の持分上限は設けられていない。一方で、主要株主の変更は資金決済法に基づく変更届出事項とされており、当局は届出を受理した後にガバナンスや法令遵守体制などを確認する枠組みとなっている。

また米国でも暗号資産取引所の株式保有比率に関する一律の上限規制は設けられていない。ライセンス制度や経営陣・株主の適格性審査を通じて監督が行われている。さらにEUの暗号資産規制である「暗号資産市場規則(MiCA)」でも、暗号資産サービス事業者に対して大株主の適格性審査やガバナンス要件は設けられているものの、持分比率そのものを直接制限する規定は設けられていない。シンガポールや香港でも同様に、当局による承認制度や適格性審査を中心とした監督体制が採用されている。

こうした状況から、韓国の規制案については業界関係者から懸念の声も出ている。報道では、業界関係者が「暗号資産取引所の大株主持分を20%に制限する制度は世界的にも例が少なく、過度に導入されれば競争制限やイノベーションの鈍化、参入障壁の強化などの影響が生じる可能性がある」と指摘しているという。

今回の内容は政府と与党の政策協議を経て、議員立法として法案が提出される見通しとされている。ただし国会審議では野党の反対や与党内の異論もあるとされ、最終的な制度内容は今後の立法過程で調整される可能性がある。

参考:報道 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者