DeFiのRWAレバレッジ戦略は「構造的に成立しにくい」と3F共同創業者が指摘

オンチェーンと伝統金融の決済構造が障壁に

現実資産(RWA)を担保にしたレバレッジ戦略の構造的な課題について、分散型金融(DeFi)プロジェクト「3F」の共同創業者ソニヤ・キム(Sonya Kim)氏が指摘した。3月8日に自身のXアカウントに投稿した記事「RWA Looping Is Broken(RWAルーピングは壊れている)」の中で説明している。

RWAルーピングとは、RWA担保を活用したレバレッジ戦略を指す。たとえば利回りを生むRWAを担保にステーブルコインを借り、その資金で再びRWAを購入することで、保有資産の規模を段階的に拡大できる。このように借入と再投資を繰り返し、元本より大きな資産ポジションを構築することで利回りの拡大を狙う戦略とされている。

しかしキム氏は、この戦略は実務上ほぼ実行できない可能性があると指摘する。その理由として、オンチェーン金融と伝統金融の決済構造の違いを挙げている。

暗号資産ネイティブのDeFiでは、フラッシュローンなどの仕組みにより、借入、資産交換、担保差し入れ、再借入といった一連の操作を単一ブロック内で原子的(atomic)に実行できる。このため取引が途中で失敗した場合は、処理全体が取り消される仕組みとなっている。結果として、決済リスクや資金が一時的に滞留する問題を抑えやすいとされている。

一方で伝統金融では、制度的な慣習が存在し取引成立から資産の受け渡しまでに時間がかかる。トークン化ファンドや米短期国債(T-Bill)、信用商品などのRWAでは「T+1」や「T+3」と呼ばれる決済サイクルが一般的で、これは取引成立の1日後または3日後に決済が行われる仕組みを指す。なお米国証券市場では2024年以降、標準的な証券決済は原則T+1だ。

このようにRWAはオンチェーン上ではトークンとして取引される一方、実際の資産は伝統金融の決済制度に従って処理される。そのためオンチェーンの取引が完了しても、現実資産の決済が完了するまで次の取引に進めないという問題が発生する。

そのためRWAを用いたレバレッジ戦略では、資産購入後に決済を待ち、その後担保を差し入れて借入を行うといった手続きを段階的に進める必要があるという。つまり、従来のDeFiのようにほぼリアルタイム取引でレバレッジを構築することができない。

たとえば担保価値の80%まで借り入れ可能なLLTV(Loan-to-Value)の条件では、理論上は最大5倍程度のレバレッジが可能とされる。しかしキム氏によると、実際にその水準に近づくには10回以上のレバレッジループが必要になるという。仮に決済サイクルがT+1の場合、ポジション構築には少なくとも10日から15日程度かかる計算になる。T+3の資産であれば、30日以上かかる可能性もあるとされる。

また現在のRWAレバレッジ戦略の多くは、こうした決済の遅れなどの問題を、単一のボールト(Vault)や運営主体の内部で処理する設計になっているという。たとえばユーザーが資金を引き出す際に決済待ちが発生しないよう、運営側があらかじめステーブルコインなどの流動性を確保しておく仕組みが採用されている。

しかしキム氏は、このような仕組みでは運営側が常に一定の資金を待機させておく必要があり、その分だけ資金効率が低下すると指摘する。結果として、そのコストが流動性提供者(LP)の利回りを圧迫する可能性があるとしている。

今回の指摘は、RWAを用いたDeFi戦略において、オンチェーン金融と伝統金融の決済構造の違いが資本効率に影響を与える可能性を示すものといえる。RWAはオンチェーン上ではトークンとして取引される一方、実際の資産は従来の金融インフラに基づいて決済されるため、両者の処理速度の差が運用上の摩擦となる可能性がある。

キム氏はこうした課題の解決策として、RWAレバレッジに伴う決済遅延や流動性管理などの機能を分散型ネットワーク上の複数の参加者が担う構造が考えられるとしている。

 

画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者 ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。