パキスタン、暗号資産事業者向けライセンス申請開始

既存事業者は9月5日までにNOC申請

パキスタン暗号資産規制当局(PVARA)が、暗号資産(仮想通貨)取引所などの暗号資産サービス提供者(VASP)を対象とする規則を告示し、ライセンス申請の受付を開始した。PVARAが8月21日に規則を告示し、申請ポータルを開設した。

今回告示されたのは「Pakistan Virtual Asset Services Regulations, 2026」と「Pakistan Virtual Asset Services Activity Specific Regulations, 2026」。これにより、パキスタンの暗号資産規制は法整備から具体的なライセンス制度の運用段階へ移行した。

PVARAは今回の制度開始について、SNS上で「8年間の禁止が本日終わる(8 years of prohibition end today)」と表現。PVARA議長を務めるビラル・ビン・サキブ(Bilal Bin Saqib)氏も、規則の告示と申請受付の開始を発表した。

ただし、パキスタン中央銀行(SBP)は従来の暗号資産に関する措置について、暗号資産そのものを違法化したものではないと説明している。SBPは2018年、銀行などの規制対象機関に暗号資産関連の取引を取り扱わないよう求めていたが、2025年5月の声明では、その措置は法規制の枠組みが存在しなかったことを背景としたものだったとしている。

PVARAによると、2026年3月5日の暗号資産法施行直前に暗号資産サービスを提供していた事業者は、9月5日までに要件を満たす完全なNOC申請を提出する必要がある。申請しない場合は事業を停止しなければならない。

これは「Virtual Assets Act, 2026(仮想資産法)」第70条に基づく移行措置となる。完全な申請を提出した事業者は、顧客資産保護やAML/CFT/CPFなどの義務とPVARAの暫定指示を順守することを条件に、審査中も既存サービスを継続できる。ただし、NOCは正式なVASPライセンスや営業認可そのものではない。

一方、その他の事業者については、規制要件を満たした段階でNOCまたは規制サンドボックスへの申請が可能だ。

PVARAは、移行措置の対象となる既存事業者を除き、原則としてすべてのVASPがパキスタンでサービスを提供する前に正式なライセンスを取得する必要があるとしている。申請制度は、規制サンドボックス、NOC、VASPライセンスを対象としている。

なおPVARAは申請ポータルを開設しているものの、8月25日時点で一部のオンライン申請機能は一時的に利用できない状態となっており、申請者にメールでの提出を案内している。

新たな規則では、VASPの業務に応じて11種類のライセンスカテゴリーが設定された。

対象となるのは、投資助言、ブローカー・ディーラー、カストディ(保管)、暗号資産取引所、貸付・借入、デリバティブ、資産運用・投資、送金・決済、資産参照型トークンの発行、法定通貨参照型トークンの発行、マイニング関連サービスだ。なお、自己資金による単純なマイニングはライセンス対象外で、顧客資産・顧客資金を扱う第三者向けマイニングサービスなどが対象となる。

カテゴリーごとに最低払込資本金も定められている。例えば取引所、貸付・借入、デリバティブ、マイニング関連サービスについては、それぞれ5億パキスタンルピーの最低払込資本金が求められる。

PVARAはライセンス取得までの経路として、「サンドボックスからライセンス」と「NOCからライセンス」の2つを示している。

サンドボックス経路は、革新的な暗号資産商品をPVARAの監督下でテストする事業者を対象とする。事業者はサンドボックスへの申請・参加、管理された環境でのテスト、終了要件の達成を経てVASPライセンスを申請する。

NOC経路では、事業計画や法人関連書類を提出してNOCを取得した後、金融モニタリングユニット(FMU)への登録などの規制要件を満たし、パキスタン国内に法人を設立。その後、正式なVASPライセンスを申請する流れとなる。

新たな規制では、VASPに対して顧客保護やガバナンス、市場行動、サイバーセキュリティ、事業継続、リスク管理、マネーロンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)などに関する要件も設けられた。

顧客資産については事業者自身の資産との分別管理を求めるほか、顧客の書面による同意など所定の条件を満たさずに顧客資産を貸し出したり、担保として利用したりすることを制限する。

PVARAによる今回の規則告示は、6月11日から7月2日まで実施されたパブリックコンサルテーションを経たものだ。

同コンサルテーションでは、VASPのライセンスや監督、ガバナンス、健全性要件、市場行動、顧客保護、サイバーセキュリティ、業務上のレジリエンス、AML/CFT、顧客資産の保護・分別管理などについて意見が募集されていた。

PVARAは、2025年7月に公布された「Virtual Assets Ordinance, 2025(仮想資産令)」に基づき設立された。

PVARAは2025年12月、暗号資産取引所バイナンス(Binance)とHTXにNOCを発行している。

NOC取得により両社はパキスタンで現地法人を設立し、正式なVASPライセンス取得に向けた手続きを進められるようになった。

その後、2026年3月に「Virtual Assets Act, 2026(仮想資産法)」が成立。PVARAは同国の暗号資産およびVASPを監督する法定規制当局として、恒久法上に位置付けられた。

またSBPは4月14日、PVARAの正式ライセンスを取得したVASPについて、銀行がライセンスの真正性確認やデューデリジェンスなどを行った上で、銀行口座を開設できるとする通達を発出した。NOC保有者についても、正式ライセンス取得に必要な手続きを進めるための限定目的口座を開設できるが、暗号資産関連の取引サービスを利用できるのは正式ライセンス取得後となる。

同通達では、必要に応じて、正式ライセンスを取得したVASPが顧客資金を管理するための「Client Money Account(CMA)」を開設することも規定された。CMAはパキスタンルピー建ての無利息口座で、VASP自身の資金とは分離して管理される。現金の入出金や、VASPへの融資の担保としての利用は認められない。

PVARAは今回のライセンス制度の運用開始により、国内外のVASPを正式な規制・監督の枠組みに取り込む方針だ。

参考:公示SBP 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者