42DAOの「バランスプロトコル」で約91万ドル規模の損失か、ステーブルコイン「BLC」が99%超下落

異常なBTCB価格で複数の担保ポジションが清算

分散型自律組織(DAO)の「42DAO」がガバナンスを担う分散型金融(DeFi)プロトコル「バランスプロトコル(Balance Protocol)」が、約91万5,000ドル(約1億4,951万円)の損失を伴う攻撃を受けた可能性がある。ブロックチェーンセキュリティ企業のペックシールド(PeckShield)が7月22日に報告した。

攻撃の発生後、バランスプロトコルのステーブルコイン「バランスコイン(Balance Coin:BLC)」は米ドルとの価格連動(ペッグ)を失った。暗号資産データサイトのコインマーケットキャップ(CoinMarketCap)によると、BLCは7月22日、攻撃前の約0.9955ドルから一時0.001209ドルまで下落し、99%超急落した。7月24日の本稿執筆時点でも0.002ドル台で推移しており、ドルペッグを大きく下回っている。

バランスプロトコルは、BNBチェーン上で利用されるビットコイン(BTC)連動トークン「BTCB」などの暗号資産を担保として預けることで、米ドルとの価格連動を目指すBLCを発行できる暗号資産担保型ステーブルコインプロトコルだ。

利用者の担保価値が一定水準を下回ると、担保ポジションは清算対象となる。清算者は債務を返済する代わりに担保資産を取得できる仕組みとなっている。

担保価値の算出には、暗号資産の市場価格などブロックチェーン外部の情報をスマートコントラクトへ提供する「オラクル」が利用されている。スマートコントラクトは外部の価格情報を直接取得できないため、オラクルから取得した価格を基に担保価値を評価し、清算の要否を判断する。

ブロックチェーンセキュリティ企業のスローミスト(SlowMist)は、攻撃者がオラクルから提供された市場価格とかけ離れたBTCB価格を利用し、本来は清算対象ではなかった複数のBTCB担保ポジションを清算したと分析している。同社は損失額を約91万2,000ドル(約1億4,902万円)と推定した。

スローミストによると、BTCB価格を担保評価へ反映する「スポッター(Spotter)」には、価格乖離の確認や最大下落幅の制限、最低価格の保護といった仕組みが実装されていなかった。また、清算を担う「ドッグ(Dog)」にも、価格更新後に一定時間清算を遅らせる機能や、オラクル価格を再検証する仕組みがなかったとのことだ。

そのため、コントラクトが市場価格とかけ離れたBTCB価格を十分に検証せず受け入れ、本来は健全だった複数の担保ポジションが清算されたという。スローミストは、この一連の清算が単一のトランザクション内で実行されたと説明している。

一方、オンチェーン分析を行うリサーチャーのディファイ・ナード(DeFi Nerd)はXへの投稿で、一連の事象全体では、約2時間を隔てた2つのトランザクションで、システムに反映されたBTCB価格のスケールが異なっていた可能性を指摘した。同氏は、最初の取引で異常に高いBTCB価格が反映され、その後の取引で最初の値の10の21乗分の1に当たる低いBTCB価格が反映され、複数のBTCB担保ポジションが清算可能になったた可能性があると分析している。

ディファイ・ナードは、オンチェーンデータだけでは異常な価格が発生した原因を特定できないとしている。オラクル署名者の侵害や運営上の設定ミス、価格データの小数点処理の実装不備など複数の可能性が考えられるものの、現時点で原因は確認されていないとのことだ。

なお、42DAOからは本稿執筆時点で、異常価格の発生原因や被害額、復旧方針に関する詳細な公式説明は確認できていない。

参考:コインマーケットキャップエクスプローラー
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。