コールドカードでシード生成の脆弱性、利用者に資金移行呼びかけ。ギャラクシーは被害を約1756BTCと推計

コールドカードで脆弱性、攻撃は現在も継続

ビットコイン(Bitcoin)の秘密鍵をインターネットから切り離して保管するハードウェアウォレット「コールドカード(COLDCARD)」を開発するコインカイト(Coinkite)が、シードフレーズ生成機能に関する脆弱性について、7月30日(UTC)にセキュリティ勧告を公開した。同社は、影響を受ける利用者に対し、新たなシードフレーズを生成したうえで資金を移動するよう呼びかけている。

今回のコールドカードの問題は、ウォレットのバックアップ情報が、想定より少ない乱数候補から生成されていたことに起因する。その結果、本来は第三者に知られるはずのない秘密鍵が推測される可能性が生じた。

そのバックアップ情報となるのが、「シードフレーズ(Seed Phrase)」だ。シードフレーズとは、一般に12語や24語などで構成されるバックアップフレーズで、このフレーズから秘密鍵を再生成できる。そのため、第三者に知られると資産を送金される可能性がある。

コインカイトは修正版ファームウェアを公開するとともに、対象利用者へ新しいシードフレーズへの移行を推奨した。

その後、同社は8月2日に公開した声明で、今回の脆弱性により利用者の資産被害が発生したことを認めた。また、「何年もかけて貯めた資金が失われた利用者がいる」と説明し、「脅威は現在も続いている」として早急な対応を呼びかけている。

同社は、脆弱なファームウェアを搭載したコールドカード製品の出荷を停止するとともに、対象在庫を破棄したことも明らかにした。なお、同社が提供する他のハードウェア製品であるサッツカード(SATSCARD)、オープンダイム(OPENDIME)、タップサイナー(TAPSIGNER)は、今回の問題の影響を受けないとのこと。

今回の問題の影響を受けるのは、脆弱なファームウェアで生成したシードフレーズだ。対象となるファームウェアは機種ごとに異なるため、利用者は自身の端末が対象か公式情報で確認する必要がある。

同社は、対象となる利用者に対し、修正版ファームウェアへ更新するだけでなく、新しいシードフレーズを生成したうえで、旧シードで管理していた資金を新しいウォレットへ移動するよう求めている。

なお、シードフレーズ生成時に、公正なサイコロを独立かつ非公開で50回以上振り、その結果を追加の乱数として入力していた場合は、今回の脆弱性だけを理由に危険とは判断していないという。

一方、強力かつ固有のBIP39パスフレーズは追加の防壁となるが、影響を受けたシードフレーズ自体を修復するものではない。そのため、同社は新しいシードフレーズへの移行を推奨した。

また同社は、影響を受けた端末は処分しないよう利用者へ呼びかけている。今後、資金回収や捜査に必要となる可能性があるためで、法務チームは複数の法域の法執行機関と連携し、責任者の特定を支援する方針も示した。

ギャラクシーがオンチェーン分析、第4波の可能性を指摘

暗号資産(仮想通貨)金融サービス企業ギャラクシー(Galaxy)の調査部門ギャラクシー・リサーチ(Galaxy Research)は、今回の事案について、ブロックチェーン上に公開されているビットコインの取引履歴を分析するオンチェーン分析を継続して公開している。

ギャラクシーによると、今回の攻撃は少なくとも4回に分けて実施された可能性があるという。同社は、公開されている取引履歴から共通する送金パターンを追跡し、第1波から第4波までの攻撃を確認したとのこと。第4波については、8月2日時点でも進行中の可能性が高いとして、影響を受けたとみられるアドレスを公表し、利用者に早急な資金移動を呼びかけた。

まず第1波として、7月30日に1,195アドレスから1,082.65BTCが約41分間で移動したことを確認した。同社は、各取引で同じ手数料設定が使われ、おつり用の出力が設けられていなかったことなどから、事前に取得した秘密鍵を使い、自動化されたツールで一斉に資金を移動した可能性があると分析した。

続いて第2波は7月31日に発生したとのこと。第2波では1,478アドレスから76.16BTCが約3時間42分で移動した。第1波と第2波の被害アドレスに重複はなく、同社は、攻撃者が秘密鍵の候補を順番に探索し、特定できたウォレットから資金を移動していた可能性があると分析した。

その後、8月1日には第3波を新たに確認し、第1波から第3波までの被害規模を4,585アドレス、合計1,367.05BTCへ更新した。第3波では、第1波や第2波で確認された資金集約用アドレスを経由せず、被害者ごとに異なる送金先を使用するなど、これまでとは異なる取引構造が採用されていたという。

ギャラクシーは、第1波と第2波については同じ攻撃者による可能性があると分析する一方、第3波については別の攻撃者が同じ脆弱性を悪用した可能性もあるとの見方を示した。

さらに同社幹部のアレックス・ソーン(Alex Thorn)氏は、自身のXアカウントで8月3日、第4波とみられる資金移動をビットコインの未承認取引から検知したと報告した。初期分析では、462の被害アドレスから約388.93BTCが移動した可能性があるとのこと。第1波から第4波までを含めた流出規模について、同社は約1,756BTCと推計している。

なお、同社の分析は公開されている取引履歴に基づく推計であり、攻撃者が異なる取引パターンを使用した場合は分析対象から漏れる可能性もあるため、最終的な被害規模は確定していない。

コインカイトは、今回の問題の原因や既存のコードレビューで見逃された理由をまとめた技術解説を公開している。加えて、正式な技術ポストモーテムも今後公表する方針だ。

参考:X発表1X発表2X発表3ブログ1ブログ2ブログ3コールドカード(X記事)ギャラクシーリサーチ1ギャラクシーリサーチ2ギャラクシーリサーチ3
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。