アイルランド、新投資口座から暗号資産を除外へ

「非常に複雑でリスクの高い商品」

アイルランド財務省が、個人投資家向けの新たな「投資口座(Investment Account)」の制度設計を示すロードマップを8月31日に公表した。2027年中の提供開始を予定する同口座では、暗号資産(仮想通貨)とデリバティブが投資対象から除外される方針だ。

財務省が公表した「小口投資課税に関するロードマップ(Roadmap for the Taxation of Retail Investment)」によると、新たな投資口座には非課税となる閾値が設定され、課税期間中の平均口座価額(拠出金を含む)のうち、閾値を超える部分に対して低率のフラット税率が年次で適用される予定だ。

具体的な税率や非課税となる閾値、年間拠出上限については、2026年10月6日に予定されている「予算2027(Budget 2027)」で公表される見通し。

また現行の一部投資商品に適用されている「みなし処分ルール(deemed disposal rule)」は、新たな投資口座には適用されない。同ルールでは、対象となる投資商品について、実際に売却していなくても取得から8年ごとに処分したものとみなし、未実現利益に対する課税が行われる。

新制度では税金の計算や申告、納付を口座プロバイダーが行う。口座を開設できるのは18歳以上のアイルランド税務居住者で、個人公共サービス番号(PPSN)を保有する者だ。保有できる口座は初期段階では1人につき1口座となる。

最低拠出額は設定されない一方、年間拠出上限が設けられる。また、投資ポートフォリオは、可能な限り資産を売却せずにプロバイダー間で移管でき、移管による課税イベントは発生しないという。

投資対象には、上場株式や上場債券、規制市場で取引される金融商品、ETF(上場投資信託)を含む個人投資家向けファンド、保険ベース投資商品(IBIPs)などが含まれる。

一方、ロードマップでは、暗号資産やデリバティブなどの「非常に複雑でリスクの高い商品(highly complex and risky products)」は投資口座の対象にならないとしている。

この制度設計は、欧州委員会が2025年9月30日に公表した「貯蓄・投資口座(Savings and Investment Accounts:SIA)」に関する勧告も踏まえたものだ。

同勧告では、高リスクかつ複雑なデリバティブや暗号資産を原則としてSIAの対象から除外するよう加盟国に勧告している。ただし暗号資産については、SIAで保有可能な金融商品に該当するもの(同金融商品のトークン化版)は例外とされている。

今回の制度導入の背景には、アイルランド家計における預金への高い依存と、資本市場への直接参加率の低さがある。

アイルランド中央銀行が2025年12月に公表した調査によると、同国の家計金融資産に占める現金・預金の割合は約38%で、EU平均の約30%を上回る。

一方、アイルランド家計による投資ファンドの直接保有は金融資産の2.2%強にとどまり、EU域内でも最低水準の一つだという。また上場株式や債券への直接投資の割合は2.3%で、EU平均の7.5%を下回っている。

なおアイルランドでは、投資事業体税(Investment Undertaking Tax:IUT)や生命保険出口税(Life Assurance Exit Tax:LAET)について、個人に適用される税率が2026年1月1日付で41%から38%へ引き下げられている。

財務省は今後、既存の投資ファンドや保険商品に対する課税についても、さらなる税率引き下げや「みなし処分ルール」の見直し、税務・行政手続きの簡素化などを検討する方針だ。これらは予算2028以降に向けた検討課題として位置付けられている。

新たな投資口座の法的枠組みは、2026年財政(第2号)法案(Finance (No. 2) Bill 2026)に盛り込まれる予定だ。

参考:発表 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者