米商務省、量子関連9社へ約2Bドル支援へ。国家戦略技術として投資加速

米商務省、量子コンピュータ9社へ約3,200億円支援

米商務省が、量子コンピュータ関連企業および量子向け製造基盤企業の計9社に対し、総額20.13億ドル(約3,199億円)の支援に向けた意向書(LOI)を締結した。米国立標準技術研究所(NIST)が5月21日に発表した。支援は「CHIPSおよび科学法(CHIPS and Science Act)」に基づき実施される予定だ。

米商務省によると、今回の支援は、実用規模かつ耐障害性を備えた量子コンピュータの開発競争を加速させることが目的だという。米商務省は、量子コンピューティングについて「国家防衛」「先端材料」「バイオ医薬品」「金融モデリング」「エネルギーシステム」などに重要な影響を持つ次世代技術と位置付けている。

なお、量子コンピュータは、古典コンピュータとは異なる原理で計算を行う次世代計算技術だ。量子力学の性質を利用することで、従来型コンピュータでは膨大な時間を要するとされる特定の計算を高速に処理できる可能性があると期待されている。

近年、米国や中国、欧州などでは、AI・半導体に続く次世代計算基盤として量子技術への投資競争が進んでいる。また、量子コンピュータは現在の暗号技術に影響を与える可能性も指摘されており、各国政府は国家安全保障上の重要技術として位置付けている。

今回の発表では、量子コンピュータ企業だけでなく、量子向け製造基盤である「量子ファウンドリー」への支援も含まれている。

今回の支援対象には、アイビーエム(IBM)およびグローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries)の2社による量子ファウンドリー事業が含まれる。IBMには、新会社アンデロン(Anderon)による量子向け超伝導ウェハー製造を目的として10億ドル(約1,589億円)、グローバルファウンドリーズには複数方式に対応した量子ファウンドリー構築に向け3.75億ドル(約596億円)が計画されている。

また、米商務省はアトムコンピューティング(Atom Computing)、ディラック(Diraq)、Dウェーブ(D-Wave)、インフレクション(Infleqtion)、サイクアンタム(PsiQuantum)、クオンティニュアム(Quantinuum)、リゲッティ(Rigetti)の7社にも支援を行う予定だ。米商務省は、中性原子、シリコンスピン、超伝導、フォトニック、トラップドイオンなど複数方式の量子技術開発を支援する構成だと説明している。

米商務長官ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)氏は、「今回の量子コンピューティング投資により、米国は新たなイノベーション時代を主導する」とコメントしている。

なお、日本でも量子技術を国家戦略分野として位置付ける動きが進んでいる。内閣官房が公表した「戦略17分野における『主要な製品・技術等』」では、「量子コンピューティング」が「将来の技術覇権を左右する計算基盤」と説明されている。

同資料では、量子分野について「純国産量子コンピュータ開発の実績やチョークポイントとなる部素材技術、基礎研究等の強みを生かし、自律的に発展可能な国内技術基盤を確立する」としている。

参考:米商務省内閣資料
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。