中国、AI・データ立法と暗号資産関連の裁判ルール整備を推進へ

最高裁・司法部・全人代が方針示す

中国政府が、国務院新聞弁公室による「開局起歩『十五五』」系列記者会見を開催し、AIやデータ経済、暗号資産、クロスボーダー金融などの新興領域における立法・司法ルール整備を推進する方針を5月27日に示した。

「十五五」とは、中国で2026年から始まる「第15次5カ年計画(2026〜2030年)」を指す略称。中国では国家の経済・産業政策を5年単位で策定しており、今回の会見では次期5カ年計画期間における法治建設の方向性が説明された。

会見には、最高人民法院(最高裁)、全国人民代表大会(全人代)常務委員会法制工作委員会、司法部の幹部らが出席。AI生成コンテンツ、データ取引、暗号資産やクロスボーダー金融などの新型案件に関する裁判規則や立法整備を進める考えが示された。

最高人民法院の劉貴祥二級大法官は、「新質生産力」の発展を支える司法保護の強化方針を説明。その中で、AI関連案件やデータ財産権に関する司法保護を強化するとともに、データ権属やデータ取引、AI生成に関する裁判規則の整備を進める方針を明らかにした。

また、暗号資産やクロスボーダー金融をめぐる新型案件についても裁判規則の研究を進める考えを示したほか、インサイダー取引や市場操作に関する民事賠償の司法解釈についても早期制定を目指すとした。

中国ではこれまで「データセキュリティ法」や「個人情報保護法」など個別法の整備が進められてきた。一方、AI生成コンテンツやデータ取引、暗号資産関連紛争をめぐる司法実務は発展途上にあり、今回の方針は裁判実務面でのルール明確化を進める動きとして注目される。

また、資本市場分野では中小投資家保護を重視し、市場操作やインサイダー取引への対応強化も進める考えを示した。

司法部の武増副部長は、「第14次5カ年計画(2021〜2025年)」期間中に、国務院が法律議案60件、行政法規165件を提出したと説明。そのうえで、次期5カ年計画期間の重点立法方向として、AIや低空経済(低高度空域経済)など新興領域を挙げた。

AIについては、「人工知能の健全な発展」に関する総合的な立法研究を進める方針を表明。中国ではこれまで「生成AIサービス管理暫定弁法」など個別規制が先行していたが、より体系的な法整備に向けた議論が進む可能性がある。

また全国統一大市場建設条例の制定や、海外進出企業向けの渉外法律サービス強化も推進する方針が示された。

さらに武副部長は、弁護士業界においてもAIなど新技術を活用し、「業界の効率と質を高める」と言及。法律サービス分野でのAI活用も後押しする考えを示している。

全国人民代表大会常務委員会法工委の黄薇副主任は、2026年度の立法計画について、継続審議案件15件、初回審議案件19件を予定していると説明した。

重点分野としては、「新興領域・重点領域・渉外領域」における立法強化を掲げ、金融法、金融安定法の制定に加え、中国人民銀行法や銀行業監督管理法の改正などを進める方針を示した。

また、会見では新興分野に対する「立法迅速対応メカニズム」の整備にも言及されており、急速な技術変化に対応する制度設計を強化する方向性も示された。

今回の一連の方針は、中国がデータを土地・労働・資本・技術と並ぶ「生産要素」と位置付ける国家戦略とも連動している。

中国では2021年以降、データセキュリティ法や個人情報保護法などデータ関連法制の整備を進めてきた。一方で、AI生成コンテンツ、データ取引市場、暗号資産関連紛争などをめぐる具体的な司法ルールは依然発展段階にある。

今回の会見では、2026年から始まる次期5カ年計画期間を通じ、こうした新興領域における立法・司法両面の制度整備を進める姿勢が改めて示された形だ。

参考:発表 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者