クラーケン親会社ペイワード、ハイパーリキッド「HIP-3*」で米CFTC規制下の初の市場運営者目指す

ペイワード傘下のビットノミアルが市場運営を担う計画

分散型取引基盤ハイパーリキッド(Hyperliquid)が、暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケン(Kraken)の親会社ペイワード(Payward)による、米国顧客向け無期限先物市場の展開計画について10月27日に発表した。

ペイワードは、ハイパーリキッドの許可制市場向け機能「HIP-3スター(HIP-3*)」を利用し、米商品先物取引委員会(CFTC)の規制下で無期限先物市場を展開する計画だ。規制当局の承認を条件に、傘下のビットノミアル(Bitnomial)がCFTC規制下で初となるHIP-3スターの市場運営者(デプロイヤー)を目指す。また、ニンジャトレーダー・クリアリング(NinjaTrader Clearing)が顧客口座を管理する予定だ。

ペイワードは今年9月16日、今回の市場展開計画をすでに公表していた。一方、ハイパーリキッドは今回の発表で、HIP-3スターの仕組みや開発状況について説明した。同機能の初期版は現在、試験環境のテストネットで公開されている。市場の提供開始時期は明らかにされていない。

無期限先物は、一般的な先物取引と異なり、満期日を設けずに取引できる金融派生商品(デリバティブ)だ。暗号資産市場では主要な取引商品の一つとなっている。

ハイパーリキッドは、独自のレイヤー1ブロックチェーン上で現物取引や無期限先物市場を提供する分散型取引基盤だ。同基盤には、外部の事業者や開発者が独自の無期限先物市場を開設できる仕組み「HIP-3」が用意されている。市場運営者は、取引対象や価格情報の参照先、レバレッジの上限などを設定できる。

HIP-3スターは、このHIP-3に許可制市場向けの機能を任意で追加するものだ。従来のHIP-3では、所定の条件を満たせば、外部の事業者がハイパーリキッド側の個別承認を受けずに市場を開設できる。一方、米国で規制下のデリバティブ市場を運営する事業者には、顧客管理や市場監視などの義務がある。HIP-3スターは、こうした事業者が市場を運営するための追加機能を提供する。

具体的には、市場運営者がブロックチェーン上の許可リストを使って取引参加者を制限できる。また、市場運営者は指定した別の管理者(サブデプロイヤー)に、許可リストの管理権限を委任できる。これにより、運営者が承認した利用者に取引を限定する市場を構築できる。

今回の市場運営には、指定契約市場(DCM)であるビットノミアル・エクスチェンジ(Bitnomial Exchange)と、デリバティブ清算機関(DCO)であるビットノミアル・クリアリングハウス(Bitnomial Clearinghouse)が関わる。両社はいずれもペイワード傘下で、CFTCの規制下にある。前者は市場の運営を担い、後者は成立した取引に伴う契約上の債務を処理する。今回の無期限先物契約も、ビットノミアル・エクスチェンジの規則に基づいて上場する計画だ。

一方、同じくペイワード傘下のニンジャトレーダー・クリアリングは、CFTCに登録された先物取次業者(FCM)だ。先物取次業者は、顧客の先物取引口座や証拠金を管理する役割を担う。

ペイワードが9月に公表した計画によると、顧客はニンジャトレーダーで口座開設手続きを行う必要がある。さらに、ニンジャトレーダーとビットノミアルの両方の許可リストへの登録が取引条件となる。一方、注文の照合と取引の記録には、ハイパーリキッドのブロックチェーン上の注文板を利用する。

ハイパーリキッドは、金融システムの幅広い領域を支える中立的なインフラ基盤を目指すと説明している。HIP-3スターでは市場運営者に追加の管理機能を提供する一方、個々の市場の管理権限と運営責任は、それぞれの市場運営者が保持する。

HIP-3スターの追加機能は、今後のネットワークアップグレードで導入される予定だ。既存のHIP-3市場に変更はない。また、ハイパーリキッドは、現在公開されている仕様がフィードバックに基づいて変更される可能性があると説明している。

クラーケンは今年6月15日、米国の対象顧客向けにCFTC規制下の無期限先物の提供開始を発表している。既存の商品は、ビットノミアルに上場する契約を、ニンジャトレーダー・クリアリング経由で取引プラットフォーム「クラーケンプロ(Kraken Pro)」から取引できるものだ。

これに対し、今回の計画ではハイパーリキッド上に新たな市場を設け、同基盤で注文の照合と取引の記録を行う。清算・決済には、既存の商品と同じビットノミアルの清算機関を利用する予定だ。

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。