カルシ、金や為替・エネルギーの無期限先物提供を計画。CFTC承認目指す=幹部

カルシが金属等の無期限先物の提供を計画

米予測市場プラットフォーム「カルシ(Kalshi)」は、金属、外国為替(FX)、エネルギー市場などを対象とした満期のないデリバティブ(無期限先物)へ事業を拡大することを目指している。同社幹部がロイターに明らかにした。

スポーツや選挙結果、天候などの予測市場を提供するカルシは、従来のデリバティブ契約とは異なり満期日を持たない「パーペチュアル先物(無期限先物)」を提供することで、既存の取引所運営会社との競争を狙う。

同社は5月、米商品先物取引委員会(CFTC)が登録済みの米取引所によるパーペチュアル先物の提供を認めたことを受け、米国初となる暗号資産(仮想通貨)のパーペチュアル先物を開始した。現在は、他の資産クラスについても同商品の提供が可能となるよう、CFTCの承認取得を目指しているという。

カルシの最高リスク責任者(CRO)のウデシュ・ジャ(Udesh Jha)氏は、「暗号資産以外では、市場の需要に基づいて対象資産を検討しており、例えば金などを考えている」と述べた。 同氏によると、外国為替やエネルギーなどを含む他の資産クラスへのパーペチュアル先物拡大について、規制当局との協議は最終段階に入っているという。

「金は個人投資家にも分かりやすい資産だ。当社の参加者は個人投資家が中心だが、機関投資家も利用している」と同氏は説明した。

パーペチュアル先物(Perpetual Futures、通称「Perps」)は、満期日が設定されていない先物契約である。そのため投資家は、通常の先物のようにポジションを手仕舞うことや、次の限月の契約へロールオーバーすることなく、期限を定めずにポジションを保有できる。また、高いレバレッジを利用できる点も特徴で、最大50倍程度のレバレッジをかけて取引できる場合がある。

一方で、こうした商品については、複雑な仕組みを十分理解していない個人投資家が、小幅な価格変動でも大きな損失を被る可能性があるとして、リスクを指摘する声もある。米デリバティブ取引所運営会社CMEグループの退任予定CEOであるテリー・ダフィー(Terry Duffy)氏は6月、CFTCがパーペチュアル先物を認めたことについて、「大惨事を招きかねない商品だ」と批判していた。

その後、CMEは、カルシと米暗号資産取引所大手コインベース(Coinbase)によるパーペチュアル先物の上場を認めた最近の判断を不服として、CFTCおよび委員長のマイケル・セリグ(Michael Selig)氏を提訴した。この訴訟については、米国最大のデリバティブ取引所としての地位を守る狙いがあるとの見方が広がっている。

ジャ氏はさらに、株価指数や個別株を対象としたパーペチュアル先物についても展開機会を模索していることを明らかにした。カルシでパーペチュアル先物が提供開始されて以降、同商品の取引高は161億ドル(約2兆6,200億円)に達している。

「多くの資産クラスについては参入方法を検討する必要があるが、地政学的要因や季節要因を考えると、外国為替、金属、エネルギーが最も投資家の需要が高い分野だろう」と同氏は述べ、「当社の取引高を見ると、その多くは主に機関投資家によるものだ」と語った。

伝統的取引所への競争圧力

今回明らかになったカルシの計画はこれまで報じられておらず、パーペチュアル先物が既存のデリバティブ取引所の中核事業を揺るがす可能性がある中で進められている。

CFTCがパーペチュアル先物を承認した直後には、競争激化への懸念から、CME、CBOE、ナスダック(Nasdaq)、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるインターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange:ICE)など、米主要取引所運営会社の株価が大きく下落した。

カルシ共同創業者のタレク・マンスール(Tarek Mansour)氏は6月、ブルームバーグ(Bloomberg)の取材に対し、パーペチュアル先物を他の資産クラスへ拡大する方針を明らかにしていたが、具体的な対象資産には言及していなかった。

CFTCも6月、原油など現物受け渡しが行われる、または保管可能なエネルギー商品を対象とするパーペチュアル契約の拡大について、パブリックコメントを募集している。

事情に詳しい関係者によると、他資産クラスでのパーペチュアル先物が承認された場合、取引は24時間ではなく、通常の市場取引時間内に実施される見通しだという。なお、この関係者は検討段階の案件であることを理由に匿名を条件として話した。

パーペチュアル先物は近年まで主に海外の取引所で取引されており、明確に禁止も承認もされていない規制上のグレーゾーンに位置付けられていた。カルシの試算では、海外プラットフォームにおけるパーペチュアル先物の取引高は2025年に90兆ドル(約1京4,625兆円)へ拡大し、2023年の3倍超に達したという。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Exclusive-Kalshi in talks with regulators to expand never-expiring derivatives to new areas
(Reporting by Anirban Sen in New York; editing by Megan Davies and David Gregorio)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。