バイナンス、米SECとの取り決めでバイナンスUS関連情報へのアクセス禁止へ

話し合いで合意

バイナンスホールディングス(Binance Holdings Limited)と米証券取引委員会(SEC)は、資産へのアクセスに関する合意を締結した。6月17日付けで発布された同意命令にて明らかとなった。

これにより訴訟が終わるまで、バイナンスUSの従業員のみが顧客資金へのアクセス権を持つことになった。またバイナンスUSは関連資産凍結を免れる格好となったため、米国顧客による出金も可能となる。

同意命令書によれば、バイナンス関係者による、バイナンスUS関連のウォレットの秘密鍵、ハードウェアウォレット、バイナンスUSのアマゾンウェブサービス(AWS)ツールへのアクセスは一切不可となる。

またバイナンスはこの同意命令が下されてから20日以内に、SECの弁護士に対し、バイナンスユーザーに関する複数の情報を提供しなければならないとのこと。具体的には、バイナンスUS及び関連会社の顧客アカウントとウォレット残高や、バイナンス顧客の資産(フィアット・暗号資産)とバイナンスUSの事業体であるBAMの資産を保有する口座などだ。

同意命令に至るまでの経緯

米地裁のエイミー・バーマン・ジャクソン(Amy Berman Jackson)判事は6月13日、数十億ドルの顧客資金を保護する方法について、「両者(SECとバイナンスUS)に大きな隔たりはない」と判断。SECの訴訟が進む間、取引所を閉鎖せず妥協的な合意に取り組むよう促していた。

バイナンスおよびバイナンスUSとSECは6月16日、協議の上、バイナンスUSの従業員のみが顧客資金へのアクセス権を持つことと、事業に関する情報をSECへ提供することで合意。今回、その翌日となる17日に同意命令として発効されることになった。

バイナンスサイドの声明

バイナンスUSは6月17日のツイートにて「私たちは、裁判所が、事実と法律の両方から明らかに不当であったSECのTRO(暫定的差し止め命令)と当社プラットフォームの資産凍結の要求を認めなかったことをお知らせする」とし、通常業務が行えるようになったことを報告した。

また「顧客資産の不正使用に関して、SECが提示した証拠は一度もない」とし、「実際、SECの弁護士は今週初めに法廷で、裁判官の質問に対して、そのようなことが起こったことを示唆する証拠がないことを認めている」と指摘。

そしてバイナンスは、SECの要求は「バイナンスのビジネスを事実上停止させるもの」であり、「(SECが)事実の裏付けがない申し立てをすることで、あらゆる手段で暗号資産業界を潰そうとするSECの継続的な試みと一致するもの」であると非難している。

バイナンスCEOチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏は6月17日、「SECの緊急措置の要請は全く不当であった。この要請に関する意見の相違が相互に受け入れ可能な条件で解決されたことを嬉しく思う」とツイート。「顧客資金は、これまでも、そしてこれからも、バイナンスのすべての関連プラットフォームにおいて安全でセキュアだ」と伝え、同社提供サービスの安全性を強調している。

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参考:同意命令
デザイン:一本寿和

images:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。 同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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