監督・執行の協調へ
米国の金融規制当局である証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)が、両機関の規制領域が重なる分野での連携強化に向けた覚書(MOU)を締結した。覚書は3月11日付で署名されており、暗号資産を含む新興技術に対応した規制枠組みの構築が主要目的の一つとして明記されている。
公開された覚書では、SECとCFTCが共通の規制領域において政策や監督、執行などで協調を進める方針が示された。特に「暗号資産(仮想通貨)およびその他の新興技術に対する目的適合型の規制フレームワークの提供」が重要な目標として掲げられている。
今回の覚書は、金融市場のデジタル化やオンチェーン技術の普及により、証券やデリバティブなど従来の規制枠組みの境界が曖昧になりつつある状況に対応する狙いがある。両当局は規制の明確化や情報共有、政策解釈の調整などを通じ、より一貫性のある監督体制の構築を目指す。
覚書では、SECとCFTCのスタッフが定期的に会合を開き、共通の関心事項に関するデータ共有を行うことが盛り込まれた。また、監督や市場監視、リスク分析、執行措置などでも協調を進め、重複した規制や調査の回避を図る方針だ。
特に執行面では、両機関の管轄が重なる案件について、訴追内容や救済措置、訴訟戦略、対外コミュニケーションなどを協議する枠組みが設けられた。これにより、同一の事案を巡って両当局が関与するケースでの調整が進む可能性がある。
また、新たなデリバティブ商品や暗号資産商品の市場投入に関しても、両当局が申請対応や政策面での調整・協議を行うとのことだ。
SECのポール・アトキンス(Paul S. Atkins)委員長は声明で、「数十年にわたり、規制当局の縄張り争いや重複する登録制度、異なる規制体系がイノベーションを阻害し、市場参加者を海外へと押し出してきた」と指摘。そのうえで「定義の整合化や監督の調整、安全なデータ共有を進めることで、市場参加者が求める明確性を提供する」と述べた。
これまで米国では、暗号資産が証券なのか商品なのかをめぐり、SECとCFTCの見解が異なるケースもみられてきた。今回の覚書は、こうした管轄の曖昧さを整理し、規制の明確化を進める取り組みの一環とみられる。
現在、SECはアトキンス委員長のもと、ヘスター・パース(Hester Peirce)委員やマーク・ウエダ(Mark Uyeda)委員らを中心とする体制となっている。一方CFTCはマイケル・セリグ(Michael Selig)委員長が率いており、同氏はドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の指名を受けて就任した。
アトキンス委員長は就任以降、デジタル資産規制の見直しや明確化を重要テーマとして掲げている。現在SECとCFTCは暗号資産規制を巡る協調姿勢を強めており、CFTCも予測市場に関するルール整備に向けた意見募集を開始している。
参考:覚書
画像:Reuters