zk証明を中核プロトコルへ
イーサリアム財団(EF)のzkEVMチームが、イーサリアムのレイヤー1(L1)にzkEVM(ゼロ知識EVM)証明を統合するための「L1-zkEVMロードマップ2026」を1月26日に公開した。これは、これまで研究段階にあったzkEVMを、L1のガバナンスおよびインフラに本格的に組み込む方針を示すものだ。
zkEVMチームは2025年7月、実行レイヤーのSNARK化に関する初期ビジョンを概説していたが、今回のロードマップでは、zkEVM証明を再実行(re-execution)に代わる正当な検証手段としてL1に組み込むための具体的な工程が明らかにされた。
ロードマップでは、2026年に向けて、zkEVM証明を用いたエンドツーエンドの検証フローを確立することが目標とされている。具体的には、まずステートフルな実行レイヤークライアントが、ブロックをステートレスに検証するために必要な全データを含むデータ構造である「エグゼキューション・ウィットネス(Execution Witness)」を生成する。その後、zkEVMゲストプログラムがブロックデータとこのウィットネスを入力として受け取り、状態遷移の正当性をステートレスに検証する処理を行う。このゲストプログラムはRISC-V(リスク・ファイブ:オープンソースのCPU命令セットアーキテクチャ)などを想定したzkVM上で実行され、その実行結果に基づいてプルーバーがzkEVMの実行証明を生成する。最終的に、この証明をコンセンサスレイヤークライアントが検証することで、従来のフルな再実行を行うことなく、ブロックの正当性を確認できる仕組みの実現を目指すとしている。
まず、エグゼキューション・ウィットネスとゲストプログラムの標準化が進められる。実行レイヤー(Execution Layer)クライアントが、ブロックをステートレスに検証するために必要な全データを含むエグゼキューション・ウィットネスを生成できるよう、仕様策定やRPCエンドポイントの整備が行われる。また、そのデータを消費して状態遷移の正当性を判定するゲストプログラム自体の定義と標準化も進む。
次に、zkVMとゲストプログラム間のAPI標準化だ。特定の実装に依存しない多様なエコシステムを実現するため、最小限のハードウェアターゲットやI/O仕様、メモリ配置、エラー処理の前提条件などが共通化される。
3つ目の柱は、コンセンサスレイヤー(CL)への統合だ。CLクライアントがビーコンブロック検証時にzkEVM証明を検証できるよう、仕様変更が検討されている。これにより、zk証明を検証する「zkAttester」クライアントの導入や、新たなノードタイプの可能性も議論されるという。
4つ目は、プルーバーインフラの整備である。これには、zkVMをEthproofsやEreといった基盤に統合し、GPU実装を完全オープンソース化することが含まれる。証明生成の信頼性を測る指標の整備も進め、アテスターとプルーバーが円滑に証明を利用できる環境を構築する狙いだ。
5つ目のテーマは、ベンチマークとメトリクスだ。オペコード使用量、ネイティブ実行サイクル、証明生成時間の関係を可視化し、将来的なガス価格の見直しや、必要なハードウェア要件の定義に役立てるとしている。
最後に、セキュリティと形式検証が挙げられた。ゲストプログラムやSNARKプルーバー・検証器といった重要コンポーネントに対する形式検証を進めるほか、テストカバレッジやファジング、監査状況を可視化するダッシュボードの導入も計画されている。
なお、ロードマップではePBS(Enshrined Proposer-Builder Separation)の重要性にも言及されている。ePBSが導入されない場合、証明生成に使える時間は1〜2秒に制限されるが、ePBSの展開は次期「グラムステルダム(Glamsterdam)」ハードフォークで目標とされており、実現すれば、その猶予は6〜9秒に拡大するという。これはリアルタイムでのzkEVM証明生成の実現性を大きく高める要素になるという。
EFのzkEVMチームは、今回のロードマップについて「EL・CLチーム、zkVM開発者、EFプロトコルチーム、コミュニティ貢献者による共同作業の成果」だと強調。今後はEthR&D Discord上での議論を通じて、L1 zkEVMのメインネット実装に向けた調整が本格化していく見込みだ。
参考:発表
画像:Ethereum