ステラ、次期アップグレード「Bell」の内容公開。11/23にメインネット導入投票へ

スマートアカウントの拡張、耐量子署名への対応、将来の処理高速化に向けた変更を導入

ステラ開発財団(Stellar Development Foundation:SDF)が、ブロックチェーン「ステラ(Stellar)」の次期ネットワークアップグレード「ベル(Bell、Protocol 30)」の内容と導入スケジュールを10月20日に発表した。

ベルでは、スマートアカウントによる複数顧客の資金管理、耐量子電子署名の検証、台帳確定時刻のミリ秒単位での記録を可能にする。メインネットでは11月23日にアップグレードの承認投票が予定されており、ネットワークの取引検証などを担うバリデーターが承認した場合に有効化されるとのこと。

今回のアップグレードには、ステラのプロトコル変更提案「コア・アドバンスメント・プロポーザル(Core Advancement Proposal:CAP)」が3つ含まれる。このうち「CAP-84」は、企業がスマートアカウントを利用して複数顧客の資金を管理しやすくするための変更だ。スマートアカウントとは、スマートコントラクトによって資金の使用条件を管理するアカウントを指す。具体的には、複数人による承認や支出額の制限など、資金を使用する際の条件を柔軟に設定できる。

一方、暗号資産(仮想通貨)取引所などがスマートアカウントを利用する場合、顧客資金の管理方法が課題となる。取引所などでは、1つのアカウントで複数顧客の資金をまとめて保有し、顧客ごとの残高をブロックチェーン外で管理する場合がある。ステラの従来型アカウントには、顧客ごとの識別IDを付与し、同じアカウントへの入金を区別する仕組みがある。しかし、スマートアカウントには同様の機能がなく、顧客ごとに個別のスマートコントラクトを用意する必要があった。

そこでCAP-84では、スマートコントラクトのアドレスに64ビットの識別IDを付与できる「多重化コントラクトアドレス(muxed contract address)」を導入する。新たに導入される「W」で始まるアドレスにトークンを送信すると、資金は対応するスマートコントラクトに入金される。その際、送金イベントに識別IDが記録されるため、取引所などは入金先の顧客を判別できる。これにより、顧客の暗号資産を預かるカストディ事業者なども、顧客ごとにコントラクトを配置せずに資金を一括管理できるようになる。

もう一つの提案「CAP-87」では、スマートコントラクトが耐量子電子署名方式「ML-DSA」の署名を検証できるようになる。電子署名は、秘密鍵を使って取引や資金の使用を承認する仕組みだ。ステラでは現在、楕円曲線暗号に基づく電子署名を使用しているが、将来、十分な性能を持つ量子コンピューターが登場した場合、解読される可能性がある。こうしたリスクへの対策となるML-DSAは、米国国立標準技術研究所(NIST)が2024年に標準化した耐量子電子署名方式の1つだ。

今回の変更により、スマートアカウントでは、資金を使用する際の承認条件としてML-DSA署名を設定できるようになる。署名の検証機能は、ステラのノードソフトウェア「ステラ・コア(Stellar Core)」が提供する。そのため、開発者は暗号学的な検証処理を独自に実装する必要がなくなる。ただし、今回の変更でステラ全体が耐量子暗号に移行するわけではない。ネットワークのトランザクション署名には、引き続き「Ed25519」が使用される。また、ステラ開発財団は、従来型アカウント向けの耐量子署名機能を将来のプロトコル変更で導入する方針を示している。

そして3つ目の提案「CAP-88」では、将来の台帳の確定間隔の短縮に向けて、時刻管理の仕組みを変更する。台帳の確定間隔とは、ある台帳が確定してから次の台帳が確定するまでの時間を指す。ステラでは、今年9月のアップグレードによって台帳の確定間隔が約5.7秒から5秒に短縮された。一方、現在の仕組みでは台帳の確定時刻を秒単位で管理しているため、4.5秒などの端数を含む確定間隔や、1秒未満の確定間隔を正確に設定できない。

この制約を解消するため、CAP-88では従来の秒単位の時刻情報を維持しながら、台帳の確定時刻をミリ秒単位でも記録できるようにする。これにより、将来のアップグレードで台帳確定間隔をより細かく設定できるようになる。ただし、ベル自体は台帳の確定間隔を短縮するものではない。

また、ベルの導入に伴い、ステラ開発財団は開発者やインフラ事業者に対し、ソフトウェア開発キット(SDK)をアップグレード前に最新版へ更新するよう求めている。今回の変更では台帳ヘッダーの形式が変わるため、古いSDKでは新しい台帳データを正常に読み取れない可能性がある。

さらに、アドレスを扱うアプリケーションでは、新しいWアドレス形式への対応も必要だ。SDKを使用せずに台帳データを直接読み取るシステムでは、データ形式を定義する「XDR」の更新が求められる。一方、既存のスマートコントラクトは変更せずに引き続き利用できる。

ステラ・コアのバージョン30.0.0は10月16日に公開された。関連インフラやSDKの安定版は、10月23日までに順次公開される予定だ。アップグレードの承認投票は、テストネットで11月3日、メインネットで11月23日のいずれも協定世界時17時(日本時間翌日2時)に予定されている。なお、これらの日程は変更される可能性がある。

 

参考:ステラ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。