ハイパーリキッド、クラーケン親会社と米国展開に向け協議=報道

ビットノミアル通じた米国でのパーペチュアル提供を協議

分散型取引基盤ハイパーリキッド(Hyperliquid)開発元のハイパーリキッド・ラボ(Hyperliquid Labs)が、米暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケン(Kraken)の親会社ペイワード(Payward)と、米国でのパーペチュアル(無期限先物)提供に向けた協議を進めている。事情に詳しい関係者の話として、米メディア「ブルームバーグ(Bloomberg)」が9月1日に報じた。

報道によると、規制当局の承認が得られた場合、米国のトレーダーはペイワード傘下のデリバティブ取引所ビットノミアル(Bitnomial)を通じて、ハイパーリキッドのブロックチェーン技術上に構築された暗号資産の価格に連動する一部のパーペチュアルを取引できるようになるとのこと。

取引の金銭的条件は明らかになっていない。ペイワードはすでに米商品先物取引委員会(CFTC)に対し、今回の仕組みの基本構造を示した提案を提出していると関係者は説明した。ペイワードとハイパーリキッド・ラボは、ブルームバーグの取材に対しコメントを控えた。

パーペチュアルは、満期日を持たないデリバティブ契約だ。暗号資産デリバティブ市場では主要な商品の一つとなっているが、米国では規制に準拠した提供経路が限られていたことから、取引の多くが海外市場で行われてきた。

ハイパーリキッド・ラボはCFTCに登録しておらず、ブルームバーグは、米国法の下では同プラットフォーム上で米国ユーザーにデリバティブ取引を提供できないと説明している。またハイパーリキッドは、中央の運営主体による許可を前提としないパーミッションレスな仕組みを採用する。ブルームバーグは、こうした構造について、市場操作やマネーロンダリング、制裁回避などへの対応が規制上の課題になっていると伝えている。

今回検討されている仕組みでは、CFTC規制下のビットノミアルが米国ユーザーへの取引提供を担う。ビットノミアルが登録ユーザーにハイパーリキッド関連先物の一部へのアクセスを提供し、コンプライアンス上の責任を負う構造になるとのこと。

ビットノミアルは、米国で規制下のデリバティブ取引所や清算機関などを運営するデジタル資産デリバティブ企業だ。ペイワードは今年5月1日、最大5億5,000万ドル(約870億円)規模のビットノミアル買収を完了した。これによりペイワードは、CFTC指定の契約市場(DCM)やデリバティブ清算機関(DCO)、CFTC登録の先物取引業者(FCM)からなる規制基盤を傘下に収めた。

ペイワードはすでに、この基盤を米国でのパーペチュアル提供に活用している。クラーケンは今年6月、ビットノミアルに上場するCFTC規制下のパーペチュアルを、対象となる米国ユーザー向けに提供開始した。

米国で規制下のパーペチュアル提供進む

米国では今年、パーペチュアルを規制下で提供するための動きが進んでいる。CFTCは今年5月、パーペチュアル契約の上場に関する方針声明を公表した。同日には、予測市場運営企業カルシ(Kalshi)が申請したビットコイン(BTC)のパーペチュアル契約「BTCPERP」の上場も承認した。

CFTCのマイケル・セリグ(Michael Selig)委員長は当時、暗号資産パーペチュアルを米国の規制枠組みの下へ「オンショア化」する方針を示した。

ハイパーリキッドの米国展開については、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領も8月19日に言及した。トランプ氏はホワイトハウスで開かれた暗号資産・テクノロジー業界関係者や規制当局トップらとの会合で、セリグ委員長を指すとみられる「マイク」が、ハイパーリキッドを「完全に法令に準拠した形で米国に導入する」ため取り組んでいると述べた。ただし、具体的な導入方法や時期は明らかにしなかった。

テストネットではクラーケン名義のHIP-3市場も確認

今回の報道に先立ち、ブロックワークス・リサーチ(Blockworks Research)のアナリスト、シャウンダ・デベンス(Shaunda Devens)氏は8月21日、ハイパーリキッドのテストネット上で「Kraken HIP-3 test DEX」と名付けられた市場が確認されたと自身のXアカウントで報告した。

HIP-3は、外部の事業者や開発者がハイパーリキッドの取引基盤を使い、独自のパーペチュアル市場を開設できる仕組みだ。デベンス氏によると、「Kraken HIP-3 test DEX」では8月19日からアクセス制御機能「スター・ゲーティング(Star gating)」が有効化され、10個のウォレットがホワイトリストに登録されていたとのこと。またテストネットでは、ユーザーの注文をキャンセルする機能やポジションを縮小する注文を実行する機能など、利用者の取引を管理するための機能も確認された。

ただし、テストネットではデプロイヤーが任意の名称で市場を立ち上げられるため、デベンス氏は「Kraken HIP-3 test DEX」とクラーケンとの関係は未確認だと説明している。また、ブルームバーグは今回報じたペイワードとハイパーリキッド・ラボの構想にHIP-3が利用されるとは伝えていない。

参考:ブルームバーグ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。