Sproutに残された約1,600万ドル相当のZECが移動不能に
プライバシー保護機能を特徴とするブロックチェーン「ジーキャッシュ(Zcash)」のネットワークアップグレード「NU7」が、メインネットのブロック高3,543,405で日本時間11月6日11:34頃に有効化された。ジーキャッシュのネットワーク統計を提供するゼックスタッツ(ZecStats)のNU7追跡ページで確認できる。これにより、初期のプライバシー保護方式「スプラウト(Sprout)」に残された約1.2万ZECが移動できなくなった。また、ブロック生成の目標間隔が75秒から25秒に短縮された。
ゼックスタッツによると、NU7の有効化時点でスプラウトには約12,224ZECが残されていた。ZECはジーキャッシュのネットワークで使用されるネイティブトークンだ。この残高は、ゼックスタッツの日本時間11月6日11時59分の表示価格(1 ZEC=1,315.04ドル)で計算すると、約1,608万ドル(約25億3,800万円)に相当する。また、スプラウトの残高は約1週間前の22,263ZECから減少しており、有効化を前に約1万ZECが移動したことになる。
ジーキャッシュでは、ゼロ知識証明を利用し、送金元や送金先、金額などの情報を公開せずに取引できる「シールド取引」を利用できる。こうしたプライバシー保護機能を利用するZECは、「シールドプール」と呼ばれる仕組みで管理される。スプラウトは2016年のネットワーク開始時に導入された最初のシールドプールだ。その後、処理性能などを改善した「サプリング(Sapling)」や「オーチャード(Orchard)」が導入され、2026年7月には新たなシールドプール「アイアンウッド(Ironwood)」も導入された。
今回のNU7では、旧式のバージョン4(v4)トランザクション(取引データの形式)が無効化された。スプラウト内の資金を移動するにはv4トランザクションが必要なため、アップグレード後は秘密鍵を保有していても、残されたZECを移動できなくなった。一方、既存のバージョン5(v5)とバージョン6(v6)のトランザクションは引き続き利用できる。
ジーキャッシュの改善提案「ZIP 2003」によると、スプラウトは証明の生成に長い時間と大量のメモリを必要とするほか、古い取引形式の維持がネットワークの負担となっていた。また、後継のシールドプールの導入によってスプラウトの利用は減少していた。今回の変更は、こうした旧式の処理に伴う複雑さや攻撃対象を削減することを目的としている。
ただし、スプラウトに残されたZECが焼却(バーン)されたわけではない。ZIP 2003では、これらのZECは引き続き発行済み供給量に含まれると説明されている。また、将来のネットワークアップグレードで資金を移動する手段が再び提供される可能性はあるものの、その実現は保証されていない。
なお、今回の変更によって移動できなくなったのはスプラウトに残された資金であり、後継のシールドプールに保有されているZECが同様に影響を受けるわけではない。オーチャードについては、7月のネットワークアップグレード「NU6.3」で新規のシールド取引が停止されたものの、保有するZECはアイアンウッドへ移動できる。
また、ブロック生成の目標間隔の短縮により、取引が最初の承認を得るまでの平均時間も短くなる。一方、1ブロック当たりのZEC発行量が調整されるため、時間当たりの発行量や供給上限2,100万ZECは変更されない。
さらに、将来のマイニング報酬を補う「ネットワーク・サステナビリティ・メカニズム(Network Sustainability Mechanism:NSM)」も導入された。NSMでは取引手数料の60%をいったん流通から除外し、2031年2月ごろから将来のブロック報酬として再発行する予定だ。
NU7 has successfully activated on mainnet. A new era of Zcash is here. $ZEC https://t.co/rPaSFe9h7j
— Zcash 🛡️ (@Zcash) November 6, 2026
参考:ゼックスタッツ1・ゼックスタッツ2・ZIP2003
画像:PIXTA