英暗号資産団体、イングランド銀行のステーブルコイン保有上限撤回求める=報道

ステーブルコイン保有限度案に反発

英国の暗号資産業界団体(Cryptoasset Business Council)が、英中央銀行のイングランド銀行(BoE)に対し、個人によるステーブルコイン保有数量の上限設定計画の撤回を求めているようだ。フィナンシャルタイムズ(FT)が9月15日報じた。

BoEは、システム上重要なステーブルコインに対し、個人保有を1万~2万ポンド(約200万〜400万円)、企業保有を1,000万ポンド(約20億円)に制限する規制案を推進する方針を明かしている。これには、銀行からの急速な預金流出が金融システムを不安定化させるリスクに対応する狙いがあるようだ。

この動きに反対する声として、米暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)の国際政策担当副社長トム・ダフ・ゴードン(Tom Duff Gordon)氏は、「ステーブルコインに上限を設けることは、英国の貯蓄者、シティ(金融街)、そしてポンドに悪影響を及ぼす」とし、主要な管轄区域で上限設定が必要と判断した例は他にないと述べているという。

また、英国暗号資産ビジネス評議会のサイモン・ジェニングス(Simon Jennings)常務理事も「制限は実際には機能しない」と発言。発行者は保有者をリアルタイムで把握できないため、実効性を持たせるにはデジタルIDやウォレット間の複雑な連携が必要となり、コストと混乱を招くと警告したとのこと。

そのほかにも「現金や銀行預金に上限がないのと同様、ステーブルコインだけを制限する理由はない」との声や、「ステーブルコインはすでに世界的デジタル経済の基盤になりつつある」と強調し、英国がステーブルコイン規制枠組みの導入遅延で競争力を失いつつあると警告する声も上がっているようだ。

またこの動きは、BoEと財務省の緊張を激化させる可能性もあるようだ。アンドルー・ベイリー(Andrew Bailey)総裁は、レイチェル・リーブス(Rachel Reeves)財務相がフィンテック企業レボリュート(Revolut)の銀行免許取得を迅速化するよう規制当局に働きかけた会合を阻止したという。

リーブス財務相は金融サービスのデジタル化を後押しすると繰り返し表明しており、7月の演説でも「トークン化証券やステーブルコインなどの開発を推進する」と語っていたという。

BoEは、この制限は「過渡的」な措置となる可能性があるとし、年内に規制案の協議文書を公表する予定とのことだ。

英国の暗号資産業界団体はまた、英米政府間の協力枠組みである英米テックブリッジ(Tech Bridge)に対し、ブロックチェーン技術やステーブルコインを中核技術として政策に組み込むよう9月12日に要望したという。

「ブルームバーグ(Bloombarg)」の報道によれば、この要望は、英米間の高水準の技術協力合意にブロックチェーンを組み込む狙いがあるという。

UKフィンテック(UK Finance)や暗号資産事業者協議会を含む12団体は、金融のトークン化や国際送金回廊の構築などを通じ、英国がデジタル金融で国際競争力を取り戻すべきだと警告。規制や制度の遅れが「暗号資産ハブ」構想の阻害要因になっているとも指摘していた。

参考:FT
画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者