ステーブルコイン利回り規制が焦点に
米暗号資産取引所大手のコインベース(Coinbase)が、暗号資産(仮想通貨)市場構造を巡る超党派法案「クラリティ法(CLARITY Act)」の最新文書に対し、支持できないとの姿勢を示した。複数の米メディアが3月25日に報じている。
米政治メディア「パンチボール・ニュース(Punchbowl News)」によると、コインベースは今週初め、上院側に対し最新の法案テキストを支持できないと伝えた。報道は関係者の話として、同社がステーブルコインの利回り(報酬)に関する条項に「重大な懸念」を示していると伝えている。
問題となっているのは、トム・ティリス(Thom Tillis)氏とアンジェラ・オールソブルックス(Angela Alsobrooks)氏が主導する超党派の妥協案だ。複数報道によれば、この案はステーブルコインの保有残高に対して受動的に付与される利回りを制限する方向で調整が進んでいる。一方で、決済や利用行動に紐づくインセンティブ型の報酬については、一定の余地を残す案が検討されているとされる。
法案をめぐっては、銀行業界と暗号資産業界の対立が続いている。銀行側は、ステーブルコイン残高に利回りが付与されれば預金が流出し、融資の原資が損なわれる可能性があると懸念している。一方、暗号資産業界は、利回り提供が利用者の選択肢を広げ、金融サービスの競争を促進すると主張している。
こうした対立を受け、ホワイトハウスは銀行および暗号資産企業との間で非公開会合を複数回開催し、妥協形成を模索してきたと報じられている。ただし、現時点で最終的な合意には至っていない。
コインベースにとって、ステーブルコイン利回りをめぐる規制の行方は重要な経営要因となる。同社の開示資料によると、2025年のステーブルコイン関連収益は約13億ドル(約2,079億円)規模に達しており、主にサークル(Circle)との提携によるUSDC関連収益が寄与しているとみられる。
同社は2026年1月にも、上院で検討されていた関連法案について支持を見送る姿勢を示しており、ブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)CEOは当時、「銀行が暗号資産プラットフォームとの競争を封じるためにロビー活動を行っている」と批判していた。
市場面では、コインベース株は直近取引で大きな方向感を欠く展開となっている。3月25日の終値は181.10ドル(約2万8,966円)と前日比ほぼ横ばいだった。一方で、暗号資産関連株は法案動向への警戒感から変動が大きく、ステーブルコイン発行企業の株価が急落する場面もみられた。
また、シンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員は3月25日のXにて「明確性法を通過させるためには超党派の妥協が必要だ。ステーブルコインの報酬を守り、地方銀行からの預金流出を防ぐため、昼夜を問わず取り組んでいる。米国の金融の未来が今まさに問われている。2030年まで次のチャンスを待つことはできない」と投稿。さらに、大統領デジタル資産諮問委員会のパトリック・ウィット(Patrick Witt)事務局長は、SNS上で法案をめぐる過度な懸念を否定し、協議の進展に自信を示している。
クラリティ法は、証券規制当局である証券取引委員会(SEC)と商品先物規制当局である商品先物取引委員会(CFTC)の権限分担などを含む暗号資産市場構造の包括的見直しを目的とする法案であり、ステーブルコイン単独の規制法ではない点に留意が必要だ。もっとも、関連条項として盛り込まれているステーブルコインの取り扱いが、業界全体のビジネスモデルに影響を与える可能性がある。 ステーブルコイン規制法「ジーニアス法(GENIUS Act)」はすでに2025年7月18日にトランプ大統領が署名・成立しており 、クラリティ法はそれに続く市場構造法案という位置づけだ。
ステーブルコイン利回りをめぐる協議は現在も継続しており、最終的な制度設計が暗号資産業界および金融業界双方に与える影響が注視される。
Bipartisan compromise is necessary for the Clarity Act to pass. We’re working around the clock to ensure stablecoin rewards are protected and to prevent deposit flight from community banks.
— Senator Cynthia Lummis (@SenLummis) March 25, 2026
America’s financial future is at stake now— we can’t wait until 2030 for another chance.
参考:報道
画像:PIXTA