メタプラネット、1万BTC売却で換金能力を実証。信用格付け取得へ

1万BTC売却後に1.1万BTCを再取得、保有量は4.4万BTCに

ビットコイン(Bitcoin)を主要な財務準備資産として保有するメタプラネットが、第3四半期に10,000 BTCを売却した後、11,000 BTCを再取得したと10月5日に発表した。

売却の目的は、保有するビットコインを必要に応じて現金化できることを実取引で示し、同社の信用格付け取得や、社債・優先株などによる資金調達手段の拡大につなげることだという。差し引き1,000 BTCの純増となり、9月30日時点の同社のビットコイン保有量は44,000BTCとなった。

なお、企業のビットコイン保有状況を集計する「BitcoinTreasuries.net」の10月6日時点のデータによると、今回の保有量増加によりメタプラネットは、世界の上場企業によるビットコイン保有数で米ストラテジー(Strategy)に次ぐ2位となった。

今回の取引の背景には、ビットコインを主要資産とする企業特有の信用評価上の課題がある。信用格付けは、企業が社債などの債務を履行する能力を格付け会社が評価するもので、債券投資家などが信用リスクを判断する材料となる。メタプラネットでは現在、ビットコインがバランスシート上の資産の大部分を占めている。

一方、ビットコイン自体が市場で売買しやすいからといって、信用評価で十分な流動性があるとみなされるとは限らない。信用評価では、企業が債務の返済などで現金を必要とした際に、実際にビットコインを売却する意思と能力があるかも重要になるという。資産の多くをビットコインで保有していても、社債の償還や借入金の返済には現金が必要になるためだ。

メタプラネットは、こうした判断にあたり、海外の同業他社に対して公表された発行体信用格付けも参考にしたという。同社によれば、企業がビットコインを売却しない方針を取っている場合や、売却に消極的な場合、信用評価では十分な流動資産として扱われない可能性がある。そのため、売却できると説明するだけでなく、実際に現金化することが重要だと同社は判断した。

メタプラネットは参考にした企業名や格付け会社を明らかにしていない。一方、S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)は2025年10月、株式や社債などによる調達資金を使ってビットコインを蓄積するストラテジーに、発行体信用格付け「B-」を付与した。「B-」は投資適格級を下回る格付けとなる。S&Pはストラテジーの強みとして資本市場への高いアクセス力を挙げる一方、ビットコインへの高い資産集中や米ドル流動性の低さなどを信用力上の弱点と評価した。

具体的には、ストラテジーでは資産の多くをビットコインで保有する一方、社債の償還や利払い、優先株の配当などは米ドルで支払う必要がある。さらにS&Pは、同社が保有するビットコインの売却に消極的であることも弱点として指摘した。現金を確保するために最後の手段としてビットコインを売却する必要が生じた場合、市場価格が大幅に下落した局面での売却を迫られる可能性が高まるとの見方を、ストラテジーは示している。

こうした信用評価上の課題を踏まえ、メタプラネットは10,000 BTCを平均1 BTCあたり1,247万98円で売却し、1,247億円を現金化した。同社によると、この売却額は社債や借入金などの有利子負債の元本総額を上回った。なお、9月30日時点で、社債や借入金、優先株から現金・現金同等物と米ドル建てステーブルコインを差し引いた金額は約1,223億7,400万円だった。今回の取引で社債や借入金などを実際に返済したわけではなく、これらの債務は従来の条件で残っている。

また、売却と再取得は同時に行う交換取引ではなかった。メタプラネットは売却代金をいったん現金として保有した後、別の取引として11,000 BTCを再取得した。再取得には総額1,498億9,600万円を投じ、平均取得価格は1 BTCあたり1,362万6,928円となった。売却から再取得までにビットコイン価格が上昇したため、再取得価格は売却価格を上回ったとのことだ。

メタプラネットは今後、信用格付けの取得を目指す。格付けなどを通じて資本市場で信用力の客観的な評価を確立し、社債や優先株を含む資金調達手段を広げる方針だ。同社は、こうした資金調達基盤の拡大を最終的なビットコイン保有量の増加につなげる考えを示している。

また今回の売却では、売却したビットコインの取得価格が売却価格を上回っていたため、米国税務上のキャピタルロス(譲渡損失)が発生した。この損失は、将来のキャピタルゲイン(譲渡益)と相殺し、税負担を減らせる可能性がある。メタプラネットは、この税効果に関連して、米国持株会社メタプラネット・ホールディングス(Metaplanet Holdings)傘下の子会社で約9,700万ドル(約153億円)の繰延税金資産を計上できる可能性があると試算している。繰延税金資産は、将来の税負担を軽減する効果が見込まれる場合に、その税効果を会計上の資産として計上するものだ。ただし、約9,700万ドルは監査法人による確認前の暫定値で、実際の計上可否や金額は確定していない。

なおメタプラネットは、今回の売却によってビットコインの保有方針や長期戦略を変更したわけではないと説明している。同社は今後もビットコインを主要な財務準備資産と位置付け、中長期的に保有量と1株あたりのビットコイン保有量を増やす方針だ。一方、ビットコイン戦略は「どのような状況でも売却しない」ことを意味するものではなく、資本効率や財務健全性、長期的な株主価値などを踏まえて合理的と判断した場合には、一部を現金化する可能性があるとのことだ。

参考:メタプラネット・S&Pグローバル・BitcoinTreasuries.net 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。