米SEC、テラ訴訟で暗号資産の証券性判断は「陪審ではなく裁判官が行うべき」と主張

テラフォームラボの民事訴訟で

昨年5月に暴落した暗号資産(仮想通貨)「テラ:Terra(LUNA:ルナ)」の発行元であるテラフォームラボ(Terraform Labs)に対する民事訴訟で、同社が提供・販売する暗号資産(仮想通貨)が有価証券か否かの判断は陪審ではなく裁判官が判断する事項だと、米証券取引委員会(SEC)が主張している。12月4日にSECの弁護士が提出した書類により明らかとなった。

ニューヨーク州南部地区連邦地裁へ提出された書類によると、SECはガイドラインに戻づく暗号資産の証券性に関する判断は、「陪審のための事実問題ではなく、裁判所が判断すべき法的問題だ」と主張している。

SECはまた、「被告の暗号資産販売は、被告の努力から得られる利益を期待したものであり、ハウィー判例法に規定される投資契約テストを満たすという重大な事実については明白かつ議論の余地はない」とし、「裁判所は、基礎的な要素に関する事実上の争いを解決するために陪審に質問を提出することができるが、ここではそのような争いはない。被告の暗号資産がどのように販売されたのか、それらのオファーや販売の条件、または被告がマーケティング資料やプロモーションで何を述べたのかに関する事実上の疑問点はない」と述べている。

なおハウィー判例法は、1946年に起きたSEC対W. J. Howey社事件の際に裁判所が「投資契約」の判断基準として定めたもの。後年「ハウィーテスト(Howey test)」と呼ばれるようになった。「ハウィーテスト」は、米国において特定の取引が、証券取引の定義の一つである「投資契約」に該当するかどうかを判定するテストである。

SECは2月、「LUNA」及びテラフォームラボ、その創業者ド・クウォン(DoKwon)氏を証券詐欺指揮の罪で提訴している。

クオン氏の弁護士はこの提訴について、同氏のどの行為が米国法に抵触するかについて公正な通知・明確な説明を受けていないと述べており、この提訴が棄却されるべきだと主張している。

テラの騒動

ド・クオン(DoKwon)氏が立ち上げたテラフォームラボは、暗号資産「LUNA」とアルゴリズム担保型米ドルステーブルコイン「テラUSD:TerraUSD(UST)」を発行していた。

テラUSDは、法定通貨の価格に連動する「ステーブルコイン」としてかつては世界の暗号資産上位10位内に入っていたが、昨年5月に1USD=1USTのペッグが崩壊し暴落。USTやLUNAなどの暗号資産が無価値となり、世界の投資家の間で総額420億ドルの損失が発生したとの試算もあり、投資家らから詐欺で訴えられている。その後インターポールの手配リストにも掲載された。

昨年6月に韓国捜査当局がテラプロジェクトの関係者に出国禁止令を出し、同年9月には、韓国の裁判所がド・クオン氏を含む6人に逮捕状を発布。

3月23日には、ド・クオン氏と同氏の側近とされるホン・チャンジュン(Hon Chang Joon)氏が、ドバイ行きのフライトのパスポート審査で偽造パスポートを使用したとして、文書偽造の犯罪容疑でモンテネグロの空港にて逮捕された。

モンテネグロの裁判所は6月、ド・クオン氏とホン・チャンジュン氏に懲役4カ月の実刑判決を下している。

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参考:提出書類
image:iStocks/ablokhin

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。 同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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