ECB、デジタルユーロのユースケース検証へ。70社参加のイノベーションプラットフォーム設立

CBDC開発で産官連携強化

欧州中央銀行(ECB)が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルユーロ」の発行に向けたプロジェクトの一環として、欧州の利害関係者と協力するためのイノベーションプラットフォームを設立したと5月5日に発表した。

プラットフォームには、小売業者、フィンテック企業、スタートアップ、銀行、その他の支払いサービス提供者など、約70の市場参加者が参加を表明しており、ECBと協力してデジタルユーロの支払い機能や活用事例(ユースケース)の検証を行う予定だ。

参加企業には、アクセンチュア(Accenture)、スイスの通信会社スイスコム(Swisscom)、スペインの銀行カイシャバンク(CaixaBank)、監査・税務会社のKPMGなどが含まれる。

参加者は「パイオニア(Pioneers)」と「ビジョナリー(Visionaries)」の2つの作業グループに分かれ、それぞれ異なる焦点で活動するという。

「パイオニア」では、条件付き支払いなど、日常的な支払いのユースケースを技術的に検証する。たとえば、「商品の配送が完了したときに支払いが自動実行される」といった、事前に定義された条件が満たされた際に成立する自動的に実行される支払いが例として挙げられる。

各参加者は、ECBが提供するAPIなどの技術仕様とサポートを活用し、自社プラットフォームとのインターフェース統合を模索する。独自に検証したユースケースに関する報告書を作成し、ECBはこれをレビューしてプロジェクトに反映させる方針だ。

一方、「ビジョナリー」グループでは、デジタルユーロの新たなユースケースや、デジタル金融包摂といった社会的課題への対応策を探求する。たとえば、銀行口座やスマートデバイスを持たない人々が郵便局でデジタルユーロウォレットを開設できるようにするなど、包括的アクセス手段の検討も進められている。

ここで得られた提案内容はECBとの専用ワークショップで共有・議論され、これらのワークショップは5月まで継続される予定だ。

なお両作業グループの調査結果は、今年後半にECBが発行する報告書として公開される予定だ。

今年1月24日、ECBのピエロ・チポローネ(Piero Cipollone)専任理事は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が米ドルに連動する暗号資産「ステーブルコイン」の利用を推進していることに対抗し、ユーロ圏ではECB独自のデジタル通貨となる「デジタルユーロ」の導入が必要だと主張していた。

参考:ECB発表
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者