大和証券とSBI証券間で実発行したSTとステーブルコインを使用
三井住友銀行、大和証券、SBI証券らが、セキュリティトークン(ST/デジタル証券)の二次流通市場におけるステーブルコインを活用したDvP決済の実証プロジェクト「プロジェクト・トリニティ(Project Trinity)」について、フェーズ1とフェーズ2の実証を完了したと10月6日に発表した。
同プロジェクトは2025年8月22日に開始が公表された。三井住友銀行、大和証券、SBI証券、SBI R3 Japan、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)、ブーストリー(BOOSTRY)、プログマ(Progmat)、データチェーン(Datachain)の8社が推進するとされていたが、今回の実証にはSBI VCトレードも参加した。
DvP決済は、証券の引き渡しと代金の支払いを同時に行う仕組みだ。一方だけが履行され、取引相手から証券や代金を受け取れなくなる「元本リスク」を抑えることを目的とする。発表によると、現行のST二次流通では、証券会社間の資金決済とSTの受け渡しが必ずしも同時に行われていないという。
関係8社は、スマートコントラクトを活用し、STの受け渡しとステーブルコインによる支払いを連動させることで、元本リスクの排除と決済の効率化を目指している。
2025年8月から2026年3月に実施したフェーズ1(業務要件定義と次フェーズ計画策定)では、関係各社が現状と目標との差分を業務運用、システム、法制度の観点から整理したという。そのうえで、フェーズ2の業務運用検証の計画と開発要件について合意したとのこと。また、専門の弁護士の協力を得て、関係当局に法令対応に関する照会を行ったとのことだ。
そして2026年4月から9月に実施したフェーズ2では、大和証券とSBI証券が、検証用途に限定して実際に発行されたSTとステーブルコインを用い、DvP決済の業務運用を検証したという。
STにはSBI VCトレードが発行した「自己私募ST社債」を使用した。ODXが運営するST取引に係るPTS(私設取引システム)「スタート(START)」市場での取引を想定し、大和証券とSBI証券がそれぞれ自己勘定で行う2件のST譲渡取引を対象に、三井住友銀行が発行した第3号電子決済手段(特定信託受益権型)のステーブルコインでDvP決済を行ったという。実際のST譲渡は、当事者同士が直接売買する相対取引で行われた。
大和証券、SBI証券、三井住友銀行、ODXの4社による検証では、ステーブルコインの購入・償還やST譲渡取引のDvP決済に加え、ステーブルコインの残高不足や決済情報の照合不一致が生じた場合の対応も確認したとのこと。関係各社は、設定したシナリオと時間枠の範囲で、想定通りの結果を得たとしている。
技術面では、プログマがST基盤と社債原簿管理サービスを提供した。またプログマとデータチェーンが、異なるブロックチェーン上のSTとステーブルコインを連携させるクロスチェーン技術を共同提供した。ステーブルコイン基盤は、TISIとファイアブロックス(Fireblocks)の協力のもと、三井住友銀行が提供した。SBI R3 Japanはプロジェクト全体の管理と事務局を、ブーストリーはアドバイザーを担当した。
同プロジェクトでは、当面は約定日の2営業日後に決済する「T+2」のDvP決済を目標としている。将来的には、約定後すぐに取引ごとに決済する方式を見据えている。今回の実証を通じ、証券会社間での実現可能性を法務・技術・業務運用の各面で一定程度確認できたとのことだ。
一方、複数の取引やST基盤、決済手段に対応し、DvP決済と非DvP決済が混在する運用に向けては、決済期限内に安定して業務を行える体制の整備や、業務アプリケーションの高度化などの課題が残るという。
関係8社は、今回得られた知見と課題を踏まえ、制度や市場インフラの整備状況、証券会社などの業者間決済に適したデジタル通貨の発展状況を見ながら、今後の対応を検討するとしている。
なお、SBI証券、大和証券、SBI新生銀行、ブーストリー、大阪デジタルエクスチェンジ、ディーカレットDCPの6社は2026年4月24日、トークン化預金「DCJPY」を用いたST二次流通のDvP決済実証の完了を発表している。この実証は同年3月に実施され、SBI新生銀行が発行するDCJPYを使用した。DCJPYは銀行預金をトークン化したもので、ステーブルコインを使う今回のプロジェクト・トリニティとは別の取り組みだ。
参考:SBI VCトレード
画像:PIXTA