コンセンシスが金融機関向け相互運用技術スタックを提供開始
イーサリアム(Ethereum)関連のインフラ開発企業コンセンシス(Consensys)が、金融機関が運用する異なる台帳間の取引を調整するソフトウェア製品「ソブリン・ネットワーク・インターオペラビリティ(Sovereign Network Interoperability)」の提供開始を11月2日に発表した。
同製品は、銀行などが利用する異なるブロックチェーンや台帳間で、資産を元のネットワークに保持したまま証券決済や通貨交換、担保の差し入れなどを可能にするものだ。コンセンシスによると、発表時点ではイーサリアム仮想マシン(EVM)ベースのブロックチェーン向けに提供されており、今後は金融機関向けブロックチェーンネットワーク「カントン(Canton)」への接続も予定されている。
同製品は、銀行、カストディアン、資産運用会社、金融市場インフラ事業者を対象としている。これらの金融機関は、プライバシーの確保や規制への対応、自社システムの管理などを目的に、独自の台帳を運用している。一方、取引相手が異なるネットワークを利用する場合、接続先が増えるほどシステムの統合や運用が複雑になるという課題がある。そこでコンセンシスは、複数の相互運用プロトコルを1つの製品にまとめ、こうした課題の解決を目指している。
具体的には、金融機関が取引内容、承認済みの取引相手、決済条件を指定すると、同製品が条件に合う取引経路を選択する。そのうえで、各台帳上での取引実行を調整し、取引が完了するまで状況を追跡する仕組みだ。
同製品の用途には、担保の移動、証券決済、ホールセール・異通貨間決済、ファンド・資産サービスの4つが挙げられている。まず、担保の移動では、資産管理と担保管理のプラットフォームを接続する。これにより、金融機関は清算機関や承認済みの取引相手に対し、担保として認められる資産を差し入れられるようになる。
また、証券決済では、一方の台帳上にあるトークン化証券の引き渡しと、別の台帳上での代金の支払いをDVP(Delivery-versus-Payment)方式で調整する。一方、ホールセール・異通貨間決済では、銀行が運用する通貨台帳を接続し、外国為替取引における2つの通貨の受け渡しをPVP(Payment-versus-Payment)方式で調整する。
さらに、ファンド・資産サービスでは、企業の財務担当者が余剰資金をトークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)に移し、必要に応じて引き出せるようにする。MMFは短期の金融商品を中心に運用する投資信託で、トークン化MMFはその持分をブロックチェーン上のトークンとして表したものだ。同製品では、トークン化預金とファンド持分の決済を1回の手続きで実行し、24時間いつでも資金を移動できるようにするとのことだ。
DVPは証券と代金、PVPは異なる通貨の受け渡しを連動させ、一方の受け渡しだけが完了するリスクを抑える決済方式だ。コンセンシスは、こうした異なる台帳間の決済について、関連する処理をすべて成立させるか、すべて不成立にするアトミック決済に対応すると説明している。実行方式は、接続するネットワークの構成や基盤技術に応じて、同期または非同期となるとのことだ。
ブリッジ不要の相互運用技術、CLIPで台帳間の取引を検証
ブリッジには、元のネットワーク上で資産をロックし、別のネットワーク上で代替資産を発行する方式などがある。一方、同製品ではこうした代替資産を発行せず、資産が記録された各台帳上で取引を調整する。
この仕組みの中核となるのが、コンセンシスの「クロス・レジャー・インターオペラビリティ・プロトコル(Cross Ledger Interoperability Protocol:CLIP)」だ。CLIPは、同社が約10年間にわたって培ってきた技術やゼロ知識証明の研究を基盤としている。ゼロ知識証明は、情報そのものを開示せずに、特定の条件が満たされていることを証明できる暗号技術だ。
コンセンシスによると、同製品は暗号技術を用いて異なる台帳間の状態や取引実行を検証することで、追加の信頼できる仲介者を必要としない仕組みを目指すという。ただし、接続先の台帳の合意形成や検証ソフトウェア、運用管理などについては、引き続き信頼を前提とする部分が残るとのことだ。
また、同製品は既存の台帳やシステムを置き換えずに導入でき、対応するネットワークにはソフトウェアの更新やアダプターなどを通じて接続する。コンセンシスは、互換性テスト、セキュリティ修正、ソフトウェア更新、監視、インシデント対応などの保守・サポートを提供する方針だ。
運用方法としては、金融機関自身や金融市場インフラ事業者による運用と、コンセンシスが管理するサービスが計画されている。さらに今後は、「イーサリアム・エコノミック・ゾーン(Ethereum Economic Zone:EEZ)」のオープン標準や、異なるブロックチェーン間の通信を可能にする「インター・ブロックチェーン・コミュニケーション(Inter-Blockchain Communication:IBC)」などの相互運用プロトコルにも対応する方針だ。
Introducing Sovereign Network Interoperability by Consensys. State-of-the-art interoperability that enables institutions to do business freely, settling securities, exchanging currencies and posting collateral across ledgers, without bridges or moving assets onto a shared ledger. https://t.co/V90gW2fhrx
— Consensys.eth (@Consensys) November 2, 2026
Today, @Consensys announced Sovereign Network Interoperability to enable private, bridgeless interoperability between Ethereum-compatible networks. Across EVM networks, institutions will be able to settle securities, exchange currencies, post collateral and access tokenized funds. Ethereum is the home of onchain finance.
— Ethereum Institutional (@ethereuminsti) November 2, 2026
参考:コンセンシス
画像:PIXTA