サカナAI、複数AI連携「Fugu Ultra v2」公開。コーディング性能試験でGPT-6 Astra上回る

性能試験5種で首位

AI開発企業サカナAI(Sakana AI)が、複数のAIモデルを連携させるAIシステム「サカナ・フグ(Sakana Fugu)」の最新版「フグウルトラv2(Fugu Ultra v2)」と、新モデル「フグマックス(Fugu Max)」の提供開始を9月11日に発表した。

サカナ・フグは、複数のAIモデルの「集合知」を活用するオーケストレーターモデルだ。利用者から指示を受けると、複数の専門AIモデルからタスクに適したモデルを選び、役割を分担させて結果をまとめる。モデルの編成や処理手順は、タスクごとに動的に決められるという。利用者は複数のAIを個別に操作する必要がなく、サカナ・フグを1つのAIモデルとして利用できる。

今回提供開始された2モデルは、同じオーケストレーション構造を採用している。フグウルトラv2は複雑なタスクにおける回答品質、フグマックスはコストパフォーマンスを重視して最適化された。

サカナAIによると、フグウルトラv2は、従来版「Fugu Ultra v1.1」や他社モデルとの比較において、8種類の性能試験のうち5種類で単独首位または同率首位を記録したという。また、同社は8種類のうち7種類で2位以内に入ったとしている。

首位または同率首位となった5種類の性能試験は、「GDP.pdf」、「Chartography」、「DeepSWE」、「Toolathon」と、サカナAI独自のコーディング課題やユースケースを反映した社内性能試験「SWEFish」だ。

GDP.pdfは、業務で使われるPDFを読み取り、文書内の情報に基づいて質問に答える能力を測る性能試験だ。Toolathonは、複数のアプリや外部ツールを使い、多段階の複雑な作業を完遂する能力を評価する。

実際のソフトウェア開発能力を評価するDeepSWEでは、フグウルトラv2が74.3を記録した。これはアンソロピック(Anthropic)の「Claude Fable 5.1」の67.4、オープンAI(OpenAI)の「GPT-6 Astra」の73.0を上回る。

SWEFishでも、フグウルトラv2は71.8を記録した。Claude Fable 5.1は66.0、GPT-6 Astraは69.8だった。

図表の読み取りやデータ解釈を評価するChartographyでは、フグウルトラv2が48.3を記録。Claude Fable 5.1の46.2を上回った。なお、公式の比較図には、この性能試験におけるGPT-6 Astraの数値は掲載されていない。

一方、プログラムを一から再構築する能力を評価するProgramBenchでは、フグウルトラv2の81.0に対してGPT-6 Astraが85.4だった。大学院レベルの科学分野の専門知識を問うGPQA Diamond(GPQAD)でも、フグウルトラv2の95.5をGPT-6 Astraの96.0が上回っている。このため、フグウルトラv2がすべての性能試験で他社モデルを上回ったわけではない。

なお、これらはサカナAIが公表した比較結果であり、第三者機関による独立評価ではない。フグウルトラv2の学習データの基準日は8月28日で、Claude Fable 5、Claude Fable 5.1、GPT-6 Astraは、フグウルトラv2が連携するモデル群に含まれていないという。

同時公開されたフグマックスは、連携対象となるモデル群を拡大した。サカナAIとエヌビディア(NVIDIA)の協業を通じて利用する「ネモトロン(Nemotron)」シリーズを含む、オープンウェイトモデルや専門モデルが組み込まれている。

フグマックスは、10種類の性能試験のうち6種類で総合首位を記録したという。料金は100万トークン当たり入力2ドル(約307円)、出力6ドル(約921円)。サカナAIは、出力料金が「Claude Sonnet 5」「GPT-5.6 Terra」「Kimi K3」より40〜60%低いとしている。

フグウルトラv2とフグマックスは、サカナAIのOpenAI互換APIを通じて提供されている。既存のサカナフグ利用者は、モデルを指定するパラメーターを変更することで最新版を利用できるとのことだ。

サカナAIは今年6月、サカナフグとフグウルトラの一般提供を開始していた。サカナフグの技術は、複数のAIモデルを動的に連携させる「トリニティ(TRINITY)」と「コンダクター(Conductor)」と呼ばれる研究を基盤としている。

サカナAIについて

サカナAIはAIモデルの名称ではなく、東京を拠点とするAI研究開発企業だ。2023年にデイビッド・ハ(David Ha)CEO、伊藤錬(Ren Ito)会長、リオン・ジョーンズ(Llion Jones)CTOが共同創業した。ハ氏は元グーグルブレイン(Google Brain)の日本研究チーム責任者。ジョーンズ氏は、現在の生成AIの基盤技術「トランスフォーマー(Transformer)」を提唱した論文『Attention Is All You Need』の共同執筆者として知られる。

社名の「Sakana」は日本語の「魚」に由来し、ロゴは魚の群れをモチーフにしている。個々の魚が周囲と協調しながら群れとして環境に適応するように、複数のAIを組み合わせて単一モデルを超える能力を引き出す「集合知」を研究開発の軸としている。

従来主流だった、単一の大規模AIモデルを大量のデータや計算資源で高性能化するアプローチに対し、サカナAIは、複数の既存モデルを連携させ、それぞれの得意分野を生かす手法に特徴がある。今回の「Sakana Fugu」は、単独モデルで処理できる課題には直接回答し、複雑な課題では複数の専門モデルを連携させる。適切なモデルの選択、作業の分担、出力の検証・統合までを内部で行い、利用者には1つのAIモデルとして回答を返す仕組みだ。

また、サカナAIは複数の既存モデルを進化的計算で組み合わせ、特定の能力に優れた新たなモデルを生み出す「進化的モデルマージ」など、生物の進化をAI開発へ応用する研究にも取り組んでいる。

参考:サカナAI
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 副編集長 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。