ビットコイン上のトークン規格「BRC20」、EVM型のスマートコントラクト実装へ

BRC20がEVM統合でスマートコントラクト機能を実装

ビットコイン(Bitcoin)上のトークン規格「BRC20」を対象とするアップグレード「BRC2.0」が9月1日に実施された。

同アップグレードでは、BRC20のコア機能にEVM(イーサリアム仮想マシン)を統合することで、同規格はイーサリアム(Ethereum)型のスマートコントラクト実行に対応した。

BRC2.0は、オーディナルズ(Ordinals)開発のベストインスロット(Best in Slot)と、BRC20の匿名創設者ドモ(Domo)氏によって、ビットコインブロック912,690の時点で実行された。

BRC20は、オーディナルズプロトコルを通じてビットコインブロックチェーン上で代替可能トークンを発行するためのトークン規格。またオーディナルズプロトコルは、ビットコインの最小単位であるサトシ(0.00000001BTC)に個別にデータを刻み込む(インスクリプションする)ことでトークンの発行などのビットコインに本来ない機能を実現可能にする仕組みだ。なおビットコインのUTXOモデルの上に代替可能トークン(FT)を発行・送受信可能にする新しいプロトコルであるルーンズ(Runes)も存在する。

ベストインスロット最高経営責任者(CEO)のエリル・ビナリ・エゼレル(Eril Binari Ezerel)氏は「オーディナルズ、ルーンズ(Runes)、BRC20などのビットコインメタプロトコルは、単純な電卓のように機能するインデクサー上で動作している」と説明した。同氏は「この『電卓スタイル』のインデクサーをEVMでアップグレードし、BRC20はチューリング完全な環境をサポートした。」と語っている。

EVMは、スマートコントラクトの実行を可能にするイーサリアムのオペレーティングシステムだ。トークンをプログラム可能にし、中央集権的なガバナンスを不要にする機能を提供する。今回の統合により、BRC20トークンにプログラマビリティと相互運用性が付与された。

2023年初頭に登場したオーディナルズプロトコルは、イーサリアムや他のネットワークに固有のスマートコントラクト機能をビットコイン上で実現するなど、ビットコインでのより高い実用性開発の発端となった。今回のアップグレードは、ビットコインエコシステムにおけるDeFi(分散型金融)やその他の複雑なアプリケーション開発の可能性を大幅に拡張するものと期待されている。

しかし、今回のアップグレードに対しては批判的な見方も存在する。一部の専門家は「BRC2.0は本質的にインデクサー駆動のままで、EVMエミュレーションによる『プラグイン的スマートコントラクト』に過ぎない」と指摘している。

批判者らは、BRC20が当初から「インデクサーによって維持されるJSONファイルゲーム」であり、オンチェーンで管理されるステートマシンを持たないことを問題視している。EVMの追加により確かにプログラマビリティは向上したが、実行環境は依然としてインデクサーによってオフラインでシミュレートされており、ビットコインチェーンがネイティブにサポートするコントラクトロジックではないという。

また「RGB」や「タップルートアセット(Taproot Assets)」などの真にビットコインネイティブな技術ソリューションと比較して、BRC2.0は「ビットコイン指向」の設計思想に欠けるとの指摘もある。RGBはクライアントサイド検証を活用し、タップルートアセットはビットコインのUTXO内に直接アセットを組み込むなど、よりビットコインの本質に忠実なアプローチを採用している。

一部では「ビットコインエコシステムに必要なのはネイティブ性であり、この方向性から逸脱したプロトコルは短命に終わる」との懸念も示されており、将来的にはルーンズなどのよりビットコインらしいソリューションが支持されるとの見方もある。

 

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属 格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。 SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。