アバランチ、「Helicon」をFujiテストネットで有効化。Cチェーン実行方式やステーキング仕様を変更

Cチェーンの実行方式とステーキング経済を見直し

レイヤー1ブロックチェーン「アバランチ(Avalanche)」を支援するアバランチ財団(Avalanche Foundation)が、ネットワークアップグレード「ヘリコン(Helicon)」をFujiテストネットで有効化したと7月29日に発表した。

今回のアップグレードでは、ネットワークの仕様変更を提案する仕組み「アバランチ・コミュニティ・プロポーザル(Avalanche Community Proposal:ACP)」による6件の提案が同テストネットで有効化された。ACP提案のうち2件はCチェーン、4件はステーキングに関するものだ。

アバランチは異なるデータ構造を採用するCチェーン(Contract Chain)、Pチェーン(Platform Chain)、Xチェーン(Exchange Chain)の3つのチェーンで構成されるブロックチェーンだ。これら3つのチェーンは総合して「プライマリーネットワーク」と呼ばれている。

このうちCチェーンは、スマートコントラクトや分散型アプリ(dApps)が動作するチェーンとして利用されている。今回のアップグレードでは、このCチェーンの実行方式を変更するほか、プライマリーネットワークを検証・運営するバリデーターのステーキング期間や報酬の仕組みも変更される。

Cチェーンの提案について

Cチェーンに関する提案は、継続実行を導入する「ACP-194」と、最低ガス価格を動的に調整する仕組みを導入する「ACP-283」だ。Cチェーン関連では、トランザクション処理方式と最低ガス価格の仕組みを見直す。

ACP-194では、Cチェーンのトランザクション処理を効率化するため、「継続実行(Continuous Execution)」を導入する。現在のCチェーンでは、ブロック内のトランザクションを実行して妥当性を検証した後、そのブロックをコンセンサスで承認している。一方、継続実行では、トランザクションが必要な最低限の確認を行なったうえで、ブロックをコンセンサスで承認し、ブロック内のトランザクションを順次実行する。これにより、承認済みブロックの実行と後続ブロックのコンセンサスを並行して進められるとのこと。つまり、一方の処理が終わるまで他方を待つ必要がなくなるため、ネットワーク全体の処理効率が向上する仕組みだ。

ACP-283では、Cチェーンの最低ガス価格を動的に調整する仕組みを導入する。現在は固定された最低ガス価格を採用しているが、新たな仕組みでは、各バリデーターが希望する最低ガス価格を設定し、ブロックを生成するたびに現在の価格をその希望値へ段階的に近づける。ブロックの生成頻度はステーク量に比例するため、最低ガス価格は時間の経過とともに、バリデーター全体の希望を反映した水準へ収束する仕組みだ。ACP-283では、固定された最低ガス価格ではスパムトランザクションを抑止しにくいことを導入理由に挙げている。

ステーキングの提案について

続いて、ステーキングに関する提案は、自動更新ステーキングを導入する「ACP-236」、バリデーターの稼働率要件を引き上げる「ACP-267」、最低ステーキング期間を短縮する「ACP-273」、最低消費率を引き下げる「ACP-285」だ。ステーキング関連では、自動更新機能や報酬制度などの仕様を見直す。

ACP-236では、プライマリーネットワークのバリデーターを対象に、自動更新ステーキングを導入する。現在はステーキング期間の終了後に新たなトランザクションへ署名し、再ステーキングする必要がある。新たな仕組みでは、更新周期と報酬の自動複利比率を設定する。報酬の受け取り要件を満たした場合、指定した割合の報酬が自動的に再ステーキングされる。なお、デリゲーション自体は自動更新の対象外となる。

ACP-267では、ネットワークの安定性向上に向け、バリデーターがステーキング報酬を受け取るための稼働率要件を引き上げる。現在のバリデーターがステーキング報酬を受け取るための稼働率要件は80%だが、アップグレード後は90%となる。稼働率が90%を下回った場合、当該期間の報酬はバリデーターには支払われない。なお、90%の要件は、2026年4月1日以降に開始し、ヘリコンの有効化時点で終了していないステーキング期間に適用される。それ以前に開始した期間には、従来の80%要件が適用される。

ACP-273では、より柔軟にステーキングできるよう、プライマリーネットワークのバリデーターに適用する最低ステーキング期間を336時間(2週間)から48時間へ短縮する。ACP-273では、バリデーターの参加障壁を下げることや、資本効率の向上につながるとしている。

ACP-285では、バリデーターやデリゲーターが長期間ステーキングするインセンティブを高めるため、報酬の仕組みを見直す。ステーキング報酬の算出に用いる最低消費率を10%から7.5%へ引き下げることで、短期ステーキングの報酬率を低下させ、長期ステーキングとの報酬率の差を広げる。変更はヘリコンの有効化後、90日間かけて段階的に実施される予定だ。

ACP-285の試算では、バリデーターとデリゲーターの行動が変化しない場合でも、年間インフレ率は現在の仕組みと比べて約0.5ポイント低下するとのこと。また、ステーキング行動の変化を織り込んだ場合、年間インフレ率は0.5~1ポイント低下する可能性が示されている。

なお、ヘリコンをメインネットで有効化する時期は明らかになっていない。今回公開されたノード実装「アバランチゴー(AvalancheGo)v1.15.0-fuji」はFujiテストネット向けのリリースであり、メインネット向けアップグレードに必要な対応版は今後公開される予定だ。

参考:アバランチ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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