SEC、暗号資産規制の見直しを加速
米証券取引委員会(SEC)が、投資顧問やファンドによる暗号資産(仮想通貨)のカストディ(保管)に関する新たな規則案を10月1日に公表した。
今回の提案は、1940年投資顧問法(Investment Advisers Act of 1940)および1940年投資会社法(Investment Company Act of 1940)に基づくカストディ規則を新設・改正するものだ。対象には登録投資顧問のほか、登録投資会社や事業開発会社(BDC)などの規制対象ファンドが含まれる。
なお、対象となる暗号資産の範囲は適用される法律によって異なり、資金や証券、または証券に類する投資に該当するものに限られる。
提案では一定の条件のもと、投資顧問やファンドによる暗号資産の「セルフカストディ」が認められる。また州認可の信託会社(State Trust Company)についても、一定の要件を満たす場合に暗号資産のカストディアンとして利用できるようにする。
なお、ここでいうセルフカストディとは、暗号資産の保有者である投資家自身が秘密鍵を管理する一般的な意味でのセルフカストディではなく、投資顧問が顧客やファンドの暗号資産を自ら保管することを指す。
SECのヘスター・パース(Hester M. Peirce)委員によると、投資顧問がセルフカストディを行うには、対象となる暗号資産を保管できる認められたカストディアンが存在しないと判断することが前提条件となる。この判断はセルフカストディ開始前だけでなく、その後も四半期ごとに行う必要があるという。
またSECのマーク・ウエダ(Mark T. Uyeda)委員は、セルフカストディにはカストディに関する専門性やサイバーセキュリティ対策、年次レビュー、内部報告、顧客への口座明細や情報開示などの措置が求められると説明している。
SECは今回、暗号資産に関する枠組みだけでなく、既存のカストディ規則全般の近代化も提案した。規制対象ファンドがブローカーディーラーをカストディアンとして利用できる条件の見直しや、一定の裁量取引権限について投資顧問法上のカストディ規則から除外することなどが含まれる。
SECのポール・アトキンス(Paul S. Atkins)委員長は同日の声明で、既存のカストディ規則について、その多くがインターネット普及以前に作られ、数十年間改正されていないと指摘した。
同氏は、ビットコイン(Bitcoin)のホワイトペーパーが2008年に公開されて以降、暗号資産市場は数兆ドル規模の資産クラスへ成長した一方、「規則や規制はその変化に追いついていない」と説明。今回の提案によって、投資顧問やファンドに暗号資産を適法に保管するための明確な規制枠組みを提供し、従来の規則によって生じていた不透明さを解消する考えを示した。
アトキンス委員長によると、従来のカストディ規則は顧客資産の紛失や盗難、不正使用、流用を防ぐことを目的としているものの、主に伝統的な資産の保管を前提としてきたという。
一方で新たに登場する暗号資産の場合、資産が市場に投入されてから対応可能なカストディサービスが整うまでに数カ月を要することがある。今回の提案は、こうした暗号資産特有の問題への対応が目的のひとつとなっている。
アトキンス委員長は今回の規則案について、SECが進めている暗号資産規制見直しの一環だとも説明した。
SECのスタッフは2025年12月、米証券保管振替会社(The Depository Trust Company:DTC)が計画する証券トークン化プログラムについてノーアクションレターを発出。2026年1月にはトークン化証券の分類などを整理したスタッフ声明を公表した。
さらに同年3月には、暗号資産への連邦証券法の適用について解釈指針を公表。8月には、暗号資産に関連する一定の投資契約を対象とした募集制度「Regulation Crypto Assets」を提案した。
また9月には、トークン化されたNMS(全米市場システム)株式のオンチェーン取引を可能にするため、一定の取引市場に一時的・条件付きの適用除外を認める「Innovation Exemption(イノベーション免除)」を導入している。
アトキンス委員長は、ブロックチェーン技術には金融システムを近代化する可能性があるとし、オンチェーン市場が海外に追いやられたり、技術に適さない規制モデルを強いられたりするべきではないとの考えを示した。
また「さらなる規制案が控えている」とし、トランプ米大統領が掲げる「米国を世界の暗号資産の首都にする」との方針に沿って、引き続き規制整備を進める姿勢を示している。
今回の規則案に対するパブリックコメントは、規則案が連邦官報(Federal Register)に掲載されてから60日間受け付けられる予定だ。
TODAY 🚨: The Commission proposed new rules and amendments to provide a tailored framework for the custody of crypto assets for registered investment advisers and regulated funds, i.e. registered investment companies and business development companies. pic.twitter.com/MP16NmQ6og
— U.S. Securities and Exchange Commission (@SECGov) October 1, 2026
参考:発表・アトキンス委員長声明・ウエダ委員声明・パース委員声明
画像:Reuters