米銀行団体BPI、暗号資産企業向け銀行ライセンス巡りOCCへの提訴検討=報道

暗号資産企業向け銀行ライセンス制度に反発

米国の大手銀行団体が、暗号資産(仮想通貨)やフィンテック企業向けの銀行ライセンス制度を巡り、規制当局の提訴を検討しているようだ。英紙「ガーディアン(The Guardian)」が3月9日に報じた。

報道によると、米大手銀行の業界団体であるバンク・ポリシー・インスティテュート(BPI)が、米通貨監督庁(OCC)を相手取り、法的措置を取る可能性を検討しているという。

BPIは、JPモルガンチェース(JPMorgan Chase)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、シティ・グループ(Citigroup)など米国の主要銀行約40社を代表する団体だ。

今回の対立の背景には、OCCが進める連邦信託銀行チャーター(national trust charter)の運用方針があるという。

連邦信託銀行チャーターとは、OCCが発行する連邦銀行ライセンスの一種で、預金の受け入れを行わず、信託業務や資産の保管、管理などを行う「信託銀行」を設立するための制度だ。取得すれば州単位ではなく全米レベルで信託・カストディ業務を展開できる。また近年は暗号資産企業やフィンテック企業にも門戸が開かれている。

しかし銀行側は、この制度の下で暗号資産企業が銀行に近いサービスを提供できる一方、従来の銀行と同等の厳格な監督や規制を受けない可能性があると懸念している。

BPIは以前から、こうした制度が導入されれば「銀行と同様のサービスを提供しながら軽い規制を選択できる状況になり、銀行の定義を曖昧にし、金融システムのリスクを高める可能性がある」と警告していたという。

2025年には、ステーブルコイン企業のサークル(Circle)や暗号資産企業のリップル(Ripple)、英国決済企業のワイズ(Wise)などが同ライセンスを申請している。

その後、同年12月には米通貨監督庁(OCC)が、サークルによる「First National Digital Currency Bank」およびリップルによる「Ripple National Trust Bank」の設立に関する連邦信託銀行ライセンス申請を条件付きで承認した。

また、ビットゴー(BitGo)、フィデリティ(Fidelity)、パクソス(Paxos)については、州の信託会社から連邦信託銀行への転換申請を条件付きで承認している。

さらに2026年2月には、クリプトドットコム(Crypto.com)が米通貨監督庁(OCC)から米連邦信託銀行の設立認可について条件付き承認を取得したほか、決済サービス大手ストライプ(Stripe)傘下で企業向けステーブルコイン決済プラットフォームを提供するブリッジ(Bridge)も、米連邦信託銀行の設立について条件付き承認を得ている。

またドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の一家が関係する暗号資産事業「ワールドリバティファイナンシャル(World Liberty Financial:WLFI)」も、2026年1月に同ライセンスを申請し、米議会でも議論を呼んでいる。

このOCCの方針については、銀行業界以外からも懸念が出ている。

全米の州金融規制当局を代表する全米州銀行監督者会議(CSBS)は2月、暗号資産企業や決済企業に銀行ライセンスを与えることで「競争、消費者保護、金融安定性を損なう可能性がある」と指摘する書簡をOCCに送付。

また、約5,000の地域銀行を代表する米独立コミュニティ銀行協会(ICBA)も、制度が「銀行規制の根幹原則に重大な抜け穴を生む可能性がある」と警告している。

BPIは現時点で提訴を正式に決定しておらず、検討段階にあるという。BPIはコメントを控えており、OCCも本件についての問い合わせに回答していないと報じられている。

BPIは2025年10月にも、リップルやサークルなどが申請した連邦信託銀行チャーターについて、OCCに対し認可を拒否するよう求める声明を出していた。BPIは、これら企業に同チャーターを付与すれば、フルサービスの国立銀行よりも監督が緩い形で銀行に類似したサービスが提供される可能性があると指摘していた。

なおBPIは2024年にも、銀行の健全性を評価するストレステスト制度を巡り、米連邦準備制度理事会(FRB)を相手取り訴訟を起こしている。その後FRBは制度の一部見直しを検討することに同意しており、訴訟は現在一時停止されている。

参考:報道 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者