フロリダ州、「最安取引」うたう虚偽広告の疑いでロビンフッド・クリプトを調査

投資家保護を目的に召喚状発付

虚偽のマーケティングを行っていた可能性があるとして、米ロビンフッド・クリプト(Robinhood Crypto)がフロリダ州の調査を受けている。フロリダ州司法長官ジェームズ・ウースマイヤー(James Uthmeier)氏は捜査を開始し、同社に対して内部文書の提出を求める召喚状を発付したと、7月10日に発表した。

発表によれば、ロビンフッド・クリプトには、自社の暗号資産プラットフォームを「最も低コストで暗号資産を購入できる方法」と謳い、フロリダ州の「不正な取引行為防止法」に違反した疑いがかけられている。

ロビンフッド・クリプトは、暗号資産(仮想通貨)と株式の取引プラットフォーム「ロビンフッド」提供の米ロビンフッド・マーケッツ(Robinhood Markets)の100%子会社で、暗号資産取引サービス専用の法人だ。

「ロビンフッド」では、手数料の代わりに顧客の注文を第三者に仲介することで収益を得ている。仲介先は、顧客との取引機会の対価として「ロビンフッド」に報酬を支払っており、これは「注文フロー対価支払い(PFOF)」と呼ばれる。

「ロビンフッド」は、「平均的な暗号資産取引コストが最も低い」と主張し、「最も多くの暗号資産を購入できる」と宣伝することで、顧客獲得を図っていたとされる。

これに対しフロリダ州は、「ロビンフッド」のPFOF構造と競合他社の「すべて込みの取引コスト」を比較した結果、実際には「ロビンフッド」の方が高額になる場合があるとする証拠があると主張。

この構造により、「ロビンフッド」に注文フロー対価を支払う第三者は、利益を得るために「ロビンフッド」の顧客に不利な価格を提示することになりうるとウースマイヤー長官は指摘している。

フロリダ州の投資家が「ロビンフッド」の事業慣行によって実際に不利益を被っているかどうかを判断するため、ウースマイヤー長官は、同社に対して詳細な内部文書の提出を求めている。

提出を求められている文書には、「ロビンフッド」の組織図やマーケティング戦略、手数料体系、取引リベートおよびPFOF(注文フロー対価支払い)構造に関する説明が含まれる。また、こうした構造に責任を持つ現・元従業員の氏名と役職、暗号資産取引を宣伝する広告資料(ソーシャルメディアや検索エンジン上の広告を含む)、また、「平均で最も低コスト」「最も多くの暗号資産を提供」といった自社の主張に関する資料も提出対象となっている。

さらに、ユーザーに開示された手数料やスプレッド、リベート、PFOFに関する情報、上記内容に関して従業員に提供されたトレーニング資料、マーケットメーカーとの間でのリベートやPFOFの価格決定に関する情報、リベート契約を締結した取引相手の一覧、競合他社の暗号資産取引コストに関する比較資料も求められている。

加えて、PFOF、取引リベート、最良執行に関する社内ポリシーを示す文書、ユーザーの暗号資産取引データの販売または第三者へのアクセス提供に関する文書、フロリダ州のユーザーとの間で交わされた取引コストに関する通信記録も調査対象とされている。

そして、2024年にフロリダ州のユーザーが「ロビンフッド」のプラットフォームを利用した人数および、その取引履歴の提出も要求されている。

ロビンフッド・クリプトは、7月31日までに召喚状に応じなければならない。

参考:発表
画像:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者