アプトスで暗号化メモリプールがメインネット稼働
レイヤー1ブロックチェーン「アプトス(Aptos)」のメインネットで「暗号化メモリプール(Encrypted Mempool)」が稼働を開始した。同チェーンを支援するアプトス財団(Aptos Foundation)が10月12日に発表した。
暗号化メモリプールは、取引実行前のトランザクション内容を暗号化する機能。これにより、取引の順序が確定するまで内容を秘匿し、フロントランニングやサンドイッチ攻撃など、最大抽出可能価値(MEV)に関連するリスクの低減を図る。なお、ユーザーは取引ごとに暗号化の有無が選択可能だ。
一般的なブロックチェーンでは、トランザクション(取引)のデータが実行前に、一時的な待機領域である「メモリプール」に送信される。しかし、取引が実行されるまでの間に、その内容が他の参加者から見える場合があり、先回り取引などに悪用される可能性がある。代表的な手法には、他のユーザーの注文情報を利用して先に取引を行う「フロントランニング」がある。また、特定の注文の前後に取引を挟み込む「サンドイッチ攻撃」もあり、いずれも一般ユーザーに不利な取引価格や追加コストをもたらすことがある。こうした取引の順序などを利用して得られる追加的な利益は「MEV」と呼ばれる。
こうした問題に対し、今回アプトスで導入された暗号化メモリプールでは、ユーザーがトランザクションを送信する前に、端末側でその内容を暗号化する。ブロックの生成を提案するバリデーター(取引の検証やブロック生成に参加するノード)は、取引内容を確認できない状態でトランザクションの順序を決定する。その後、ブロックについての合意が確定すると、バリデーターが共同で内容を復号し、トランザクションが実行される仕組みだ。
ただし、暗号化されるのはトランザクションの実行内容であり、送信者のアドレスやガス代に関する情報は引き続き公開される。また、ブロック確定後には取引データが記録され、従来どおり検証できる。そのため、取引履歴を恒久的に非公開にする機能ではない。
また、アプトス財団によると、暗号化された取引内容を復号するには、ネットワーク全体のステーク量の3分の2以上に相当するバリデーターの協力が必要となる。ステーク量とは、ネットワークの合意形成に参加するために預けられた暗号資産の量を指す。
既存のMEV対策には、非公開の取引経路を提供する事業者や、バリデーターとは別の委員会に取引情報の管理を委ねる方式がある。それに対し、今回の仕組みでは、暗号化メモリプールの仕組みがアプトスの合意形成プロトコル「アプトスBFT(AptosBFT)」に直接統合されている。そのため、同財団は、既存のバリデーター群以外に新たな第三者を信頼する必要がないと説明している。
利用面では、暗号化メモリプールは暗号資産(仮想通貨)ウォレット「ペトラ(Petra)」で利用できる。同財団は、ペトラが同機能に対応した最初のウォレットだと説明している。ユーザーはトランザクションの署名画面から暗号化を選択できる。
また、アプトス上に構築された無期限先物取引所「デシベル(Decibel)」も、注文が実行されるまでその内容を非公開にするため、暗号化メモリプールを利用する予定だ。開発者向けには、アプトスのタイプスクリプトSDK(TypeScript SDK)のバージョン7.0.0以降で対応しており、既存のムーブ(Move)で記述されたスマートコントラクトを変更せずに利用できる。
ただし、暗号化トランザクションには通常より高い最低手数料条件が設定されている。公式開発者ドキュメントによると、最低ガス単価は通常の2倍となる200 Octas/gas-unitで、復号処理に必要な375ガスユニットも追加される。
なお、同機能はアプトスの改善提案「AIP-144」に基づくもので、複数の暗号化トランザクションをまとめて復号する「バッチ型しきい値暗号」が採用されている。50ノードを使用したベンチマークでは、従来のアプトスBFTと比較して、ブロック当たり約20ミリ秒の遅延が追加されたとのことだ。また、今回の実装はセキュリティ企業ZKセキュリティ(ZKSecurity)による独立したレビューを受けている。
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— Aptos (@Aptos) October 12, 2026